あちこちでLRVの開発が始まっているけど……

katamachi2007-11-13

 以前、ある自治体が主催で行ったLRTに関する講演会へ行くと、偶然、知人に出会いました。彼は鉄道関係の仕事をしているのですが、仕事のネタになるかな......と上司の特命で見学に来ていたようです。
 それから数年、いつしかあらゆるグループが、LRT&LRVの開発に飛びつき始めましたね。

鉄道総合技術研究所「Hi−tram(ハイ!トラム)」
ハイ!トラム 省エネ路面電車を公開 鉄道総研
低床式電車「ハイ!トラム」―札幌
※11月より札幌市電で試験運転
川崎重工「SWIMO(スイモ)」
超低床電池駆動路面 電車(LRV)「SWIMO」の開発について搭載用電池の実用化に目処、走行試験へ
低床電池駆動路面電車(LRV)「SWIMO」の開発に向けた電池駆動路面電車走行試験に成功
 ※筑豊電気鉄道の中古車を使って神戸市の兵庫工場で実験済み。その後は2007年冬に札幌市電で試験運転を行うらしい
東京大生産技術研究所千葉実験所
次世代路面電車の試験線開設=道路交通との連携実験も−国内の大学で初・東大
上の式典の写真
次世代路面電車、試験軌道設置…東大生産技研、国内大初
 ※走行試験って台車だけか……
三井物産トロンスロール
フランス/Lohr Industrie社製ゴムタイヤ式最新型LRT“トランスロール”を日本に初導入
トランスロール堺浜試験線プロジェクト
※2005年夏から3ヶ年の予定で堺市埋立地で実験しています。あまり続報を聞かないけどどうしたんだろう。海外で導入したところでは脱線も相次いでいるらしいし。

 他にも三菱重工業和田岬LRTの実験線を造るという記事もあったと思う。近畿車輛新潟トランシスなんかは従前より開発に熱心でした。鉄道総研と川重はLRV、東大はLRT、その違いは分かったような分からないけど、一般サイズの鉄道車両の需要が将来的に伸びるかどうか不透明なところで、新しい交通システムに狙いを定めるというのは方向性としては間違っていないと思う。
 ただ、メカの開発が進む一方で、日本国内でそれを導入する素地が現段階でできているのか……と言うとやや疑問です。

 と、ここ1年ほどのめぼしい動きを拾い上げてみました。静岡市なんかも市長がLRT導入のアドバルーンを上げたりもしていますし、他にもいろいろ動きがあるのかもしれない。
 でも、「LRTいいな、できたらいいな、あんな夢、こんな夢、いっぱいあるけど」と「ドラえもん」の旧OP程度のことしかできていないのが現状。この中で一番進んでいるのは堺市西鉄軌道なのかしれないけど、ホントに市民から望まれている鉄道なのかどうか、市税を投入して建設することへのコンセンサスを得たのかどうか、かなり疑わしいと思う。本日記では「2007-02-22堺市東西鉄軌道事業ってホントに推進するの」と「2007-01-24京都市今出川通でLRTの社会実験が行われました。」を参照。
 知人の政治学者から聞いた話。彼はフランスへ行って、LRT大本山とも言えるストラスブール市でヒアリングしたらしいのだけど、この街やフランスの他の街でLRTの導入が進んでいる背景には、多かれ少なかれ「政治的要素」が含まれているという。日本で語られているほど高邁な理念で成り立っているわけではないらしい。
 導入の過程でそうした政治的駆け引きがあるのは当然のことだと思うし、地域再開発や都市交通網整備の切り札としてLRTを導入すること、それに市税を突っこむことなども、ある程度は仕方ないと個人的には思う。ただ、武蔵野市の「ムーバス」の成功を受けて全国に導入された「コミュニティバス」の「我田引バス」的な無軌道ぶり、そして「福祉」を前面に押し出しての採算軽視ぶりを見ていると、はたしてLRTを日本の都市に入れてイイものなのかどうか心配してしまう。導入の妥当性について、楽観的な数字をただ並べるだけでなく、サイアクの時もイメージもして検証して欲しい。その点では、一歩先へ進みつつある堺市の計画って問題がありすぎとは思う。
 とはいえ、一鉄道マニアとしては、ブツブツぼやきながらもLRTの登場を待ち望んでいる気持ちはどこにあるわけで、そこらは宮脇俊三の「時刻表2万キロ (角川文庫 (5904))」や「全線開通版・線路のない時刻表 (講談社文庫)」と同じなんですが、それはまた別の話。

路面電車新時代―LRTへの軌跡

路面電車新時代―LRTへの軌跡