【4】「京阪特急」

京阪特急―鳩マークの電車が結んだ京都・大阪間の50年 (JTBキャンブックス)

京阪特急―鳩マークの電車が結んだ京都・大阪間の50年 (JTBキャンブックス)

 文字通り、京阪電気鉄道の特急の歴史についてまとめた本。編者である沖中忠順は、以前、同じJTBの「京都市電が走った街 今昔」で京都市電各路線の風景をまとめたベテランである。
 写真を主体としたビジュアルイメージに力を入れているキャンブックスシリーズらしく、京阪特急の塗色である赤+橙のツートンカラーが随所に盛り込まれている。一番魅力的なのは、地上時代の七条駅三条駅の風景。鴨川のせせらぎとか市電とクロスしているシーンとか、祇園祭や正月の賑わいとか、なにもかも懐かしい写真ばかり。1987年に地下化されてからもう20年も経つんですね。そうした歴史的な写真がいろいろと網羅されているというのは、さすが地元、同志社大学の鉄道同好会OBたちが参加しているだけのことはある。
 あと、50年代や60年代の貴重な写真がたくさん載っているというのが有り難い。特にp.38・39にある1000系や1300系のカラー写真。今の特急色となる以前には、茶色や青色の塗色もあったとは聞いていたけど、新旧3タイプが天満橋駅に並んだ写真なんかが掲載されている。そんな時代もあったんだ。個人的なツボにはまったのは、p.102にある特急車1900系の単車回送。なんかユーモラスです。
 京阪の特急車と言えば、1700系→1800系→1900系→3000系→8000系と5種しかなく、有料特急を抱える近鉄東武などと比べれば話題と変化に欠ける題材のようにも思えるが、戦前の「びわこ号」や複々線整備の過程など京阪電鉄の設立の過程も豊富な話題で紹介されている。個人的には、最近の特急の写真なんて白黒でイイから1900系や3000系時代の写真をカラーで見たかった、特急ダイヤや運転系統の変遷なんかに頁を割いて欲しい、京阪特急の代名詞と言えば「テレビカー」なのにテレビの話が少ないのが物足りない......なんて感想もあるのですが、まあそれはそれ。むかし京阪電車の沿線に住んでいて、京阪特急によってマニア心を育まれた人間としては、これで満足です(って、今日は甘めの採点です)。