イギリスで走行する「かもめ」モドキの日立製電車

katamachi2007-08-26

 鉄道発祥の地である英国に日本から頼もしい“助っ人”が到着した。2012年ロンドン五輪に向け、英仏を結ぶドーバー海峡トンネル連絡線の一部を走る日立製作所の新型高速車両(6両編成、最高時速225キロ)が23日、神戸港から約1万6800キロの船旅を終え、英南部サウサンプトン港で陸揚げされた。
 今後、英サウスイースタン鉄道会社が試験走行を実施し、09年に同トンネル連絡線の一部であるロンドン・セントパンクラス駅−英南東部ケント州アッシュフォード駅間で運行を開始する。同区間の所要時間は現在、83分間だが、36分半に短縮できるという。同トンネル連絡線は03年9月に部分開業し、年内に全線開業する予定。
鉄道発祥国に日本から“助っ人”日立製車両陸揚げ2007/08/25産経新聞

 車番は"Hitachi Class 395"(商品名はA-train commuter)。日本の新幹線が船でやってきた……とイギリスの新聞や鉄道関係者でも騒ぎになっているようです。
 えーと、写真は出せないんで、上の記事の写真か陸送を報じるサウスイースタン鉄道のHPAugust 23rd 2007を見てください。あるいは、下の白い「かもめ」の写真をジーッと目をこらして、それが南海「ラピート」と同じ感じの濃紺色であるとイメージしてください。形やデザインは885系そのまんま。なんと、こんな日本製の電車がイギリスのサウスイースタン鉄道を走るらしいんです。

ロンドン五輪で観客輸送の主役となる日本製の新型特急車両が、英国に上陸
asahi.com:「五輪高速列車来る」 日立の車両、英メディアが関心
South Eastrn Trainsサウスイースタン鉄道のHP
日立のホームページ英語版設計カタログ付き。
「wikipedia Channel Tunnel Rail Link」(日本語版もあり)。
wikipediaクラス395系電車
 欧州の鉄道事情には詳しくないんで*1調べてみると、

  • Channel Tunnel Rail Link線?はロンドンとユールトンネル(英仏トンネル)を結ぶ109kmの短絡新線。在来線とは完全別線で敷設された。今世紀イギリス最大の鉄道プロジェクト
  • 今回、入るのはユーロスターではなくて「ケントエクスプレス(Kent Express)」。セントパンクラス(ロンドン)〜アッシュフォード(ケント)間を36.5分と従来の半分以下で結ぶ。短距離型高速列車、たとえるなら東京と那須塩原を結ぶ「なすの」のようなものか。英仏トンネル(東北新幹線なら白河の関)を越えるようなメインを張るわけではない。速度も最高速度225km/hと経済的。
  • 日立製作所笠戸事業所(山口県下松市)のの新車(6両編成)は"Hitachi Class 395"(商品名はA-train commuter)の29編成で、2007年中に4編成が投入されという
  • 実際に投入されるのは2009年12月

時速225km/h走行だけどロングシートで立席ばかり……という変な通勤電車

 とにかくロンドンオリンピックが開催される2012年に間に合わせるということですか。ロンドンとユーロトンネルを結ぶ新線の話って20年ぐらい前から着工するのしないのモメているとは聞きましたがようやく今年線路が完成し、試運転が始まると言うことなんですね。まずはめでたい。
 さて、この「かもめ」もどきの電車のツッ込み所は以下の所。

  • 記事にあるように鉄道発祥地であるイギリスに日本の電車が走るという愉快さ
  • でも、2番手列車用というのが微妙なところ
  • 同社のHPやwikiにある画像はJR九州の特急「かもめ」885系そのまんま
  • でも現車の塗色は南海「ラピート」+黄色の警戒色。
  • 直流の第三軌条750V区間では最高速度が160km/hに落ちる
  • 最高225km/hで走るのに座席定員は348名。立席は508名

 最大に謎なのが最後のヤツ。6両編成で座席348+508人。1両あたりの定員が142人……ってまるで103系並みの収容力なんだ。で、日立の造っているA-train のカタログをみると、High Speedタイプで273名、Commuterタイプでも座席定員は320人+立席約100人しか収容できないと思うのだけど……*2
 さて、時速225km/hで走行する通勤電車で立ったまま通勤するってどんな気分なんだろう。スペックによっては自転車も積み込めると言うし……やっぱイギリスの鉄道って奥深いなあ。2010年ぐらいにはぜひ行ってみたい。
 でも、それより「ロンドンの地下鉄初乗り料金(4ポンド)は、円換算で1000円を超え」というのだけはなんとかしてよ……と思うのですが、それはまた別の話。

*1:そもそもイギリスに行ったことがないんです。なんか行きそびれて

*2:このカタログ、センスのいい内容になっているんですよね。日本のマニア向けにもこういうデーターを公開したら喜ぶマニアも増えそうだけど