アンチ萌えオタクの見た「ハチミツとクローバー」10巻

 「ハチクロ」の最終巻、読了しました。

ハチミツとクローバー 10 (クイーンズコミックス)

ハチミツとクローバー 10 (クイーンズコミックス)

 凄い展開になっているとの噂を聞いて、実は春頃から「コーラス」を毎月買っていました。「姫ちゃんのリボン」や谷川史子にはまっていた十数年前でもしなかった行動。いやあ、レジではかなり気恥ずかしかったです。いつもオバさんのいるところに行っていました。

 雑誌連載で見ていると、やはり「なぜに、はぐは●を選ぶ...」と当惑してしまいます。○○だと読者の想定範囲内だし、△△はやや力不足。7巻あたりを思い出しても、●は予想外でした。ただ、それゆえに描写不足は否めない。どこに伏線を張っていたんだろうか。いやあ、それらしいのはあるんですが、なんか突然の感は否めない。主人公の竹本は旅立てたとして、他の連中はなにか片づいたのでしょうか。

 で、初めて2chの少女マンガ板ってのを見てみたのですが、凄まじいまでの悪評の数々。ありつたけの憤怒を爆発させていた腐女子と思しき書き込みを眺めつつ、あんたら、ただのマンガのキャラの恋愛になぜに真剣になっているの……と羽海野チカに少し同情していました。まあ、「エヴァンゲリオン」やら何やら過去の経験からしてそういう風にたたかれるのは想像できてはいましたが……

はぐと森田を分断せねば物語を終わらせることができなかった

 単行本で7巻あたりから見返して10巻まで読んでみたのですが、通しで見ると自身の持っていた不満はやや解消されました。これまで積み重ねてきたハチクロの魅力となってきたもの。

  • 全員片思い 逆走ラブストーリー
  • 自分の才能と可能性に対する不安や迷い


 そうしたエッセンスが、力尽きて物語の破綻した後も活きていたように思えます。

 作者は、読者のイメージよりさらに上を狙って、高いところを目指そうとしていたのでしょう。でも、はぐと森田がイイ意味で暴走しだして、作者の手に余るようになった。この2人は、持てあます才能を持ちながらその方向性を見つけることが出来ない。太宰治の「斜陽」じゃないけど、「選ばれし者の恍惚と不安、 二つ我にあり」って選ばれた人間だけが持つ悩みがあったわけで、そこがハチクロの魅力の一つだったとも言えます。竹本との対比もうまく描けていました。ただ、単なる天才だけなら、それでは物語が終わらない。

 それを解決して物語を終わらせるには、2人の精神的な依存関係を断ち切るしかない。それゆえの突然の方針転換だったと思います。未解決の案件は山積みとはいえ、とりあえずは読者を物語世界から卒業させてくれたと思います。なあに、伏線を中途半端にしたまま終わった作品なんて過去にいくつもありました。そーゆーのは気にしない。最終巻の随所に見られる羽海野の「ああ、終わらせた」って独白はクドいような気もしますが、本人もきちんと描き切れたという実感はあったと思います。

 最終回のハチミツとクローバー。その使い方はちょいとベタな感じもしましたが、やはりあの作品の最大の魅力となったのは、アニメOPの「ドラマチック」にも引用された四つ葉のクローバーを探し求めるシーンですよね。それをきちんと処理してくれただけで僕は満足です。そして、オタクならこう呟くべきです。

ハチミツとクローバーか……何もかも皆懐かしい……」と。

ハチクロ萌えアニメじゃない

 テレビアニメをエアチェックしなくってもう四年ぐらいになります。最後まで見ていたのは「おジャ魔女どれみ」だったと思いますが、シリーズ終了と共にビデオデッキで何も録画しなくなった。萌え〜なんて言っている方向けの深夜の作品は辛くて見ていられない。かつては週に20本ぐらいアニメを見ていたにもかかわらず、ああオレの、おたく人生もおしまいか…… なんて愚痴っていたら、コミケ会場である先達から教えられたのが「ハチミツとクローバー」。最初に見たのはモカデミー賞の回だったか。で、弟が持っていた原作を借り、自分でも買い揃え、そして今日に至ります。

 同人出身の作家さんのようですが、意外と萌え要素が薄いのが自分には合っていた。本来の読者の方だと、はぐや山田のひ弱さ、カマトトぶりにイライラしているようですが、それはオタクの視点とはやや違います。やはり、2人ともオカズにはしづらいのです。

 その理由としては、はぐも山田も、その生き方や恋愛感情がブレていないということ。青年誌のヒロインのようなオトコに都合の良い描き方をしていないから、エロ漫画的な物語を作りにくい。それに、2人のキャラデザやファッションって、萌え要素というか萌え属性というか、そういうのとは明らかに別物ですよね。たぶんそこらを勘違いされていると思います。

 って、別にコミケ会場を真剣に回ったことはないんで、山ほど男性向けハチクロ同人誌があったら謝らなければならないのですが、とりあえず、それはまた別の話。