「鉄道ピクトリアル」誌のリニューアルと"独自の路線"
突然変わっていたのが、「トピック・フォト」のページ。一般読者には予告もなかったのに、増ページ、カラー化がなされている。なのに、白黒写真がいくつか混じっているのはご愛敬です。
- 出版社/メーカー: 電気車研究会
- 発売日: 2016/11/21
- メディア: 雑誌
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鉄道マニアに衝撃を与えた1990年2月号の「特集 貨車」以来、「ピクトリアル」は孤高の路線を歩んでおり、その潔さには感服しています。なんだか選挙の時、新聞の票読みで泡沫候補にたいして使われる「独自の戦い」って慣用句を思い起こさせてくれます。微妙に売れなさそうな特集ながらも、いやに鉄道マニアの琴線をくすぐってくれるのです。鉄道マニア第1世代の「ピクトリアル」編集委員たちの実績には今でも敬服していますが、それを現実路線に組み替えていったのは編集長の今津直久氏の功績なんでしょう。
最近のカルト路線に対して、資料・データ偏重なのはいかがなものか......という問いかけが編集委員の中川浩一から指摘されており(2004年12月号)、それはそれで理解できます。これでは新しいマニア層を開拓できないし、蛸壺化というか細分化というか閉塞感が一層進んでいくだけですからね。でも、やっぱり80年代のダメダメな時なんかと比べると今の方が魅力的です。
ただ、たまにナウなヤングへのウケを狙ってか、目新しい題材を取り組んでいく。そこらの計算尽くのネタには何か違和感を抱くんですよね。今回は「『鉄子の旅』幕間散歩」か…… 個人的にはさほど関心がないので、どーでもいいんです。横見浩彦氏が登場しなかったのは賢明です。
保守的な雑誌を作っていると、なにか人目をひくような革新的なページを入れてみたいという気持ちも分からない訳ではないのですが、場違いな冒険は「ピクトリアル」誌にはいらない。せっかくのカラーページならば「遜色急行」みたいに、特集名のインパクトだけはマニアの脳裏に刻み込まれたけれど、今日もに30年後にも評価されないような題材を取り扱って欲しかった。
「鉄道ピクトリアル」の"伝説"かつ"極北"の特集といえば、今や古本屋のデッドストックともなっている1980年3月号の「特集 ギリシアとエーゲ海の旅」です。それについても何か語りたかったのですが、それはまた別の話。