東北地区を走る臨時列車の不思議な愛称名

katamachi2007-03-19

 今日は、JR東日本の東北地区を走る臨時列車の愛称名について語ります。
 ここ5年ほど、同社の仙台支社・盛岡支社・秋田支社・新潟支社は積極的に臨時列車の運行に努めています。583系485系、あるいはキハ52や58、SLなど国鉄型車両を使った列車も少なくありません。ノスタルジーを求める鉄道マニアのウケもよく、各方面から注目されています。この春だけでも50種ぐらいのネームドトレインが東北路を走ります。
 でもねえ。なんだか微妙な愛称名が多いんですよ。

 現在、日本の列車に付けられた愛称っていくつぐらいあるんだろう。
 戦前の鉄道省時代だと「富士」に「櫻」、「燕」、「鴎」と特急にだけしかな、格式も希少価値も今とは比べものになりませんでした。戦後も60年代ぐらいまではそんなイメージが強かった。だいたい、「はと」のような動植物、「あさま」や「出雲」のような地名・旧国名、空、天体、現象……などなど、走行している地域、そしてスピードをイメージしてくれる素敵な名前がほとんど。そんな優等列車に魅せられたのは子供や鉄道マニアだけではありません。
 けど、国鉄から準急が廃止になった1968年ころから、特急と急行、そして愛称名のインフレが始まります。70年代後半に快速にも愛称名が付けられ、80年代には「スーパー」とか「ライナー」とか横文字も入り交じってきます。JRになってからはナウなヤングを意識したような奇をてらった愛称名ばかりです。特に、二つ以上の名詞が結びついてできた複合名詞が多すぎる。あれもこれも名前に盛り込もうとして、逆に印象が散漫になっています。
 そんな列車名は、特に臨時列車に多いんです。年に数日、多くてもシーズンの土日に運転される観光用列車。少しでもたくさんお客さんを集めたいと思って名付けたのでしょうが......これだけ名前が長いと利用者はもちろん、JR職員すらその名前を覚えられません。昨夏、仙台地区の某駅で「SL郡山会津路号」の指定券を注文したのですが、「えっ、そんな列車あったかなあ。お客さん、名前違うんじゃないの……」となかなか発券してくれませんでした。隣県で同じ支社内で運転しているのに……
 そこで、この春の東北地区(仙台支社・盛岡支社・秋田支社・新潟支社)における臨時列車名をピックアップしてみましょう。

  • 2007年春の東北地区の臨時列車
運転日 車両 臨時列車名 区間
4/21〜 秋田内陸 弘前お城とさくら号 角館〜弘前
4/28〜 kenji さんりくトレイン北山崎号 盛岡→小本→久慈
5/5〜 キハ52? 米内しだれ桜号 盛岡〜上米内
6/2 キハ52? 秘境駅 盛岡〜茂市〜岩泉
6/3 キハ52? 岩泉・龍泉洞 盛岡〜茂市〜岩泉
4/14〜 こがね こがねふかひれ号 仙台〜気仙沼
5/26〜 DE10 レトロホエール号 小牛田〜女川
5/26〜 レトロホエールリレー号 古川〜小牛田
4/28〜 湯けむり 小牛田〜鳴子温泉
5/3〜 ふるさと お座敷藤原まつり 平泉〜仙台
4/14〜 583系 ふくしま花見山 仙台〜福島
3/2 583系 ゴロンとなのはな 仙台〜安房鴨川
5/19〜 C11 SL会津只見新緑号 会津若松〜只見
5/19〜 485系 SL会津只見新緑リレー号 郡山〜会津若松
5/19〜 キハ58 只見SLリレー号 長岡〜只見
5/3〜 風っこ 風っこ会津只見 只見〜会津若松
5/3〜 485系 風っこ会津只見リレー号 郡山〜会津若松
5/26〜 C57 SL磐梯会津路号 会津若松〜郡山
5/27〜 C57 SL郡山会津路号 郡山〜七日町
5/3〜 キハ58 只見新緑号 六日町〜只見
5/3 津川狐の嫁入り 新潟〜津川
4/1〜 こがね 花回廊オープニング号 米沢〜新潟
4/1〜 キハ58 花回廊号 米沢〜荒砥
4/1 455系 米沢・置賜花回廊号 仙台〜山形
6/9〜 C11 SLさくらんぼ号 山形〜左沢
6/16〜 風っこ 風っこ花回廊号 米沢〜長井
3/18 D51 SL村上ひな街道 新潟〜村上
4/15 分水おいらん号 分水〜吉田
4/14〜   弥彦お花見号 新発田〜弥彦
5/4〜 NO.DO.KA 妙高ミズバショウ 新潟〜妙高高原
4/14 DD53 急行 出羽(団臨) 新津〜酒田
4/15 DD53 急行 鳥海(団臨) 酒田〜新津

※日付は運転初日。一部、書くのがメンドーで外したのもあります。

 ああ、なんだか焦点が定まらない列車名が多いですね。
 凄いのは「SL会津只見新緑リレー号」。あわせて5つの名詞が複合した名称です。「湯けむり」や、下に付け加えた「鳥海」や「出羽」みたいなシンプルな名前と比べるとその差が際だっている。他の列車への連絡列車でこれがメインじゃないし、指定席もないんだし、単に「臨時」とだけ名乗っていけばいいのに……なぜこんな長い名前を付けたのでしょうか。いや別に東北地区だけが妙なセンスをしているんじゃなくて他の会社でも同じようなもんです。
 イベント列車を走らせてちょっとでも増収に繋げようという各支社の姿勢は評価したいと思うのですが、どうも愛称名が象徴しているように思いつきの域を脱し得ない列車が多い。一時的に数日限定で走らせるのでなく、翌年、再来年と継続的に育成していくつもりで臨時列車を運行して欲しいのですが……
 あらゆる意味で伝説に残る臨時列車を走らせた……という点ではJR西日本が最強です。 「マリン白浜221」とか「シャレー軽井沢」とか「ナインドリーム甲子園」とか「スーパー雷鳥宇奈月 サンダーバード」とかなんとか。ここらの列車に関する学生時代のアルバイトの思い出もあったりしたのですが、それはまた別の話。