種村直樹の今月の連載(シリーズ第5弾)

katamachi2006-09-27


 うっかり忘れていましたが、ここで日記を書き始めて1ヶ月が過ぎていました。こーゆー時は自分で祝いのコメントでもしなきゃいけないのかな。
 初回を読むと、「鉄道ジャーナル」と種村直樹の話でした。仕方ない。今日も朝イチで今月号の連載「房総の鉄道ぐるりひと回り(下)」の話でも書こうか。って、TTTT会員でもないのに、いつしか種村ウオッチャーになっている……

鉄道ジャーナル 2006年 11月号 [雑誌]

 種村の公式HPのレイルウェイ・ライター種村直樹の公式BLOGを見ていると、もう一つ「さすが首都圏 きめ細かなダイヤ」とあったので、おっ、今月はダイヤネタでもう一つ別稿を書いてくれるのかなと期待したいのですが、これは房総行きの文章のサブタイトルだったんですね。そのきめ細かさが最後まで書いていないのに、これって変です。本文の中見出しも滅茶苦茶ですが、これらは編集部の仕事でしょう。もう少し手をかけて欲しいなあ。

 今月号は、先月に祝! 種村直樹の「ジャーナル」連載続行と書いたときよりも、中身はさらに数段良くなっています。11月号の取材が7月というのも変だし、8月末にわざわざもう一度取材へ行かれているのですね。今までなら横着していたのに、そこらはきちんとしている。それと、今号は、小銭屋*1の看板娘として有名だった奥様とご同伴というのも微笑ましい。はたして夫婦で乗り歩きしながらどんな旅路が待っているのか。
(以下、ネタバレ有り......って誰も困りませんか)

第1弾祝! 種村直樹の「ジャーナル」連載続行
第2弾降りつぶしor駅めぐりor全駅下車の話種村直樹は鉄道趣味界の使徒
第3弾種村直樹批判の源を探る
第4弾種村直樹が歴史的使命を終える瞬間を見てしまった


旅先で出会った事象を順序よく説明してくれる

 冒頭、錦糸町発君津行き普通に乗り込むモノの、ハイティーンのヤング10数人の団体と遭遇する。ここらでイライラして悪口の一つも垂れる……というのがここ数年の種村調だったわけだが、逆に「(ヤングたちは)なんとなく雰囲気がある」と語り、身なりや何やらを褒め出し始める。そして奥様との会話を続けることで、順序立ててナウなヤングの自然体を褒めて、新鮮さを感じとっている。最後の靴踏みもいい話だ。
 以前だと、ここでたいして理由がないのに、問答無用で「バカ者!」とやったりしたから読者は種村の感情の変化に付いていけず、取り残されてきた。ここらの筋道が丁寧になってきているのだ。
 これは鉄道の話題でも同様だ、総武本線阪和線とが車窓もダイヤもどこか似ているという。正直、この2つが似ていると突然断定されても読者には困るだけだで、いつもならここで終わって次の話に移っていた。そこでまたもや読者は当惑させられていた。
 でも、一極集中型の東京駅と、機能分散型の大阪駅との方向性に触れ、房総特急が地下駅の不便な場所にもかかわらず東京に乗り入れようとしたのに、関空紀勢特急は新大阪経由で...と話を展開させていく。そこらの畳みかけ方のテンポが悪くて読みづらいというのはあるけど、自らの視線に移った事象を広げて話の幅を広げていこうと指向をしている。それが嬉しいのだ。

まだ不可解な構成もありますが、まあご愛敬

 もちろんそれは全てに貫徹している姿勢なのではなく、たとえば次の「『荷物専用』車両で新聞輸送も」って項は構成がバラバラになっています。サブタイのセンスの悪さも含めてなんだか変。

  • 7月21日に千葉駅14:11発で新聞積み込みを見た
  • 隣の5番線ホームにも「荷物専用」という看板付きの電車を見た
  • 今日(8月24日)の快速253M(千葉11:42発)上総一ノ宮行きは大網で三分停車する
  • これは新聞輸送との絡みがあるのか。

というのがその流れ。今でも夕刊を電車に積み込んで輸送するというのはやってるわけで、その貴重な風景を書いてみたいと。
 で、実際に大網駅で新聞の積み卸しを確認しているのかと言うと、そーでもない。そもそも千葉駅で積み込みはあったのか。それを解きほぐすのがレイルウェイ・ライターの仕事であるのだが、肝心の当該列車に新聞が積み込まれたか否かはどこにも触れられていない。あるいは、これは何かレベルの高い演出を狙っていたのか。あえて謎を隠すこと意義があるのか。または私が読解できなかっただけか。なんだか意味不明だ。
 ここで貼付した写真は、近鉄名古屋駅で急行の後部1両に積まれた新聞の把。14時発のでした*2。新聞の各版の印刷を考えると、千葉11時台発の普通に載せることもあるんだろうか。

あとは上総一ノ宮と大原でまったりと観光とお買い物。伊勢エビとあわびか...旨そうだ。浪花郵便局と浪花駅と浪速駅の違いなんてどーでもいいや。駅名調べるのに、中央書院のヤツを調べるとはいかがなモノかという気がしますが、まあそれはそれ。

初めて感じた巧まざるユーモアと哀愁

 後半は、いつものように食事に食いっぱぐれる。御宿や勝浦、安房鴨川ではなにも手に入らない。まあ、意味もなく乗り歩きをしているんで、そこらは仕方ないでしょう。食べたけりゃ、1本列車を後に回せばいいのだから。そして館山での乗換では奥様のバッグがドアに挟まれたというので、皮肉を言われている。
 そんなグダグダぶりの後半なんですが、ラストで雰囲気が一変する。
 ようやく21時前に着いた木更津駅のコンビニで、売れ残りのパンと握り飯を買い込む。やはり弁当はない。
 仕方ない。ホームに戻り、ベンチに腰掛けながら、永年連れ添ってきた奥様と仲良く並び、コンビニの戦利品を分け合ったというのです。70歳の老境に差し掛かった現役作家が、夜の9時過ぎに駅のベンチでコンビニの食事か……
 いや、分かっています。種村はただ飯に食いっぱぐれたという事実を書いただけなのでしょう。でも、本人が全く意図していなかった、巧まざるユーモアと哀愁がそこには漂っていました。

 御年70歳になったレイルウェイ・ライター氏。もう切れのある玉は投げられません。集中力も取材力もないからキツい。でも、老いたなら老いたなりのライターとしての道は開けているんじゃないかなあとは思います。でも、今回の記事は、ナウなヤングやファングラブ、あるいはカメラマンではなく、奥様が付いていったから味があった。そろそろ団塊世代が鉄道趣味の世界に戻ってきていますし、同じ60歳や70歳ぐらいの他ジャンルの人たちと旅に出るというのも一興かも。そうした経験のなかったことにもチャレンジして欲しい。
 はたしてそれが「鉄道ジャーナル」の誌面にふさわしいかどうか別ですが、それはまた別の話。 

*1:島崎藤村宮脇俊三も泊まったという鳥取の老舗旅館 ある意味、鉄道旅行マニアの聖地 今は観水庭こぜに屋と名前を変えている

*2:湯の山線伊勢川島駅まで運ばれていく過程を偶然に見かけたが、駅前の販売店の人が、子供からおじいちゃんまで5人ぐらいで手伝っていたのが微笑ましい