北海道ちほく高原鉄道株式会社の清算と陸別町の「ふるさと銀河線りくべつ鉄道」

katamachi2008-03-19

06年4月まで「ふるさと銀河線」(北見市十勝管内池田町)を運行していた「ちほく高原鉄道」(伊藤昌博代表清算人)の最後の株主総会が15日、北見市内のホテルで開かれ、清算手続きの終了を確認した。会社は消滅し、89年の同社設立からの19年の歴史を閉じた。ちほく高原鉄道:清算手続き終了−−最後の株主総会 /北海道毎日新聞2008年3月16日

北海道ちほく高原鉄道(北見)の社屋から十八日、会社名の看板と会社のマーク、「ふるさと銀河線」のロゴが撤去された
「ふるさと銀河線」のロゴ撤去 ちほく高原鉄道の社屋北海道新聞03/19 13:57)

 こうやって、一つ、また鉄道会社が消えた。路線が廃止されてから2年。土地とか資材とかの処分が終わるのにそれだけ時間がかかったと言うことか。一つの企業が書類上でも消えさり、建物から看板が外されていくという姿を見聞きしていると、なんだか胸の詰まる思いがする。それは鉄道会社に限らない。
 「ふるさと銀河線 きょう最後の株主総会 地元に5億円の「遺産」 レール、枕木高値売却」(03/14 北海道新聞)の記事を読むと、

  • 2007年10月、清算会社が各自治体に線路などを譲渡、3月までにレールや枕木を撤去
  • 2006年6月時点で、撤去費はレールなどの売却収入を1億円上回ると試算
  • 実際は売却額が上回り、6市町で5.58億円のプラス
  • 鉄スクラップ相場が当初の二倍以上に高騰した上、枕木もガーデニングの流行で高値で落札
  • 陸別町の全28kmと置戸町の1kmでは保存事業を進めるため撤去はせず
  • 1989年の設立時に道や沿線自治体が積み立てた基金から、鉄道事業の損失補てん額や清算経費を差し引いた残高(約14億円)が確定。これらの配分額と、レールなどの売却で得た利益を合わせた7市町の収入総額は41億円

 記事では「収入」とか「利益」と表記されているが、これは旧国鉄からの有形無形の補償や各自治体が供出した基金を食いつぶした結果に過ぎない。それを考えると、なんだかやけに違和感を覚える表現に思える。
 でも、7市町の収入総額は41億円……とあるよな。いったいどういう細目で、どんなカラクリでこうした額がはじき出されたんだろう。公会計ならではの理屈があるのだろうが、一度、帳簿を見てみたい気がする。

 もう一つ、陸別町が企画していた動態保存計画はどうなったんだろう。

 日本航空パイロットらでつくるグループが、廃線後のふるさと銀河線陸別−網走管内置戸間で定期的なSL列車運行を計画していることが28日までに分かった。既に一部会員が陸別町を訪れ構想を提示しており、町も協力を惜しまない方針。観光客らが参加できる運転会や撮影会も想定され、実現すれば鉄路を活用した有力な地域活性化策となりそうだ。
 同グループは「大畑線キハ85動態保存会」(会員20人)の名称で(中略)町によると、同会が希望する区間は踏切が少ない陸別−置戸間で、観光シーズンを中心とした定期運行を想定。一般客も低速の運転を体験できるようにする。周辺には菜の花を植え、燃料用の油を採取する考えも。同会はSL車両の確保にも動いている。民間グループ計画、町協力へ十勝毎日新聞2005年4月29日

という報道がなされ、

 十勝・陸別町は、廃線後も陸別―川上駅間(9・8キロ)の線路を残し、車両をいつでも走らせることのできる動態保存の構想を進めている。青森県で活動する鉄道愛好グループから昨年春、廃線後の活用を持ちかけられ、「観光の目玉、雇用の創出に」と町も本腰を入れた。
 町の構想は、4〜10月の土日、休日に気動車トロッコ列車を走らせ、川上駅は記念館に改装して銀河線や旧池北線時代の切符、駅名板などを展示するというもの。車両や鉄道用地は、運営会社「北海道ちほく高原鉄道」から取得する予定で、陸別町商工会の会員らがすでに有限会社「銀河の森」を設立した。
 町が北海道運輸局に相談したところ、時速15キロ以下の低速運転や線路両側に進入防止柵を設置するなどの条件を満たせば、公園事業として運営できるとのお墨付きを得た。
 だが、肝心の維持費や長期的な収支見通しの精査はこれから。町民負担の中身は示されず、金沢紘一町長は「費用対効果が期待できなければ理解は得られない」と慎重だ。「銀河の森」の山本周二社長も「まだ構想段階」と口は重い。
 「(車庫建設など)初期投資だけで財政破たんするのでは。素人目にも無理のある計画に映る」と沿線自治体のある幹部は冷ややかに受け止める。
消える銀河線<下>陸別の活用構想読売新聞2006年4月20日

と廃止直前には伝えられている。陸別町の広報誌2006年2月号には以下のような記事がある。

  • 事業名 陸別川上鉄道・動態保存(仮)
  • 陸別駅〜川上駅間9.8kmでSLを含む旧国鉄・ちほく線の車両とトロッコを走らせる
  • 陸別駅〜川上駅間は陸別町の公園事業として整備する

  ※鉄道事業法による「鉄道」、あるいは改正鉄道事業法で新設された「特定目的鉄道」ではなく、公園内や遊園地にある"遊具"と同種の施設と見なすつもりだったのだろう。鉄道事業法の制約を受けるホンモノの鉄道より簡易に事業を推進できるメリットがある。明治村や片上鉄道、大畑駅などでの動態保存と同じ扱い

  • 有限会社「銀河の森」運営
  • CR70-1・7、CR75-1・101、除雪モーターカー(陸別町所有)
  • 国鉄車両の買い受け・借用、民鉄交通から車両の買い受け(陸別町所有)
  • トロッコ車両の新規作成(陸別町所有)
  • NPO法人大畑キハ85保存会の所有車
  • 陸別駅に、車両庫設置、新設、転車台の復活
  • 分線駅・川上駅の整備・修復
  • 2006年7月に事業開始。2006年度内に整備完了


http://www.town.rikubetsu.hokkaido.jp/koho/koho2006/2006.03/riku540p03.pdf
http://www.town.rikubetsu.hokkaido.jp/koho/koho2006/2006.03/riku540p04.pdf
 ただ、ちほく高原鉄道の動態保存運転区間は500mに短縮 - とれいん工房の汽車旅12ヵ月で書いたように、赤字を避けるため計画は縮小され、保存線路を陸別駅付近の約500メートルに限定することになったらしい。陸別町商工会hpによると、「ふるさと銀河線りくべつ鉄道 平成20年4月26日オープン!」とある。

 旧ふるさと銀河線の車両を使って運転体験などができる展示施設「ふるさと銀河線りくべつ鉄道」が4月26日から、旧陸別駅構内(十勝支庁陸別町)で開業する。銀河線廃止から2年を経て、観光拠点として新たなスタートを切ることになった。
 町と陸別町商工会(石橋強会長)が鉄道広場(公園)構想を練ってきた。「りくべつ鉄道」は、町商工会が車両などを町から無償貸与を受けて運営する。旧駅を中心に約500メートルの区間で、漫画家松本零士さんの「銀河鉄道999」の絵を描いたラッピング列車などの運転や乗車の体験ができるほか、トロッコにも乗ることができる。
 町商工会によると運転体験は、平日は運転講習を受けて車両を2〜3時間運転できる。土日、祝日は運転補助員がついて15〜20分程度の運転(2千円程度)を計画。いずれも時速は15キロ程度。乗車体験は大人300円、子ども200円の予定。
ふるさと銀河線 ミニ鉄道来月開業 陸別朝日新聞、2008年03月16日


 北九州市門司港での門司港レトロ観光列車が特定目的鉄道として全国初の申請となるという記事(門司港地区に観光列車、平成筑豊鉄道と北九州市が共同申請)を読み、そして神岡鉄道や横川軽井沢での事例をもう一度確認しながら、「やっぱ鉄道によるまちおこしってなかなか難しいよな……」と考えていたのですが、それはまた別の話。