波照間空港の備忘録

 最後に波照間空港のあらましを紹介してみよう。

  • 1972年に緊急用空港として開設、1976年より供用開始
  • 滑走路は800m。定期航空路線が走る国内空港では最短
  • この空港は、波照間では日本有人島最南端の高那崎と並ぶ"観光名所"になっている。売店で扱っているシェイクがオススメらしい
  • 80年代の旅客利用者は年間1万人を越えていたようだが、安栄観光(後に波照間海運)が高速船を就航した影響もあって、波照間訪問観光客数が激増しているにもかかわらず、空港利用者数は半減する。さらに2001年10月に機材がDHC-6(定員19人)からBN-2(定員9人)に変更されて輸送力が半減したことも禍した。毎日1便運航だったが、2004年から週4日2便運航に変更。石垣からの日帰りも可能となったが、予約も取りにくくなった。
  • 年間利用者数の推移は<1987年>1.21万人→<1990年>0.64万人→<1995年>0.61万人→<2000年>0.52万人→<2005年>0.37万人。定期路線が就航する空港では全国最下位。
  • ちなみに、利用者数が同レベルだった慶良間空港(0.4万人 沖縄県)は2004年に、小値賀空港(0.3万人 長崎県五島)と上五島空港(0.5万人)は2006年に、それぞれ定期路線が廃止されている。波照間線廃止後は、佐渡空港(1.1万人)、そして奥尻空港神津島空港あたりが最下位となるのか。


沖縄県ホームページ 波照間空港

  • 空港と波照間の市街地とは4kmほど離れているが、定期バスは運行されていない。島内にはタクシーも存在しない。ゆえに竹富町長が許可した受託者が行っている自家用自動車有償運送を利用することになる……となっているけど、実際は宿泊する民宿の無料送迎に頼ることになる*1。日帰り客だとレンタサイクル屋か日帰りツアーの送迎を利用する-2006年春廃止が決まっていたが、竹富町などが補助金1000万円追加することで1年間様子見することになった。でも、2007年11月いっぱいでの廃止が決定する。理由として挙げられているのは、「定員9人では採算が取れない」、「BN2B型機のパイロットが退職する」など。
  • 12月からはエアードルフィンという会社が路線運行を代替するとの報道が今春にあった。石垣〜波照間〜与那国〜石垣間で一日2本、不定期運航を行うと報道された。だが、諸事情で12月1日からの運航は間に合わなかった。年末から運航を始めたいという意志はあるらしい。

 琉球エアーコミューター(RAC)が11月末で石垣―波照間路線を廃止することを受けて、路線引き継ぎを計画していたエアードルフィン那覇市、三松達哉社長)が、12月1日からの運航は厳しいと竹富町に伝えていたことが分かった。石垣空港での燃料供給態勢など準備が整わず、運航は年末ごろになる見込みだ。これによって、波照間空港には数週間、旅客機が到着しないことになる。
 エアードルフィンの三松社長(当時副社長)は3月、RACの路線廃止を受けて「12月1日から運航できるように準備したい」と継続を表明し、RACと同じく週4日8往復の運航を準備していた。
 ところが、エアードルフィンのプロペラ機(9人乗り)はジェット燃料でなくアブガスというガソリン燃料を使う。そのため石垣空港で新たにアブガスの供給態勢をつくるため時間がかかり、12月1日からの運航は絶望的という。
 琉球新報の取材にエアードルフィンは「帰省客も多い年末年始までには何とか間に合わせたい」と話している。
「石垣―波照間、運航来月開始困難に 燃料供給整わず」琉球新報、2007年11月8日
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071108-00000007-ryu-oki

  • 不定期運航だと「毎日運航してくれない」「乗り合い便なので出発時刻が直前まで不明瞭」「全国規模の時刻表の掲載がなくなるし、JALのHPからの予約ができないから路線の知名度は落ちる」という問題があるのかもしれない。
  • 波照間の島を歩くと路線廃止反対を訴えかける看板をよく見かけたが、現状では高速船で十分なような気がする。
  • 高速船の運賃は飛行機の半額程度。石垣-波照間の所要時間は船60分、飛行機20分だが、石垣市内での空港への移動時間も考えればさほど違いはない。
  • 輸送力は、飛行機片道2便18人/日、船は6便最大200人ぐらい。比較にならない。かといって現在の機体を代替できる適当な旅客機は存在しない。ターボプロップ旅客機のDHC-8だと定員は大きすぎるような気もする。
  • 荒天時に船が出なくなると言う問題はあるけど、船会社は多少荒れても欠航しない(特に安栄観光)。一日中、船が止まることはほとんどないとも聞く。波照間路線と船の欠航率を比較した上で、離島路線としてどれぐらい飛行機が必要とされるのか。そこらのデータは新聞などでは報道されていない
  • 就航するときの経済性、赤字を負担するJALの体力、補助する国や沖縄県竹富町の財政力、機体のサイズと輸送力、観光客数の将来的な伸び……う〜ん、いろいろ考えても、路線を存続させるためのアイデアが浮かばない。自分は飛行機マニアじゃないんで思索してみるのもここらが限界かな。

2007-11-09定期便廃止間近の波照間空港へ行ってみた。
2007-11-09波照間空港の備忘録
2007-11-08今でも文字通り”陸の孤島”となっている船浮集落へ行く。
2007-10-24日本最南端を飛ぶ琉球エアの波照間線が11月で廃止される

*1:ただ、これも法律的にはややこしい状態になっているらしい。「法改正で転換迫られる 黒島、波照間の有償運送」八重山毎日新聞、2007-03-14