奥祖谷観光周遊モノレール。その65分の苦闘の時。

katamachi2006-12-04


 ようやくデジカメを整理したので写真をアップします。
 11月24日朝、前夜泊まった「いやしの温泉郷」をチェックアウトして、僕らの泊まった部屋のすぐ裏側にある駅舎に行きました。「いやしの温泉郷駅」なんて紹介されているサイトもありましたが、建物にはただ「駅舎」と大書きされているだけ。特に名前はないそうです。
 ここでの最大の見所は、「必ずトイレをすませてご乗車ください」という看板ですね。1時間10分の間、モノレールから降りることは不可能。非常時には、携帯電話で事務所と連絡を取ることが出来ますが、無理矢理止めてしまうと他のモノレールもストップしてしまう。前日以来、ちょっと腹の具合が悪かったこともあったので正直かなり不安でした。朝食の後、ちょっと長めに化粧室で滞在しておきましたが……大丈夫なのだろうか。 

 さて、1000円の運賃を支払い、モノレールに乗車します。ホント、遊園地で幼稚園生や小学生低学年生向けの遊具、そのまんまなんですね。子供に大人気のカブトムシをモデルにしているのでしょうが、やっぱりなんだか気恥ずかしい。しかも、友人と2人、30代半ばの男同士というのは……。せめてカップルや親子連れならまだ見栄えはするのでしょうが。
 それと、僕らの座席を覆うようなビニールシートとか扉とかは何もありません。11月末の朝、この秋一番の寒さと言うことでめちゃくちゃ冷え込んでいるのに、この剥き出しのシートで1時間10分も耐えなければいけないのでしょうか。
 係の方は「あのお、かなり寒いけど大丈夫ですか」と一言。前途は多難なようですが、わざわざこれに乗るために大阪から来たんです。諦めるわけにはいかない。とりあえず少しぐらいなら我慢できますよ....ね。大丈夫ですよね?と確認してみますが、「もしかしたら今日のお客さんは、これが最後になるかもしれないよ」と苦笑いするだけ。えっ、本当に大丈夫なんだろうか。

 始発時間となる8:30に出発。ホームを出てすぐ、林道を跨ぐ橋梁に差し掛かります。沿線で気軽にアプローチできる唯一の撮影スポットです。これを過ぎると、遊具、いやモノレールは複線路盤に沿って林の中を分け入っていきます。始めは緩やかな坂だったのですが、次第にそれが急になっていく。それにあわせて僕らの座っているシートも微妙に傾いていきます。最大傾斜40度まで対応しているということのようです。でも、ときどき勾配とシートの傾斜のタイミングがずれてしまうんです。さほどの傾きではないのに、シートが勝手に動いてしまい、微妙な姿勢を強いられてしまう。コンピューターに入力されたデータがズレているのでしょう。
 さて、16分ぐらいすると標高1000メートル地点。線内最急勾配の区間に差し掛かります。おお、なんだかようやく山岳鉄道のような雰囲気になってきました。

 それを超えると、木造の休憩所のようなものが見えます。ここはもともとモノレール終着駅として建設されたのですが、実際には使用されてはいません。尾根沿いの林の中を観光客がウロウロすることに対して自然破壊に繋がるのでは......という意見が出たからです。
 さて、ここで上下線が並行する複線区間はおしまい。その先は、右にそれて単線区間になります。
 なんだか近くで変な機械音がする。あれ……と見回すと、作業服を着込んだおじさんがチェンソーで木を切っています。ここらはまだ木材の伐採を行っているのでしょうか。あるいは間伐をしているのでしょうか。僕らが驚いていると、手を振ってくれました。お茶目なおじさんです。
 ちなみに、係の人たちは、早朝、モノレールを使ってここまで上がってくるようです。携帯を使って事務所と連絡し、目的地点で飛び降りるとか。さすがに帰りは自力で帰るようですが……いやはやなかなか奥の深い施設ですね。
 そろそろ30分ぐらい経ってきました。レールは緩やかに林の中をカープしながら尾根沿いに続いてきます。時期が時期ならば見晴らしがいいところなんでしょう。高山植物でも咲きほこっているのでしょうか。でも、今はただ僕たちの周りは真っ白な靄が立ちこめているだけです。視界は200〜300メートルぐらい。なにも見えません。
 次第に遮る林が少なくなり、朝靄を突き抜けるように吹きすさぶ寒風が僕たちを直撃します。寒い。とにかく寒い。長袖の上にセーター、そしてコートを着込んできたのですが、なんだか体の底まで染み通るような冷えが襲ってきます。早く目的地に着かないか、早く降りたい、おーいなんでこの車両に防寒用のキャノピーが付いていないんだ……後ろに座る友人とそんなボヤきを繰り返すのですが、まだ半分も来ていません。まだ40分もあります。今年の営業終了前になんとしても乗りたくてわざわざ来たのに、なんでこんな苦行をしなければならないんだろう。正直、かなり後悔していました。
 標高1350メートルの看板を過ぎると、急坂が尽きました。ただいま9:02。最高地点の1380メートル地点に到達しました。
 この先、ようやくレールは下りになりました。でも、まだ行程の半分。終着駅まであと32分かかるわけです。もう飽きた。早く着いて欲しい。早く温かいものにありつきたい。そう祈るばかりです。
 途中、林の中で焚き火をしているのを見ました。お弁当らしいのがいくつか並んでいたので、先ほどの作業員の方たちが準備したものでしょう。なんだか恨めしい。
 9:16、ようやく先ほどの小屋の地点に到着。ここからだとあと20分ぐらいか。
 ここからは行きとは逆で、急な下り坂が続きます。複線区間なのですが、すれ違うモノレールは一台もありません。こんな時期に訪れる観光客なんているはずもない。当たり前といえば当たり前なんですね。四国の山奥の気候を舐めていた僕たちがバカでした。
 ようやく駅が見えてきました。係の方が僕たちを待ち受けています。9:35、ホームに到着。延長4600メートル、所要時間1時間5分(5分早着)の苦行が終了しました。
 とにかく暖が欲しい。シートベルトを外して、ホームへ降り立つや否や駅舎の中に直行しました。この後、走行写真を撮ろうと次のお客さんがやってくるを待っていたにもかかわらず空振りに終わったのですが、それはまた別の話。

2006-12-06■三好市(旧西祖谷山村東祖谷山村・池田町)にある鉄道モドキの「遊覧鉄道」めぐり
http://d.hatena.ne.jp/katamachi/20061206
2006-12-04 ■奥祖谷観光周遊モノレール。その65分の苦闘の時。
http://d.hatena.ne.jp/katamachi/20061204
2006-11-24 ■奥祖谷観光周遊モノレールに行ってきました。
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2006-11-20 ■なぜか突然、奥祖谷観光周遊モノレール行きに変更。
http://d.hatena.ne.jp/katamachi/20061120