姫新線美作江見駅と"ホルモン焼きうどん"

katamachi2007-09-12

 9月2日、3日と岡山県に行ってきました。18きっぷの残枚数を消費するめため姫新線16駅、津山線1駅、伯備線9駅、吉備線7駅、赤穂線8駅の計41駅に降りてきました。美作千代駅岩山駅方谷駅備前一宮駅……と昭和ヒト桁の面影を残す木造駅舎がたくさん残っているのが魅力的だったのですが、詳細はまた別の話。<参考>2007-07-31川島令三にも忘れられたJR姫新線で高速化工事がスタート
 そんな一つである美作江見駅に降りたときのことです。到着は13:05とお昼過ぎ。朝食をパスして移動していたんでかなり空腹だったのです。岡山県美作市の前身である旧作東町(英田郡)の中心駅でもあるんで、さすがに駅の近くに商店が一つぐらいあるだろうと期待していたんですが、猛暑の中、駅周辺を歩いていてもホームセンターが一つあるだけ。日曜ということもあるのか、それ以外は全て閉まっている。

 ガッカリして反対方向へ行くと、一軒だけ店が開いていました。店の名前は芳原ホルモン店。駅から徒歩2分。

うどんにホルモン……と最初は尻込みしました

 肉屋さんか……と一度は通過していたんですが、よく見ると「ホルモン焼」「食堂」「営業中」との文字が出ている。ホルモンはあまり好物ではないんですが他に選択肢はない。この後、コンビニがあるような所には行く予定がないし、23時過ぎに着く宿泊地の新見まで食事をできる可能性はかなり低い。
 仕方がない。暖簾をくぐると、突然の珍客に一瞬、オバチャンが引きつった顔をされます。「すんません、なにか食べれますか……」(ホントに腹減っていたんです)と尋ねると、「"ホルモンうどん"でいい?」。
 えっ、「ホルモン」と「うどん」? "肉うどん"だと牛肉を"素うどん"と混ぜているけど、これは代わりに"ホルモン"を入れるの……。うまいのか、それ。うどんつゆのなかをゼンマイが泳いでいる姿を想像してしまい、なんか食欲が急に減退してきたような気がします。選択を間違ったか。
 で、もう一度確認すると、ここの"ホルモンうどん"は、鉄板でホルモン肉とうどんを混ぜて焼き上げる料理法を使うという。ああ、焼きうどんの一種ですか、それならまだ許容範囲です。
 席について、オバチャンが目の前の鉄板で鉄板で料理されるのを待ちます。「うちの特製ソースだよ」というタレを鉄板に落として、うどん2玉とホルモン(テツチャン、ミノ、ゼンマイ)と絡めながら待つこと5分。香ばしい匂いが店内に漂ってきます。
 いやあ、予想外にウマイです。ただの焼きうどんだと味わいが単調になりがちですが、それがホルモン焼きと特製ソースとミックスされることで独特の食べ応えになる。意外にボリュームがあり(下の添付写真は半分以上食べた後の姿です)、これで一人前800円は安い。

 でも、不思議なのは、この"ホルモンうどん"というメニュー。ここは"ホルモン肉専門店"と"近所の方の夜の一杯飲み屋"を兼ねているから酒のアテがわりに置いているとは推測できますが、ホルモン焼きの本場である大阪、そして鶴橋の店に行ってもそんなメニューは見たことがありません。

ホルモン焼きうどん美作市佐用町など姫新線沿線に広がったわけ

 どうしてホルモン焼き??と尋ねてみると、

  • この美作にはホルモン専門の肉屋さんがたくさんある。店は戦後まもない頃からやっていた
  • 加古川*1から業者さんが新鮮なホルモンを持ってくる。
  • 普及しているのは兵庫県姫路市から佐用町、岡山県美作市勝央町津山市……へと続く国道179号とJR姫新線沿線ばかり。
  • ホルモンうどんはこの地域のオリジナル
  • うちの特製タレは人気で、岡山市とか北海道からも注文があることもある

ということでした。確かにこの後も姫新線の駅をいくつか回りましたが、なぜかホルモン屋さんが駅前にポツンと立っているところに出くわすことが何度かありました。
 ちなみに、ホルモンうどん。帰ってから検索エンジンで調べてみると、

 ホルモン焼きうどん兵庫県佐用町の郷土料理。鉄板焼きの焼きうどんの一種で、タレにつけて食べる。この地域では精肉の出荷が多かったため、食材としてホルモンなどがあまる傾向にあったためうどんなどの食材に使われるようになったとされる。
ホルモン焼きうどん

今やすっかり佐用名物となった「ホルモン焼きうどん」ですが、実はとってもヘルシーなのをご存知ですか?”脂のかたまり”みたいな容姿をしていますが、本当はカルビやロースといった赤身の肉と比べると2割〜3割ほどのカロリーしかないのです。しかもビタミンA・B1・Cに鉄分、カルシウムなど体に必要な栄養素がイッパイ。
お店によって違う「こだわりのタレをつけて思いっきり食べてください。
基本一人前は、うどん2玉・ホルモン1です。あとは、お好みでミノ・レバー・シンゾウなど、お好きな物を1つどうぞ。(これで多分7〜800円程度です)
佐用町商工会青年部 さよう名物「ホルモン焼きうどん」の秘密

とありました。ぼくが美作市で食べた"ホルモンうどん"は、県境を跨いだ先にある兵庫県佐用町が名物として売り出している"ホルモン焼きうどん"の派生、あるいは同じモノと言ってもいいんでしょうね。
 2005年に兵庫県の行った「ご当地名物サミット」にあわせて佐用町で「ホルモン焼きうどんマップ」を頒布したのが、翌2006年になって神戸ローカルの新聞などに取り上げられ、最近は関西ローカルのテレビにも取り上げられるようになって注目されている。佐用町(兵庫県)商工会の人たちが中心となって、地域振興の一環として取り組んでいるプロジェクトのようです。まあ、全国各地で見られる"ご当地ラーメン"みたいなものでしょうね。最近だと"富士宮焼きそば(静岡)"や"イタリアン(新潟)"など"ご当地焼きそば"ってのも出現していますが、まだ"ホルモン焼きうどん"の知名度はそこまで上がっているわけでもない。
 まあ、佐用町の"ホルモン焼きうどん"か岡山側の"ホルモンうどん"かどちらが"元祖"で"本場"で"本家"なのかという点は分かりませんが、加古川から姫新線沿いの内陸部にホルモンの食肉を卸してきている業者がこの料理を広めていった張本人だとは想像できます。
 ただ、牛肉のBSE問題などの影響で、ここ数年、同業者で閉めた店がいくつもあるとかで、決して目出度い話ばかりというわけでもない。この店でも、近くの観光地などで聞いて尋ねてくる客がいるようなんですが、その一方で、例の飲酒罰則規定の強化で一杯飲みに来てくれる地元の方は減っているそうです。
 そんな話を聞きつつ、昼下がりの人気番組、朝日放送アタック25」のクイズを見て、「児玉清はもう老けちゃつたね」「髪も白くなった」とボヤきつつも、問題に真剣に取り組むオバちゃんと常連さんの嬉しそうな顔を横目で目ながら、猛暑の一間にホルモンうどんと鉄板の余熱でまた汗まみれになるのです。ここでビールでもあればググッといきたいなあと思いました。いや、私はそもそもアルコールは一滴も飲めないのですが、それはまた別の話。

*1:近畿最大級の加古川食肉地方卸売市場がある