売り切れた指定券と当日ガラガラの臨時列車

katamachi2008-10-10

 仙台・宮城デスティネーションキャンペーン(DC)に合わせ、1日にJR陸羽東線を走った観光列車「リゾートみのり」と東北線を走った蒸気機関車(SL)に空席が目立ったことから、沿線の自治体や観光関係者ががっかりしている。指定席券は事前に売り切れたものの、ファンが収集目的で購入、実際は乗車しないケースが出たことなどが影響したとみられる。
完売なのに空席多数 初日運行の「SL」「みのり」河北新報2008年10月10日

 イベント列車を走らせたら、予約段階では満席になっていたのに、当日、座席は半分程度しか埋まっていなかった……という話。
 事実関係は、

  • 「みのり」は小牛田―新庄間を、「SL」は仙台―小牛田間を1往復
  • 古川駅から乗った関係者。「実際に乗っている人は半分に満たなかった」
  • JR東日本仙台支社は「一番列車の切符を記念に保管する目的で購入したファンや途中下車した人がいたのではないか」

 ここ数年のイベント列車ではよく聞くような話です。特に、目立つのが行楽シーズンに日にち限定で走らせるような臨時列車。発売当日に売り切れても、当日はガラガラという状況は頻発している。
 原因は、切符のコレクターが指定券を買い集めているから。別に、業者がヤフオクで高値で売り抜けようとかそういうんじゃないんですよね。1ヶ月前の10時に全国同時発売するんで、とにかく一番モノの、限定モノの指定券を押さえておこうか……と狙っている人たちがいらっしゃる。普通や快速扱いの指定券だと、一枚あたり300〜510円。特急券や寝台券だとなかなか手を出せなくても、この額なら欲しい人にとってはたいした値段じゃない。
 以前からこういう話はちらほらあったんですね。
 僕が記憶しているのは1982年の「きたぐに」の指定券を巡る話。最終日の夜行列車に乗ったら、予約時点では満席になっているのに実際にはガラガラだった。これはケシカラン……と「種村直樹の汽車旅相談室」か「ジャーナル」の投稿欄か何かに意見が寄せられていたのを覚えています。
 ただ、最近、乗る気もないのに指定券を買い占めてという行為が頻発しているやに見受けられます。この秋だと、今月、四国で運転される国鉄型車両を使った急行なんかでも同じような現象が起きるんだろうな。
 知人なんかは、これを逆手にとって、限定モノの臨時列車を乗り回っている。指定券なしで現地の始発駅へ行っても、まずは空席がある。そこらは車掌も割り切っているんで、問題なく座っていけるということらしい。
 さて、河北新報の記事は、

 伊藤康志大崎市長は「初日の特殊事情だとは思うが、DCの特別列車の趣旨は観光客に実際に利用してもらい、地元を訪ねてもらうこと。当日乗らない人には記念切符だけを販売するような形を取れないだろうか」と話し、JRに対策を求めている。
 同支社は「切符を売るたびに実際に乗車するかどうかを聞くわけにもいかない」と頭を悩ませている。

と最後に結んでいる。切符コレクターを制限する方法か。なかなか難しい。マルスで販売する限り、国鉄→JRが今までやってきたルールがあるわけで、それを無視するわけもいけない。

  • 「快速」の指定券じゃなくて、「急行」の指定券とする(一枚あたりの単価が高くなる)
  • 今後、指定券購入の際には乗車券の同時購入も義務づける(乗車券も買うとなるとこれまた単価が高くなる)

とか以前考えてみたのだけど、結局、小手先のアイデアでをいくら繰り出しても、通常のお客さんの迷惑になるだけなんだよねえ。なかなか難しい。

 そもそも僕なんかからすると、マルスで発券した指定券をコレクションして何が楽しいんだろう……とは思います。
 僕も硬券の入場券や乗車券を集めていた人ですし(今でもやっています)、その心情は分からないわけでもない。昔みたいに硬券や補充券で指定してくれるのならねえ。でも、マルス券......欲しいか?
 まあ、欲しい人は欲しいんでしょう。集めるべき切符がなくなって、ベテランだけでなく、若い人たちも、初日とか最終日とかの切符の収集に精を出すようになったんだろうな。新駅開業日に行くと、自動券売機なんかでもキリ番狙って並んでいる人もいる。僕はそういうのには全く興味を持てない。
 でも、コレクターが指定券を集めることはルール上なんら問題はないし、かく言う私もそこらの是非について語る立場にはない。他人の趣味に口出すのもヤボである。
 とりあえず、他人様に迷惑をかけるということは想像できるのだし、使わない切符を買うのはダメでしょう。本当に乗りたい人に席を譲ってあげなきゃ。あと、この日記で何度も繰り返して語っているのだけど、限定モノに群がるというのもどうなんだろう。非日常的な風景ばかり追っかけてても、あまり実りはないんじゃないのかな。
 でも、道義的に是か非か、という側面でしか語れないのが辛いところ。そこから話は膨らまない。なので、この話はここでオシマイ。


 さて、疑問が一つ。
 実は、このニュース。10月2日の朝日新聞も報じているんですね。

 午後0時28分、新庄駅に滑り込んだ3両編成104人乗りの列車はガラガラ。弁慶や義経松尾芭蕉らに扮して、最上駅から乗り込んだ地元関係者を含めても20人足らず。一番列車を盛大に出迎えようとホームに並んだ最上地域の観光関係者らや地元の民舞グループも肩すかしを食った。
 JRによると、鉄道愛好者らで前売り券はほぼ完売、小牛田駅ではほぼ満席だったが、途中の鳴子温泉駅宮城県大崎市)で80人ほどが下車したという。この日午後、小牛田―仙台間で運行される蒸気機関車を一目見ようと、鉄道愛好家らは小牛田に引き返したらしい。
イベント列車歓迎、肩透かし 鉄道マニア、大挙途中下車2008年10月2日

 うん?? 河北新報と、報道内容が違うぞ。

  • 朝日 小牛田で満席→鳴子で80人下車「小牛田―仙台間で運行される蒸気機関車を一目見ようと、鉄道愛好家らは小牛田に引き返した」
  • 河北 古川から乗った関係者は「実際に乗っている人は半分に満たなかった」。JR東日本「一番列車の切符を記念に保管する目的で購入したファンや途中下車した人がいたのではないか」

 おそらく当日、新庄駅にいたと思われる朝日の記者の方が真実に近いことを言っていると思うのだけど、どうなんだろう。まあ、正直、イベントが空振りしたからって、JRや鉄道マニアに文句を言う筋合いじゃないと思うのだけど、それはまた別の話。