水害で不通になる前から悲惨な状況だった三江線で考えてみる。その3

katamachi2007-02-09


「水害で不通になる前から悲惨な状況だった三江線で考えてみる。その1」
「水害で不通になる前から悲惨な状況だった三江線で考えてみる。その2」
水害で不通になる前から悲惨な状況だった三江線で考えてみる。その3
水害で不通になる前から悲惨な状況だった三江線で考えてみたが……

30年前で輸送密度640人/kmだったから、今だとその半分以下ぐらいだろうか

 もっともJRとしても、三江線の運営を続けていかねばならない義理はない。
 国鉄時代の25年前に作成した資料で輸送密度640人/kmと、当時でもビリから25番目の"超赤字ローカル線"だった。この数字は鉄道としてやっていける数字ではない。当時のコンサルタント会社の資料を見れば、甘めに見ても"輸送密度1500人"ぐらいが鉄道を維持できる最低減の数字であったと思われる。その半分にも満たない路線に未来はない。
 でも、三江線は廃止されずに国鉄、そしてJRへと引き継がれていく。代替道路未整備でバス代行ができないから……というのがその理由だった*1
 そして、国鉄再建法が施行されて四半世紀が経ち、道路事情はかなり改善されている。悪路が一部で残っていたり、鉄道線と道路が離れているところもあったりとバス運行にはいくつか問題があり、今回の運休期間でもダイヤの乱れが生じていたようだが、かと言って"どうしても鉄道でないとダメなんだ"と言い切れるほど逼迫した状況ではない。
 それでも鉄道として残していきたいなら、沿線の自治体がある程度の出血を覚悟してJRを支援していかねばならない……と思う。第3セクター化や上下分離方式などいくつか可能性はある。ただ、そんな動きは皆無のようだ。
 地元の中国新聞の社説というのを見ていても、

 規制緩和で、鉄道の廃止が許可制から届け出制になったこともあり、長期にわたる全面不通が「廃線」につながる不安が住民には募る。「最後は数(利用者)の論理で切り捨てでは」との不信感をJRは酌み取らねばなるまい。
(中略)
 本当に過疎地を大事にするのなら、調査段階からJR西日本の総力を挙げるべきだ。復旧を待つ地元の願いは悲痛である。

三江線全面不通 いつまで続く住民不便中国新聞社説、2006/9/18

とか完全に人ごとのようにしてJR西日本に責任を求めている。
 ただ、あえてJRを弁護するなら、「一日の利用客は約五百人」(同上記事)という状態の鉄道を維持し続けることにどれほどの意味があるのか。一人あたりの乗車距離を多めに見積もって30kmと換算しても、輸送密度にすれば百人台にしかならない。もはや「本当に過疎地を大事にするのなら」なんて悠長なことを言っていられる次元ではない。
 もしかしたら法律が変わったこと。そして毎年4つも5つもののローカル線が廃止の憂き目にあっていること。それらを地元や中国新聞は知らないのだろうか。

三江線の存続について真剣に考えているか疑わしい沿線自治

 赤字ローカル線の廃止問題はここ40年ほど継続している課題であるが、島根県や沿線自治体はどこまで自分たちの問題として考えていたのだろうか。
 いちおう、美郷町長が代表を務めている三江線利用促進期成同盟会という関連自治体の組織があるらしい。川本町議会では、「利用促進への取り組みにつきましても、三江線利用促進期成同盟会を軸に沿線関係市町共々鋭意検討を重ねて参りますので」なんて答弁もなされているが、はたしてどこまで効果があったのか。
 島根県のHPに「活動評価シート」という項目がある。自治体が自らの事業を振り返って分析する……というのは最近、はやりになっており、この文書もその一環であろう。そこに三江線改良利用促進期成同盟会への助成という2002年度の報告があった。
 これを見ると、県から三江線利用促進期成同盟会への補助は毎年たった40万円と言うことが分かる。こんな少額で何ができるのか。この会の名前で検索してみると、2003年には、沿線の名所や観光施設を盛り込んだ「ぶらり三江線MAP」を3万部刷ったらしいが、これはもはや自治体関係者の気休めにしかならない。
 なのに、「活動の必要性」の項目を見ると、「三江線の維持存続を図るため、必要である」「(活動を中止、休止した場合、どのような影響が想定されますか)利用人員が減少することが予想されるので、影響は大きい」「三江線の利用促進に貢献できた。」と過大な自己評価がなされている。利用促進に貢献したというのなら、利用者数が増えた数字を示さないといけないだろう。普通。
 先に書いた「この17年間で消えた廃止路線のリストを見てウンザリしてみる。」で廃止線のリストを書いてみたが、大社線が1990年に消えた後、中国地方で廃止になった路線は可部線の一部区間だけ。山陰地方では1ヶ所もない。それゆえに"三江線が消える"なんていうことをリアルに考えられなかったのであろうか。

(次で最終回。水害で不通になる前から悲惨な状況だった三江線で考えてみたが…… 結論は180度見方を変えて書きます。ただ、今日から実家に帰るので数日パソコンできません。)

*1:輸送密度1000人以下の"超々赤字ローカル路線"で今でもJR線として生き残っているのは岩泉線三江線だけ。