日本最南端を飛ぶ琉球エアの波照間線が11月で廃止される。

katamachi2007-10-24

琉球エアコミューターRAC)は来年11月で石垣波照間線を休止する方針を固めた。波照間便に就航しているBN2B型機のパイロットが退職するのに合わせた措置で、同社は後継パイロットは養成しない方針。
RAC石垣波照間線が来年11月に休止へ八重山毎日新聞、2006/12/19


2007-11-09定期便廃止間近の波照間空港へ行ってみた。
2007-11-09波照間空港の備忘録
2007-11-08今でも文字通り”陸の孤島”となっている船浮集落へ行く。
2007-10-24日本最南端を飛ぶ琉球エアの波照間線が11月で廃止される

日本でも有数のオーシャンビューが楽しめる石垣-波照間線

 日本で一番南の有人島である波照間島の定期航空路線、石垣-波照間線が2007年11月30日限りで廃止される。
 日本航空系の琉球エアコミューターhttp://rac.churashima.net/が運行しているコミューター路線で、週に4回、石垣空港波照間空港の間を2往復ずつ運行している。就航しているのはイギリス製のブリテン・ノーマン アイランダー (BN-2) 。定員10名、うち1名はパイロットになるから、乗客は最大9人という国内定期路線最小の機体となる。
 実は、石垣島波照間島の間は高速艇で1時間ほどの距離である。毎日運転で6往復で、値段は3050円。飛行機だと所要時間は半分ぐらいではあるが、運賃は7700円と2.5倍ほどする。だから、以前、波照間に来たときは2度とも船を利用した*1。高速艇は強風や台風など天候が悪化したときは運休することも少なくない。それは飛行機も同様である。乗車定員9人でしかも週に4回しか飛んでいないので、地元の人たちも観光ツアー客も船を利用する人の方が圧倒的に多い。この船が就航した影響もあって、飛行機の利用者はここ20年で半分以下に落ち込んだ。
 それでも飛行機の定期線を残して欲しい気持ちは地元でも根強いらしく、2005年にRACから「2006年春廃止」の話が出た後、竹富町が1000万円の補助金を出して先延ばししてもらっていたのだが、ついに力尽きて11月いっぱいで廃止することになったのだ。
 ただ、この波照間線、旅行者の間では秘かな人気路線であるらしい。「飛行機がキライでも波照間への路線は一度乗っておいた方がイイよ」と私の知人や旅先で出会った連中なんかも口を揃えて指摘していた。石垣から太平洋に向かって飛び出した後、最南端の孤島、波照間へと向かっていく。実質の所要時間は15分ぐらいだけとの話だが、機体が低空を飛行するので眼下にサンゴ礁を見下ろしながらのフライトとなる。特に波照間島の手前で旋回しながら島の東端にある滑走路へ降りていくところが魅力的ならしい。
 空港施設そのものは私も、以前、見物しに行ったことがある。空港のターミナル簡素な造りのカウンターと10席ほどのイスが置いてあるだけである。町の公民館なんかと同レベルの小さな平屋である。定期線が就航している空港では日本最貧弱施設であるのは間違いない。飛行機の発着がないときは無人なのだが入口は開けっ放しになっていて、ヨソ者も立入自由になっている。ちょうどアメリカの同時多発テロが起きた直後であったにもかかわらず、世界情勢とは無縁な波照間の大らかさに驚かされたという記憶がある。

 さて、当方、それなりにヘビーな鉄道マニアであると自覚しているし、あと多少は日本海軍の軍艦や旅客船なんかには興味あるが、基本的には飛行機とバス、クルマは完全な守備範囲外である。ただ、年末で消えるJALマイレージが10000マイル以上あるのでこれを消化しなければならない。
 そんなこともあって、次の週末、日本トランスオーシャン航空の神戸〜石垣線のフライトを予約して、廃止間際の石垣〜波照間線にも搭乗してみることにした。メインは小浜島西表島であり、波照間行きの飛行機に乗るのは あくまでもその"ついで"である。なんか鉄道路線や車両の廃止前に押しかけてくる廃線オタクみたいでイヤだなと思うので予防線を張ってみたのだが、まあそれはそれ。

で、12月から別の会社が新規就航するという話はどうなったの?

株式会社エアードルフィン那覇市・半田貞治郎社長)は22日、石垣空港を中心とした新たな路線展開を図る方針を発表した。同社が構想している八重山関連路線は石垣-波照間-与那国路線、石垣-多良間-宮古路線の貨客事業と石垣-那覇の貨物路線への参入。
(中略)同社では石垣-波照間-与那国路線、石垣-多良間-宮古路線の両路線を1日に2巡する構想。具体的には石垣空港を出発し、波照間、与那国空港を巡って石垣空港着。そのあと、石垣空港を再度出発し、与那国、波照間空港を巡って石垣空港着となる見込み。
エアードルフィン波照間、与那国乗り入れへ 9人乗り、12月から運航八重山毎日新聞、2007/03/23

 ところで、上の記事のように、RACの石垣〜波照間が11月いっぱいで廃止された後、12月からエアードルフィンという那覇の会社が路線運行を代替するとの報道があった。同社は乗り合いの不定期便運航の実績があり、現在、那覇空港から慶良間、伊江島、伊是名、沖永良部の離島行き「アイランド・シャトル便」を就航させている。それぞれ週に1〜6回で乗客定員3名の小型機を飛ばしている。同社が那覇から石垣方面へ進出するにあたり、与那国島や多良間、宮古方面へも就航する"方針"だと発表していた。RACのような定期路線としてではなく、ここでも路線申請のいらない不定期路線として、発着時間を定めずに就航させる予定であるらしい<→それを報じる新聞記事リスト>。
 ただ、その後、続報がなく、廃止の日まであと1ヶ月ほどになっている。
 JALホームページを見てみると、11月30日の便まではネット予約できる状態になっているのだが(ただし最終週は満席、キャンセル待ちになっている)、12月1日以降は、どの日も「ご指定の路線は運航しておりません」との表記になっている。RACJALともサイトでは波照間線に関するニュースリリースはないが、路線の休止or廃止は確定なんだろう。
 一方、エアードルフィンという会社は、ホームページで12月のダイヤを発表しているのだが、ここには「アイランド・シャトル便」慶良間方面などへの運転日があるだけで、石垣〜波照間〜与那国線のダイヤは載っていない。他のページでも波照間行きについては言及がない。
 今年7月から那覇〜石垣間で全国初となる小型貨物専用機”リージョナル・エクスプレス便”の運航を始めており、単発プロペラ機セスナ208B(グランドキャラバン 貨物約1.5t搭載)が石垣まで飛来し始めた。これは乗客9名を載せることが可能だというが、10月24日に調べた限り、波照間への旅客輸送についてはまだ何も言及されていない。波照間島を抱える竹富町のホームページも同様だ。同種の保有している飛行機は3機、パイロットは9人だけらしい。飛行機を飛ばそうにも機材繰りがつかないのだろう。
 検索した限り、波照間島の地元の方のブログ「ベスマの風景ー2」に貼られた7月31日付の八重山毎日新聞では「12月には石垣波照間線や石垣多良間線の旅客と貨物の輸送を計画」と言及されたのが最新の情報か。でも、この時点でまだ「計画」と言っていては、今年12月からの就航なんて無理なんじゃないのだろうか。観光シーズンの始まる来春以降ということになるのか。
 まあ、いいや。明日でも当該会社に電話で聞くことにして、とりあえず週末の波照間便を予約しよう……とJALのホームページに行ってみたら、なんとどの便もどの便も満席、キャンセル待ちばかり。かろうじて10/30の便が1席だけ残っていた。う〜ん、これでは西表でゆっくりしている時間がない。困ったなあ……という悩みも出てきたのですが、それはまた別の話。<参考>
「空港探索」2007/10/15波照間路線の今後
「ベスマの風景ー2」RAC関係新聞記事

追記

 10月25日朝にエアードルフィン社の予約センターに問い合わせたところ、「12月に運航すると新聞発表があった事実は聞いているが、実際どうするのか現場レベルにはまったく情報がない」とのことだった。

*1:最大の欠点は西表島の島影を抜けた後、航路の半分ぐらいは外洋に出てしまう点。高波をモロに受けてめちゃくちゃ揺れてしまう。乗り物酔いが激しいので、毎回、胃のモノを外に出していた。