全国幹線旅客純流動調査で西日本各府県と東京都との旅客流動を調べてみた。
前回、日記に書いたように花粉症が鬱陶しくて外に出る気は全くせず、29日はなにもせず一日ゴロゴロしていました。そういう日もたまにはいいものです。
で、飛散が収まった夜は、我が家の掃除をしつつ、国土交通省のホームページを見ていました。第四回全国幹線旅客純流動調査。
全国幹線旅客純流動調査は、全国の幹線交通を利用した旅客流動を把握するための調査です。この調査は、従来の交通機関ごとに別々に行われる流動調査ではなく、それらを統合し、旅行する個人に着目し、旅行の実際の出発地と目的地や、旅行目的とともに、交通機関の乗り継ぎ状況を含めた旅行行動の全体像を捉えたものです。
という目的で作成された統計資料で、これを見ると、各地域間の鉄道・航空・バス・自動車などの輸送シェアや輸送量が一目瞭然になっています。
面白いのは、全国幹線旅客純流動調査 第4回(2005年)調査の概要というページですね。
ここを見ると、
- p.26 長野県内の各市町村から東京への旅客流動をみると、下図のとおり長野新幹線や中央本線沿線の地域は鉄道利用が多く、首都圏へ直通している優等列車のない県南部地域の高速道路沿線地域においては、幹線バス(高速バス)が多いことがわかります。
- p.27 首都圏(1都3県)から東海道・山陽新幹線沿線、東北新幹線沿線及び北海道との流動における交通機関分担率をみると一般的な傾向として近距離帯では乗用車等、中距離帯では鉄道、長距離帯では航空が主に利用されている状況がわかります。さらに、山陽地域(岡山、広島)と北東北地域(青森)、南北海道地域(函館)など、距離帯が同程度の地域間で比較すると、新幹線が整備されている山陽地域の方が鉄道の分担率が高い等、インフラ整備の違いによる交通機関分担の違いがわかります*1。
- p.29 近畿地方の新幹線駅の利用圏域をみると、新大阪駅は大阪府、和歌山県、兵庫県東部、新神戸駅は神戸駅周辺、京都駅は京都府、滋賀県西部、奈良県を主な利用圏域としており、地域分担がなされている状況がわかります。
- p.32 2002年2月の東北新幹線[盛岡〜八戸間]開業により、首都圏から青森県まで新幹線による移動が可能になりました。2005年度の首都圏から青森県の鉄道流動量は、2000年度と比べると約1.29倍になっています。また、交通機関分担率の推移をみると、2000年度から2005年度にかけて鉄道の分担率は、39%から61%へと増加しています
- p.33 2004年3月の九州新幹線[新八代〜鹿児島中央間]開業により、福岡−鹿児島間の移動にかかる時間が大幅に短縮されました。福岡−鹿児島の鉄道流動量をみると、2000年度から2005年度にかけて約2.4倍となっています。また、交通機関分担率の推移をみると、2000年度から2005年度にかけて鉄道の分担率は、19%から49%へと増加しています。
(ページ数はpdf記載のノンブルと違います)
とか鉄道マニア、いや交通好きにも興味深い報告がなされている。
以前、これを見て以来、ヒマなときに自分で資料を作ってみようと思ったのです。
西日本各府県と東京都との間の流動数を調べてみた
で、調べてみたのが、「出発地−目的地純流動表」のエクセルデータ。2005年現在の各都道府県(北海道は4地域)間の流動における代表交通機関別の分担率(年間_平日)を調べたものです。
データのダウンロードページは、こちら。いろいろ資料はありますが、「(1)都道府県間流動表」→「出発地から目的地」→「代表交通機関別流動表」→「年間**(平日データ利用)」をベースに表を作成しました。
そのうち東京都を目的地とするデータを抜き取ってみました。各府県から東京都内への流動を調べたものです(単位は千人/年)。一番最後は鉄道輸送の分担率です。
西日本各府県と東京都との間の代表交通機関別流動における航空と鉄道の流動数と鉄道シェア
全体 | 航空 | 鉄道 | 鉄道シェア% | ||
---|---|---|---|---|---|
愛知 | 5465 | 5 | 5198 | 95 | |
三重 | 773 | 1 | 734 | 95 | |
滋賀 | 618 | 10 | 584 | 94 | |
京都 | 2221 | 96 | 2068 | 93 | |
大阪 | 6284 | 1776 | 4279 | 68 | |
兵庫 | 2960 | 756 | 2037 | 69 | |
奈良 | 717 | 98 | 606 | 85 | |
和歌山 | 296 | 149 | 130 | 44 | |
鳥取 | 193 | 152 | 33 | 17 | |
島根 | 204 | 176 | 22 | 11 | |
岡山 | 785 | 249 | 506 | 64 | |
広島 | 1405 | 581 | 801 | 57 | |
山口 | 475 | 292 | 176 | 37 | |
徳島 | 239 | 198 | 11 | 5 | |
香川 | 465 | 361 | 89 | 19 | |
愛媛 | 449 | 371 | 48 | 11 | |
高知 | 209 | 195 | 7 | 3 | |
福岡 | 2264 | 2096 | 160 | 7 | |
佐賀 | 188 | 176 | 10 | 5 | |
長崎 | 406 | 389 | 17 | 4 | |
熊本 | 512 | 501 | 9 | 2 | |
大分 | 343 | 320 | 17 | 5 | |
宮崎 | 363 | 361 | 2 | 1 | |
鹿児島 | 567 | 559 | 8 | 1 | |
沖縄 | 1182 | 1182 | 0 | 0 |
(単位:千人/年)
当然のことながら東京と比較的近いところ、空港がないところは鉄道のシェアが高い。遠距離になると航空のシェアが高くなる。そこらは如実に出ていますね。そして64%の岡山、57%の広島あたりが鉄道(=新幹線)ががんばっている西の境であり、山口県ともなると形勢は逆転する。東京-福岡間の鉄道の分担率は7%。沖縄は当然0%。
この手のデータは従前から見たことはあるのですが、自分で表にして改めて気付いたこと。
- 九州と東京の移動に鉄道を利用している人は全体の1〜7%程度。もう鉄道の使命は終わったと思っていたけど、年間の輸送量で言うと22万人、1日あたりにすると600人と意外に多い。16両「のぞみ」の定員の半分ぐらい、飛行機だと中型機2機分か。鹿児島まで行く人も毎日20人ぐらいは鉄道を利用しているんだ。
- 関西と東京の移動に閉める鉄道の比率が落ちている。大阪・兵庫が7割弱とは聞いていたけど、和歌山が44%か……。あと、岡山・広島・山口県という競合エリアの推移はどうなっているんだろう。
後者について、1990年と2005年とを比べてみました。
西日本各府県と東京都との間の代表交通機関別流動における鉄道シェアの推移
1990年 | 2005年 | ||
---|---|---|---|
京都 | 97 | 93 | |
大阪 | 83 | 68 | |
兵庫 | 80 | 69 | |
奈良 | 86 | 85 | |
和歌山 | 42 | 44 | |
鳥取 | 11 | 17 | |
島根 | 19 | 11 | |
岡山 | 82 | 64 | |
広島 | 55 | 57 | |
山口 | 21 | 37 | |
徳島 | 6 | 5 | |
香川 | 42 | 19 |
(単位:%)
なるほど、京都・奈良対東京の鉄道シェアは微減である一方、大阪と兵庫は大幅に減らしています。鉄道による大阪→東京の流動人数は、1990年が455.7万人/年→2005年427.9万人/年と微減。他の関西の府県は横ばいと言うところ。関西空港の拡張による羽田〜伊丹・関空間の就航本数増の影響なんでしょう。
一方、岡山・香川→東京は鉄道のシェアが落ち込んでいる一方、広島からは横ばい、山口からは大幅増。この間、阪神大震災(1995年)で鉄道シェアが急激に落ち込んだこと、広島空港が都心から離れたところに移転したこと、「のぞみ」のスピードアップ……などが複雑に絡み合っているのでしょう。
うん?全国幹線旅客純流動調査の数字って正しいのか?
となると、不思議なのは和歌山→東京の流動。2005年の鉄道シェア44%と他の関西の府県と比べて低いのは、関西空港から飛行機を使って東京と往き来する人が増えたからでしょう。たぶん。……と想像していたのですが、関空開港前の1990年でも鉄道のシェアは42%ともっと低い。なぜなんだろう。当時は和歌山県内から東京へ行くのは伊丹空港経由が主流だったのか。そんなバカな。
- 1990年 航空17.2万人、鉄道13.9万人、全体32.9万人
- 2005年 航空14.9万人、鉄道13.0万人、全体29.6万人
と和歌山県(出発地)→東京都(目的地)の流動を1990年と2005年で比較すると、航空・鉄道での流動は共に減少し、全体でも1割ほど減っている。これは和歌山経済衰退を示しているのか。
これではよく分からない。そこで、もう少し細かいデーターを見ることにした。「(2)207生活圏間流動表」→「出発地から目的地 代表交通機関別流動表」→「年間**(平日データ利用)」 だ。生活圏間流動表には、和歌山県を3地域に分類した数字が載っており、1990年と2005年とで、和歌山県田辺(出発地)→東京23区(目的地)の流動を比べてみることにした。すると、
- 1990年 航空15.1万人、鉄道0.6万人、全体16.6万人
- 2005年 航空1.6万人、鉄道0.9万人、全体3.3万人
となっている。えっ? 航空による流動数がわずか15年間で9割も減っている? この間、羽田・南紀白浜空港便がYS-11からジェットに変更された影響で運転本数減→旅客は伸び悩みとは聞いていたが、これはなんかおかしい。
たぶん、1990年の航空による流動数がヒト桁、間違っているのでしょう。おそらく「15.1万人」じゃなくて、「1.5万人」。ちなみに、逆方向、すなわち1990年における東京23区(出発地)→和歌山県田辺(目的地)間の航空による流動は0.8万人。2005年だと3.0万人。こちらは4倍近く増えている(それも変)。
となると、ここで報告されている数字ってどこまで信頼できるのだろうか。他の府県のデータを確認しても、流動数に違和感がある箇所がちらほら。データを疑い出すと、何も語れなくなる。
だんだんアホらしくなってきたので、僕の調査報告もここで中止。せっかくの休みの日の夜に僕が三時間かけて調べていたことはムダになるんだろうか……とちょっとわびしくもなったのですが、それはまた別の話。
これを反省材料として、今日(30日)はどこかに出かけようと思います。