アフリカにもあった石景山遊楽園モドキの遊園地

　５月のゴールデンウィーク明けに日本のワイドショーなんかで話題になっていた中国北京にある石景山遊楽園。あの、ミッキーマウスや白雪姫と七人の小人、ハローキティ……そうしたディズニーや日本のキャラクターっぽい着ぐるみが園内を歩いているという、ちょっとアレな遊園地です。「ディズニーランドは遠すぎる。石景山遊楽園にいらっしゃい」という名文句と、ドラえもんと似ても似つかないようなキャラクターが日本の視聴者の失笑を買っていました。笑いのツボを押された人も多かったらしく、Wikipediaでも経緯が細かく報告されています。
　でも、外国に行くと、あーいったキャラクターはどこにでもあるんですね。中国のようにあれほど潔くはないけれど。

イランで見たミッキーマウス塗色の高速バス

　今まで一番驚かされたのは、イラン国内で何度かお世話になった長距離バス会社でした。

　あの国、最近のニュース報道を見ている限り、想像もできないと思いますが、意外に鉄道や道路、下水道などインフラ設備はしっかりしているんですね。石油がたくさん採れて資金が潤沢にある上に、イランイスラム革命で社会主義体制がとられるようになった影響もあるのでしょう(いやパーレビ朝のお陰？)。道路の整備状況は万全ですし、ガソリンの値段もただ同然。国内各都市を結ぶ長距離バスを運行している会社が山ほどあるのですが、かなりレベルの高いボルボのバスを使っていますし、もちろん冷房・リクライニング付き。過当競争もあるのか、500kmほど乗っても運賃は700円程度なんです。
　で、2000年5月に、ヤズドとエスファハーンの間を、とある人気バス会社に乗ったときのことです。
　バスターミナルに行くと、目の前に現れたのは、「黒色＋ミッキーマウス」という奇抜なデザインのボルボの大型バスでした。正直、ミッキーマウスの描線は崩れていて、「(C) Disney」と書かれた公式グッズの画とはまるで別物でした。そのセンスの悪さに苦笑いさせられつつ、でずにーキャラがイスラム原理主義の国のど真ん中、モスクの真ん前を行くという珍妙な風景を楽しんだものです。ちなみに、写真撮影は認められませんでした。著作権上の問題ではなく、ガイジンの写真撮影を嫌うポリスの視線を気にしていたからです。
　まあ、ビザを取りに行った大使館の壁に、「ビザ代50ドル。ただし、アメリカ・イギリス国民を除く」と大書きされているぐらいですから、でずにーのスパイに摘発されることはしばらくないでしょう。向こうの連中に聞いてみると、アメリカに「悪の枢軸」、「テロ支援国家」とか言われて反発しつつも、アメリカ文化は大好きらしいです。

モロッコの遊園地でもディズニーキャラが活躍していました

　で、今回行ったモロッコ。到着した日にカサブランカから電車に乗って、南西部の中心都市マラケシュに行きました。ここも旧市街地にメディナと呼ばれる古い街区が残っていて、その中心となるジャマエルフナ広場とその一角は世界遺産にも指定されています。
　宿に荷物を置いて、旧市街をそぞろ歩きするのですが、蜘蛛の巣のように巡らされた路地を歩いていると、だんだん方向感覚を失ってしまい、今、自分がどこにいるのか分からなくなる。そのうち1時間ほどキヨスクや土産物屋をテキトーに冷やかしながら歩いていると、メディナと城壁の端にあるゲート、そして大きな広場に出ました。後で確認すると、デバー門(Bab Debbar)というところらしいです。
　その側に、小さな遊園地があり、たくさんの子供たちが遊具の順番待ちをしていました。30年以上前に日本の百貨店の屋上にあったような移動可能な仮設の施設です。これが東京や大阪の中心部にあったとしても誰も乗らないでしょう。すでに汚れきった僕の目からすれば、なんでこんなんで楽しめるんだろう......と思うのですが、娯楽の少ないこの国ではまだまだ魅力的なんでしょうね。
　ここで一番人気なのがメリーゴーランド。ちょうど子供たちが備え付けの遊具に乗り込むところでした。ヒジャーブ(ベール)とコートで身を包んだお母さんたち(西欧化の進んだこの国でも、成人女性の7、8割はそんな感じです)も楽しそうに会話をしています。一人ぼっちになるのを怖がって泣き出す子供もいます。一回の乗車賃は3ディラハム。日本円で45円。こっちの物価では高いのか、安いのか微妙なところです。
　さて、この搬具。戦車とか戦闘機とかゾウとかを形取ったデザインになっているのですが、一つだけ、違うのが……そう、あのキャラクターです。お馴染みディズニーの一番人気キャラクター、ミッキーマウスです。うへー、勇気があるなあ。

　さて、時間が来ました。搬具が動き出します。男の子も女の子もみんな楽しそう。
　でも、惜しむらくは、僕らのアイドル、ミッキーマウスだけ動かないんです。なんか故障でもしているんでしょうか。あるいは、北京の遊園地の話がこちらでも報道されて、急遽、使用するのを止めたのか……
　ていうわけで、モロッコにも石景山遊楽園モドキの遊園地があったという話でした。
　ちなみに、先月、東北地方の某港町に行ったときに、「ミッキー食堂」という店に入りました。怪しい名前の割には、取りたてのイカが山盛りの刺身定食はかかなりうまかったのですが、看板には、ミッキー安川ではなくて、鼠園の某有名キャラがズラーッと描かれていました。今の日本でこんなことをするって勇気があるなあと感心したのですが、それはまた別の話。