講演会「三田平凡寺と我楽他宗」を聞きに行きました。

katamachi2007-10-20

彦根まちなか博物館セミナー「三田平凡寺と我楽他宗」
日時:平成19年10月20日(土)14:00〜15:30 
場所:アル・プラザ彦根6F 大学サテライト・プラザ彦根 会議室 (JR彦根駅前)
講師:漫画コラムニスト 夏目房之介
本講演では我楽他宗の主催者であり、三田平凡寺の孫であり、そしてご存知、夏目漱石の孫でもある漫画コラムニスト夏目房之介氏に、「奇人」「怪人」と呼ばれた祖父三田平凡寺とその仲間たちについて熱く語っていただきます。
彦根まちなか博物館セミナー開催
10月20日に彦根で講演します夏目房之介の「で?」

 夏目漱石のお孫さんである夏目房之介さんの講演会。なんで東京在住の三田平凡寺&夏目さんの講演を彦根市でやるの……と思ったら、

ということで招聘されたとのこと。ちょうど同じ建物で「近江鉄道コレクション」という展覧会もやっていたので見に行くことにしました。
 三田平凡寺については「不肖の孫」という夏目さんの本でしかその存在を知らなかったんですが、

  • 東京泉岳寺の地主であり、珍品蒐集家&奇人変人の趣味人として一部で有名(1879年〜1960年)
  • 1919年に趣味集団「我楽他宗」を運営し、あらゆる階層の人々と交流。戦前の雑誌でも紹介される
  • 自宅を奇妙奇天烈に改装していく。2階にはローラースケート場。ニューギニア産というドクロとか、ホンモノの大便をかたどった金粉付き石膏オブジェとか、秘宝館に並べられているような性具とかなんとか、わけのわからないものがたくさん並べられていた。

とかなんとか、ある一部の人たちの間では有名な人であったらしい(Wikipedia 三田平凡寺)。

不肖の孫

不肖の孫

 この趣味集団「我楽他宗」には、宮武外骨やお殿様、金持ちから大工さん、謎のインド人まで有名無名、あらゆる階層の人たちが集っていたという。夏目さんは、

  • 彼らは「趣味」というキーワード一つで結集していた。イデオロギーや目的とは無縁。「趣味が自立していた」
  • 平凡寺は集団の中心にいたけど、自ら積極的に動いたり、表現しようとしたりする人ではなかった。逆にきちんとしたこと、きれいなものがキライ。わざと汚くする。バラバラにする。

と指摘する。
 なるほど、ある意味では、自分も含めたオタク、マニア、コレクター、ディレッタント高等遊民ニート不労所得者......etcの元祖とも言える存在とも言える。自然発生的に趣味集団が出現したというあたりも、80年代からこっち、われわれが編み出してきた様々なコミュニティーと似通っている。それを90年も昔にやっていたわけだから凄すぎる。ただ、細分化して深く、狭く分裂していこうとする今日の趣味人たちとは違い、三田平凡寺は広く拡散していこうとしていく。趣味=自己表現の場という観念に縛られることもない。そこらの差異って何なんだろうか。ちょっと興味深い。
 面白かったのは、三田平凡寺漱石も、実際の家族には、はた迷惑な存在であったと言うこと。夏目さん所有の三田平凡寺の写真がたくさん紹介されたのだけど、それに巻き込まれている家族たちの姿がなかなか笑える。最後に紹介された「ヘーボン島カン族土人少女」と称した写真。頭蓋骨を持ち、東南アジア風コスプレ(腰巻きを巻いただけで上は......)をさせられている年頃の娘さんたち(夏目さんの伯母さん)はあまりにも気の毒に思うのですが、それはまた別の話。