おおさか東線開業初日一番電車の報告(ただし2日遅れ)。

katamachi2008-03-17

 3月15日は、おおさか東線に行ってきました。片町線沿線に住んでいた鉄道マニアの一人として、その関係路線である同線はきちんと行っておきたい。僕の未成線趣味、鉄道史趣味の原点とも言える路線ですから。
 ただ、前回、すなわち1997年3月8日のJR東西線開業の時は、四条畷始発の東西線直通電車に乗車できたのですが、今回、一番電車は久宝寺駅始発となっています。うちの実家からは直接行くこともできない。クルマを路駐して……というのも気が引ける。
 てなわけで、その前日、「あいりん地区や山谷の簡易宿泊所で滞在する外国人バックパッカー - とれいん工房の汽車旅12ヵ月」を書いたときから気になっていたあいりん地区のホテル東洋に宿泊。一泊2600円と高めの宿だったけど、同値段帯のカプセルホテルやユースホステルよりは居心地が良かった。
 さて、当日、阿倍野駅近くに住んでいる高校鉄研の友人と新今宮駅で合流し、関西本線の普通電車に乗り込む。
 始発駅の久宝寺駅には5:13着。さて、ホームや改札口には鉄道マニアや地元客がいっぱい……と思ったら、意外に少なかった。ざっと見ても100人もいない。5:30発売となる記念入場券を待つ列もかなり短い。あれ、11年前のJR東西線開業日の一番電車にはあんなにマニアで溢れていたのに……
 5:29、八尾方面より緑の電車が現れた。201系6両編成。これが、おおさか東線の一番電車となる。JR東日本中央本線では全面廃車間際ということでマニアがフィーバーしている201系。それが、大阪では新線に投入されるとは……なんだかいろいろ考えさせられる。

地味に終わった開業初日一番電車の走り初め

 1両目には30人ほどマニアが集まっている。運転台裏から先頭の風景を見たいのだろうが、こんな真っ暗では外の景色はほとんど期待できない。僕らは6両目最後部に陣取る。ここも10人ほどパラパラと集まっている。でも、人が集まっているのはこの2両のみ。他はう〜ん、なんてガラガラなんだろう。みんな「銀河」や「あかつき」の方に行って、おおさか東線のことを忘れているんだろうか。
 5:35、定刻に出発。しばらく関西本線の線路と並行した後、間に挟まれた高架線へと移り、やがて大きく右へカーブする。まずは新加美駅。ここでもほとんど乗り降りはなく、扉は閉まる。
 次はJR長瀬。むかしの蛇草信号場があった場所の真上にできた所だ。他駅と違い、近隣地に既存鉄道の駅はなく、地元の期待も大きいからなにか……と期待したが、ここでも何事も起こらず、またフツーに扉が閉まる。そして、JR俊徳道近鉄大阪線との接続駅。赤と白の近鉄電車が遠く高架線を走るのが見える。JR河内永和駅、ここは奈良線との連絡駅。高井田中央、ここは地下鉄中央線と接続している。
 やがて旧淀川電車区の電留線の脇を通ると、終着の放出駅。5:48着。

 これで一番電車はおしまい。車内放送では一番だともなんだとも放送がなかった(と思う)。あまりにもあっけなく初乗りが終わった。う〜ん、なにか物足りない。
 電車は鴫野側の引込線に回送され、次の上り電車まで待機する。で、横を見ると、おお、321系。ついに片町線にも入線するようになったんだ。ああ、207系量産先行車が淀川電車区に投入されて17年。ようやく新タイプが投入されるんだ。
 この間、まず改札口に移動。こちらでは改札口で記念入場券を求める人たちがそれなりにいた。僕も列に続くが、2、3分待ちで簡単に二組を購入できた。カバーを開けて確認してみるが、日付は印刷済み。印字器「天虎」で日付を入れてくれるタイプではない。分かってはいたが、これは僕らの愛した「入場券」ではないんだよね。まあ、いいんだけど。
 ホームに降りると、電光表示板に「6:06 通過」と表示が出ていた。おっ、このタイミングで百済行きの貨物列車が来るのか。おおさか東線と今日から名前が付いても、"城東貨物線"開業から76年間も頑張ってきた貨物列車はまだまだ健在です。こちらも定刻に通過。今日からは2番線でなく、1番線を通るんだ。

 上り一番電車となる放出6:12発も定刻に発車。次の高井田中央駅で降りる。興味深いのは、駅名表記。下の写真みたいに行書体になっている。高架下にある駅舎のサインも同様だ。なんでだろう。ちょっと気になる。

 ホームの側では9時頃に始まる開業セレモニーの準備をしていた。それを見物していると、いきなり係員がくす玉を割ってしまった……

 改札にいるのは委託駅員のみ。切符の販売はしていないとか。"みどりの券売機"が一つあったので、隣駅までの乗車券を一枚購入。
 6:39発の上りでJR河内永和駅へ。ひらがなにしてみるとなんだかやたらと長い駅名だ。ホームで写真を撮っていると、真後ろに大学鉄研の後輩が。世間は狭いなあ。俊徳道駅の近くに住んでいる彼は、来週からから久宝寺までこの線を使って通勤するという。新線の恩恵を受ける希有な大阪府民の一人となる。

貨物列車はすでに高架に切り替わっていました

 次の電車は6:59発でJR俊徳道駅へ。対向する下り列車(放出行き)を撮っていると、上り方向から地響きが……おっ、ここで百済行き貨物列車がまた来るのね。牽引機はDE10のコンテナ列車だった。

 さて、そのまま地平線へ行くところを見ておこうとホーム南側へ行くと……あれあれ? 列車は高架線をそのまま行ってしまうのか。平野への貨物用の単線高架線は、おおさか東線開業に間に合ったのね。あとで関係者から聞いたところによると、開業前日の3月14日に地平の仮線から高架線に切り替わったとのこと(検索してみると、3月9日から変わっていたようですね)。

 俊徳道から線路沿いに歩いていき、蛇草第一踏切のあったところへ行くと、踏切の線路側に紐が張られ、警報機は黒いカバーで覆われていた(下の写真は同じ場所の仮線時代の風景)。でも、警察との話が付いていないのか、「●月●日で踏切は廃止されました」という看板はどこにもない。そのためか、通過するクルマは一時停止していた。いや、従来通り、無停車のクルマも多かったけど。


 踏切の南側に昔、蛇草信号場があったけど、その痕跡はもうどこにもない。駅の北側の空き地では、JR西日本大阪府東大阪市のバッチを付けた人たちが多数うろついていた。セレモニーの準備をしている模様。その数と規模を見ると、おおさか東線絡みのイベントとしては最大のものになるのだろう。橋下徹大阪府知事とかもやってくるのだろうか(実際、来たのだそうだ)。
 7:39発で新加美駅へ行く。もともと、1981年時点の計画では関西本線加美駅のホームと十字に立体交差することになっていたけど、阪和貨物線の旅客化が事実上中止されたので、旧正覚寺信号場〜旧竜華操車場を結ぶ路線の上に新加美駅が設置されたのだ。 ビックリしたのが、ホームに到着する電車の傾き。カーブにやたらとカントが付けられていて、下の写真のように平面であるホームと比べればかなり斜めになっている。車内に入るとその傾斜具合は実感できるが、立っているとバランスを取りにくい。車いすだと動き出すような気もする。ここまで傾けさせてもいいんだろうか。

 ここで加美駅から自宅へ帰る知人を見送り。改札から関西本線まで歩いて1分ほどだが、新加美駅と加美駅とは連絡されていない。なんとかならなかったのかな。なんともならないからこうなったのだろうけど。
 次の電車で始発の久宝寺駅に8:00ジャスト着。
 ぶらぶらしていると、ちょうど関西本線にオレンジ色の103系が現れた。ああ、ここで、おおさか東線に緑の103系が入っていればいい写真になったのに。ちなみに、緑色の103系。この日、おおさか東線では見かけませんでしたが、翌16日には堂々と走っていたそうです(知人談)。試運転に入っていたから分かってはいましたが、21世紀に開業した新線に103系とは……

 久宝寺8:19発の電車は放出8:34着。ホームは人山でごった返している。どうも向かいの2番線で出発セレモニーがあるらしく、赤カーペットが敷かれ、イスが並べられ、マスコミのカメラもたくさん集まっている。僕は3番線の方で待機する。呼ばれた名前を聞くと、来賓には平松邦夫大阪市長のほか、JR西日本副社長、大阪府議会議長、大阪市議会議長、大阪外環状鉄道会社社長なども参加しているようだ。
 8:44から挨拶が始まった。大阪市長は、おおさか東線の重要性について力説した上で、新大阪までの全線開業を求めたところで話を締め括った。そりゃあ、そうだろう。今回の開業区間大阪市内にあるのはここ放出駅だけだから。でも、本当に必要なんだろうか。重要なんだろうか。僕にはいまだにその意味がよく分からない。
 8:52、引込線から久宝寺駅行き下り電車が到着。


 テープカット、そしてくす玉割りが行われる。二つのホームには野次馬も含めると200人ぐらいはいたのだろう。こういうとき、トラブルの原因となるハシゴや三脚を持ち込んできたマニアも何人かいたが、あまり殺伐とした雰囲気にはならない。う〜ん、関西本線と同じウグイス色201系だと盛り上がりようもない。やっぱり地味すぎる。華がないなあ。これを報じる朝日新聞は以下の通り。

 大阪府東部を南北に走るJRおおさか東線は、放出(はなてん)―久宝寺間約9.2キロで部分開業した。大阪市鶴見区の放出駅では午前8時40分ごろから出発式があり、平松邦夫大阪市長が「ものづくりの街として栄えた大阪東部地域の動脈として、今日からドクドクと脈打ち始めた。(新大阪―放出の)全線開業目指してバックアップしたい」とあいさつ。丸尾和明・JR西日本副社長らと並んでテープカットし、くす玉を割って記念のヘッドマークをつけた電車を送り出した。
JRおおさか東線、開業朝日新聞、2008年03月15日

 この昼の夜の集まりで、おおさか東線に乗ったマニアに何人も会ってきたが、「直通快速も8両編成に人がいたのは先頭の運転台だけやで」、「記念入場券って、久宝寺駅では夕方でも売れ残っていたよ」、「『銀河』に行っていたから朝起きれなかった」とかなんとか。嬉しがっているのは僕一人だけ。
 前日の夕刊では、

 だが、奈良での関心はいま一つ。「朝夕4本では大きなメリットとまで言えるかどうか」(奈良市都市計画課)。 (中略)斎藤峻彦近畿大教授(交通経済学)は「鉄道は都心と郊外を放射状に結んでこそ最大限に効果を発揮するが、関西は地域振興などから、郊外を結ぶ環状路線の要望が強い。まさに、おおさか東線は郊外と郊外を結ぶ“環状”路線。ダイヤの面などで大阪中心部に向かう需要をうまく取り込めるかがかぎになる」と話す。
悲願60年、15日に部分開業 JRおおさか東線朝日新聞、2008年03月14日

とあった。齋藤教授は「地域振興などから、郊外を結ぶ環状路線の要望が強い」とコメントしている。遠回しながらも、この路線の目指すものが「地域振興」であって、鉄道としての効果があるのかどうかは微妙だ……ということだよね。で、肝心の「ダイヤの面」なんだけど、関西本線、そして片町線JR東西線とはホームで隣接しているから電車間の移動はしやすいものの、久宝寺・放出駅での発着の間隔がバラバラだから乗換のタイミングをあわせにくい。そもそも、奈良・柏原方面から梅田に向かう人のうち、いったい誰がおおさか東線に乗るんだろう。
 初めての平日となる今朝、放出駅にやってきた電車を見たけど……と祭りの後の話もしたかったのですが、それはまた別の話。