『新宝島』の酒井七馬って、実在の人だったんだ……

 中学生だった二十数年前、近所の図書館で「手塚治虫漫画全集」の『新宝島』を読んだときのことです。
 古本屋では数百万円という値段が付いていること、今では赤本時代の本を読むことはほとんどできないと言うこと、そして「日本のマンガの原点」であるということ。そんな予備知識を持って読んだ記憶があります。手塚治虫というかマンガにちっとでも興味がある人間なら、みんな知っている、そして伝説となっていた作品でした。
 ただ、最大の謎が残りました。「原作・構成」を担当とした"酒井七馬"って一体何者なの??? ということです。肝心の講談社の全集ではその存在についてはほとんど触れられていない。手塚プロのホームページでもこんな感じですね。「まんが道」で本作を描いた藤子不二雄など終戦直後に赤本として現物を見ることができた人たちも少なくなかったわけですが、"酒井七馬"については誰も言及していません。そこらも、"漫画界の始祖=手塚治虫"って定説を形作った作品となった由縁なんでしょうか。
 そんなわけで、私は勝手に水戸黄門における"葉村彰子"みたいな存在だと想像していました。手塚治虫と原稿料その他でトラブった版元が産み出した"幻"の人格。東映戦隊ものにおける"八手三郎"、サンライズにおける"矢立肇"、東映動画における"東堂いづみ"なんかと同じ位置づけの名前だと思いこんでいました。
 それが実在の人物と知ることになったのは大分あとになってからでした。
 近年、"手塚以前"のマンガ作品に関する研究がいろいろと出ていて、ネットでも酒井七馬の様々な情報を手に入れることができます。

 ただ、やっぱりまだ"紀元前"って状態から抜け切れていないわけで、そこらも「手塚治虫=ストーリーマンガの起源 (講談社選書メチエ)」という名作(先日、ようやく読むことができました)がサントリー学芸賞を受賞した由縁だったたわけです。
 そんな状況下で、夏目房之介の「で?」を読んでいると、

ミヤモさんが中野晴行「『酒井七馬伝』を
Amazonで5000位以内にする運動」を立ち上げるとブログで宣言してます。
僕はまだ読んでないので、詳細はこちら↓

とありました。■「酒井七馬伝」をAmazonで5000位以内にする運動のエントリーか。id:hrhtm1970宮本大人さんのところです。中野晴行のサイト「悪役ランプの編集日誌」はここ。これは買っておかなければいけない......とメモメモ。「5000位以内」ってリアルな数字に、むかし自分で本を出したときのことを思い出しました。Amazonでの順位が4桁になるとやたらと嬉しいんですね。週に一度ぐらい、確認しに行ってました。ちなみに、2/25の18時現在、「Amazon.co.jp ランキング: 本で4,755位 」でした。おめでとう。
 まあ、なにはともあれ、子供の時に感じた疑問が解消される本が出るって言うこと。これは期待しないわけにはいけません……って、鉄道系のブログで書く意味があるのか少なからず疑問も感じたのですが、それはまた別の話。

謎のマンガ家・酒井七馬伝―「新宝島」伝説の光と影

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