福知山線脱線事故に関する意見聴取会の報告書を見つけました。

 三江線の件で航空・鉄道事故調査委員会のHPを見ていると、2005年に起きた福知山線脱線事故の文書を見つけました。2月1日に行われた「意見聴取会 西日本旅客鉄道株式会社福知山線における列車脱線事故について」の関連文書です。
 HPはここ→http://www.mlit.go.jp/araic/ それぞれリンクや検索エンジンで辿ってください。

 特に前者の本文の項は182ページもあり、斜め読みするだけでも一苦労でした。と、同時に調査委員会の語ろうとしていることは、マスコミが語って欲しいとこととかなり食い違っているというのも分かりました。

 ニュース報道を見聞きしている限り、いろいろ経過報告や意見聴取会に対する批判もあったようです。JR西日本丸尾和明副社長(鉄道本部長)へは批判が集中していました。
 ただ、ここ数日、過去に起きた事故に関する鉄道事故調査委員会の報告書を10点ほど拝見してみたのですが、どの文書も「事故がおきた状況」と「事故の原因」が書かれているだけ。事実認定で終わっているんですね。
 だから、「何があれば事故を防げたのか」「誰に責任があるのか」「今後、事故を防ぐにはどのような処方箋や対策が必要なのか」という点にまで踏み込んだ発言はどこの文書にもありませんでした。ましてや企業体質にまで踏み込んだ発言なんてできるわけでもない。上に書いた三江線の落石事故についても、JRが行った対策はあくまでも「参考事項」としか書いてありません。自分たちの関与外と言うことなのでしょうね。
 同委員会には鉄道会社に対する命令や指導をできる権限が与えられていない。国土交通省もそこまでの活動は求めていないし、仕方ないのかも。

 ただ、マスコミはこの委員会に過剰な期待を持っているんですね。

2007/02/03神戸新聞 http://www.kobe-np.co.jp/kobenews/sg/0000232138.shtml
2007/02/02毎日新聞福知山線脱線 意見聴取会 遺族ら鉄道安全に願いを込め」http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070202-00000004-maip-soci
2007/02/01産経新聞「JR脱線 意見聴取会 遺族 組織的な欠陥 副社長、日勤教育の正当性主張」http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070201-00000026-san-soci

 各紙とも、JR西日本の公述人が自社を擁護した発言に対する批判一色だったようですが、そこらの組織的問題については航空・鉄道事故調査委員会の範囲外のことではないのでしょうか。
 "懲罰的だった日勤教育""安全軽視の企業風土"は確かに注目すべき争点ですが、事故調査にはなじまない。そこに拘りすぎると、全体像が見えてこない。企業体質の是非なんて道徳的なことを委員会に求めるのは筋違いでしょう。
 委員会も周囲から求められているからか「意見聴取会用の本文」のp.171から「遅延時間と心理的負担との関係に関するアンケート」を紹介していますが、182ページ中でたった4ページのみ。新聞やテレビはそこの箇所ばかり報道していましたが、これでは何も分からない。"懲罰的だった日勤教育"と事故との因果関係については推定するのが限界でしょう。
 委員会はあくまでも技術面で事故のあらましと原因を追及していく団体に過ぎません。彼らの権限外のことに過度な期待を持つのは気の毒です。委員会には技術面での原因追求に集中してもらい、企業風土などに関しては司法や行政が判断、指導すべきなのでは......と思います。
 このままだと、調査委員会がどんな最終報告を出しても、「日勤教育や企業体質との関連性がきちんと書かれいてないからダメだ!」と叩かれそうですね。