紅葉の時期に石北本線でDD51牽引の貨物列車を追っかけてみる(前編)

katamachi2009-10-15

 「夜行列車がなくなった北海道へ2年ぶりに行くゾ。 - とれいん工房の汽車旅12ヵ月」での予告通り、3泊4日の北海道旅行から帰ってきました。
 結局、乗った列車は、ちほく高原鉄道の陸別駅跡でやっている体験乗車10分間のみ。JRに乗るタイミングが一度もなかったのが残念です。代わりに、道内滞在72時間で1000kmぐらい運転していたなあ。クルマに興味がない自分としては珍しいことなんですが、さすがに疲れました。
 僕的に珍しいと言えば、2日目の10月12日は、ほぼ一日中、石北本線で撮影をしていました。1日3往復運転されている臨時貨物列車を撮りに行くためです。

  • DD51と言えば、国鉄末期の貨物牽引機の定番。40年前のSL好きマニアたちにとって天敵的存在だった(DD51投入→蒸機廃止に繋がったから)
  • それがJRとなった90年代、長大編成の貨車牽引する姿が写真好きのマニアさんたちから注目される。新型機の導入&貨物合理化が進む中で、2009年現在、本当に貴重な存在となっている
  • 常紋峠など難所がいくつかある石北本線を走る貨物列車には特に人気が集まっている。札幌貨物ターミナル〜北見間には、臨時貨物列車が8月〜4月にのみ1日1〜3往復運転される。北見地方で収穫された農作物の輸送が主な役割
  • 以前はDD51重連で運行されていたが、2004年秋からコンテナ貨車の前後に1台ずつDD51を繋げるプシュプル運転に変更(スイッチバック駅である遠軽駅での折り返しの手間を考えて)

 これまでも何度も遭遇してきたし、駅で見つけたりするとカメラを構えたりもしていたんですが、クルマを使ってまで本格的に撮影しようとはしなかった。基本、僕は非鉄道写真派だったから。
 ただ、この週末、久しぶりに北海道へ行きたい熱が高まったのと、ちょうど北海道が紅葉で色づき出すシーズンだと気付いたのと、諸事情より一眼デジカメを手にすることになって初使用したくなったのと、クルマで回るならいつもとは違うことをやってみたいと思ったのと……まあ、個人的な理由はとにかく、石北本線の界隈を攻めることにしました。

わざわざ石北本線まで遠征するなら下調べをきちんとしておけ。

 基本、これまであまり鉄道撮影地に行ったことがなかったんで、どこが有名どころなのかという知識も皆無。
 きちんと下準備をしてくれば良かったのだけど、ネットでテキトーに検索して地図を印刷して、数年前の石北本線ダイヤグラムをコピーして、それだけで現地へ行きました。
 前夜は10月にもかかわらず気温が2度まで下がっていた遠軽町の奥地にある瀬戸瀬温泉で宿泊。


 翌10月12日は5時に起床し、6時に出発
 のはすが、なかなかフロントで宿代の精算ができず、さらにクルマのガラスが霜でガチガチになっていたので温泉をぶっかけて溶かしたりしていたんで、実際にクルマを動かしたのは6時20分。
 最初の目的は、白滝駅(遠軽町白滝)の西側1kmにある「白滝発祥の地」という撮影名所(というのは今回初めて知った)。そこには6時50分くらいに下り1本目8071レが通過するらしいし、それにはギリギリ間に合うか……と、国道333号を東へ向かっていた。
 すると、もう少しで白滝駅......というところで、朝陽に照らされた貨物列車8071レがすれ違って行くじゃないですか。そのとき6時40分。4年前のダイヤと運転時刻も変わっているよなあ……
 と、諦観していても始まらないんで、Uターンして追っかけ始める。

  • 6:55

 まずは丸瀬布駅付近。今回の旅で初めて使うカメラなんで、レンズの装着に手間取ってしまい。後追い&逆光&日陰で1枚撮っただけです。慌てる何とかは何とかってヤツですね。トホホ。

  • 7:02

 今度は瀬戸瀬駅の東1km地点。道道711号に入って少しの所で湧別川を跨ぐ橋梁を偶然見つけました。順光ですね。いい感じです。

 しばらく後追いするけど、スピードを上げ始めたDD51に追いつけず、断念。
 さて、この後、どうするのか。
 もう、持参した4年前のダイヤが正確じゃないことが分かったんで(ていうか、最新の時刻を鉄道雑誌か何かできちんと調べろよ、自分)、当てずっぽうで行動することにしました。
 旅客用の時刻表から類推するに、DD51遠軽駅に到着し、旅客列車との交換のため何十分か停車する、はず。その間に次のスポットへ移動すればいい。でも、どこにどんな撮影場所があるのか。僕はまったく知識がない。
 ならば、ベタベタな定番撮影地を狙うか。
 と、常紋峠に向かうことにしました。生田原駅(遠軽町生田原)と常紋トンネル - Wikipediaの間にある「146キロポイント」。S字カーブと勾配が続く区間で、何十年も前から鉄道マニアに愛されてきた名所中の名所です(と知ったかぶりをしていますが、旅行の前日までその存在をよく知らなかったんですよ。写真はよく見ていたのですが)。網走の受刑者やタコ部屋の労働者が強制的に労働させられたとか、人柱が埋められたとか、いろいろと曰く因縁がある常紋トンネルについては、以下の本が詳しいです。

常紋トンネル―北辺に斃れたタコ労働者の碑 (1977年)

常紋トンネル―北辺に斃れたタコ労働者の碑 (1977年)

常紋峠146キロポイントで待つ本格派の鉄道マニアたち

 生田原駅の南500m地点から左に別れて、踏切の先、線路沿いの道路(途中からダート道)を10分ほど行くと、また踏切が。

 12月から3月までは通行止めになるんだとか。雪で覆われるけど、除雪はしませんよ、ということなんでしょうね。このあたりはクマやシカはいてもヒトは誰も住んでいないし、当たり前と言えば当たり前。
 で、ここから頃合いに紅葉に囲まれた山あいを1kmほど行くと、クルマが何台か停まっています。無人の山中、いったいどこが噂のポイントなのか、場所が分からなかったらどうしよう......と気にしていたのですが、これほど分かり易い目印はないです。
 到着は7:30くらい。先客7人+僕のあとから2人。計10人ほどが林の中で待ちかまえています。
 みんな凄いなあ。立派な三脚に高そうな一眼デジカメを2台とか乗っけて待機しているんです。
 自分も一応は一眼デジカメを持ってきていますが、1週間前にニコンの入門機を買ったばかり。荷物になる三脚を持ってくれば良かったんだけど面倒なんで置いてきました。どこまで横着なんだよ。自分。
 良さ気なポイントは他の人たちの三脚で埋め尽くされてしまったんで、彼らの後ろの斜面でカメラを構えることにしました。こういうとき、カメラだけで身軽なのは有り難いです。
 と、すると、先輩たちが急に動き出し始めました。なにが起きるのかと身構えると、

  • 7:44

 上りの「オホーツク2号」の通過です。

 とりあえず後追いで撮影。この列車の存在をあまり深く考えていなかったんで、ちょっと驚きました。先頭も最後尾も原型であるキハ183-0。直角型の先頭形状が登場した時にはかなりインパクトがあって、小学生だった僕には魅力的だったんだけど、あれから30年。寄る年波には勝てず、定員の少なさも嫌われて、最近は運用から外れている車両が増えているらしい。特にこの10月1日の改正で、北見側1両はキハ183-500に置き換えられた編成が多いらしく、両方とも0番台というのは貴重な存在になっている(と、帰ってから知った)。
 さて、本命のDD51はいつ来るのか。側にいる人に尋ねてみると、8時30分ころにやってくるんだとか。あと、45分も何もない山中で待たないといけないのか……とちょっと後悔。こういうとき、自分は根性なしのエセ撮り鉄であることを認識してしまう。
 あまりにもヒマなんで、側にいる人たちと雑談しようと話しかけるのだけど、あまり話が弾まない。というか、準備をしてるいるんだし話しかけてくれるなオーラが出ていたような気がする。この中途半端な間を退屈と感じているのは僕だけなのか。
 山あいの中の10人がそれぞれ別な時を刻んだ後、ようやく森の向こうから振動が聞こえてきました。

  • 8:29


 ついに8071レが登場。DD51と1時間半ぶりの再開です。
 姿を見せた後、ゆったりとカーブをくねくね揺らしながら登ってきます。車体の右側にウマイ感じに光が当たっている
 さすがに遅いなあ。この遅さなら、いろんな角度から撮影できる。その点、三脚なしというのはフレキシブルでイイですね。

  • 8:30

 ようやくDD51が目の前を通過していきます。後ろ側は今は懐かしき国鉄色でした。

「白滝発祥の地」という定番撮影地がどこにあるのか分からない

 これで常紋峠での仕事は完了。
 次は、朝イチで間に合わなかった「白滝発祥の地」へ向かいます。
 下り2本目となる8073レが10時前後に白滝へやってくる、はず。ダイヤも分からないのに、もはや計画性もなにもありません。
 再びダート道を戻り、生田原市街から国道242号→333号を西へ向かいます。
 すると、下白滝駅から約500mほど行ったところの左側の駐車場に十数台のクルマが……
 はて、なんでこんなところに? 
 と思うと、ここに「村名 白滝発祥の地」との石碑があるじゃないですか。
 そうなんです。この有名撮影地。白滝駅付近だと思いこんでいたんですが、実はその10km手前の下白滝駅付近にあったんですよね。早朝は、ここのポイントを行きすぎて、さらに先まで行ったからこそ、貨物列車の通過時刻に間に合わなかったんですよ。
 下調べの不十分さ、そして不勉強さを恥じ入るばかり。ていうか、獲物を狙って緻密に調べ尽くす撮影派の鉄道マニアって凄いわなあ、と改めて感心しました。
 駐車場から徒歩2分のお立ち台へ行くと、先客が15人ほど。先ほどより多いのは、国道から近いしアクセスがラクだからですかね。小さなコンパクトデジカメを持っている人もいるし、僕レベルのライト系の人、通りすがりでやってきたただの観光客もいるみたい。
 ただいま9時30分。まだ30分くらいあるのかな。でも、時間はよく分からないし……と、側にいる人に尋ねると、「あと10分もせずに来ますよ」とのこと。大あわてでこちらも準備にとりかかる。というか、通過時刻直前に間に合って良かったと言うべきか。

  • 9:39

 そして8073レが登場。

 川沿いに線路をゆっくりと進んできます。常紋峠とは違い、レール面から距離があるんで音が聞こえないのが残念。

 いやあ、やっぱり紅葉にDD51の色は映えますねえ。
 クルマに戻って列車を追いかけると、旧白滝駅の先で追い抜きました。
 もう少し先に行くと、丸瀬布駅から3kmほど東の地点。国道から民家に通じる小さな踏切があり、そこでさっきの
8073レを待ち受けます。

  • 9:48


 通過。
 ナイスの場所だと思ったんだけど、カーブのところに電柱があるし、光の加減も微妙。



 さて、この列車も、また遠軽で小休止をして、向きを変えて生田原方面へ向かいます。追いかければ生野駅あたりでまた撮影できるか。
 でも、朝イチから3時間半動いていたんで疲れました。というか、なんとなく飽きてきた気もする。やっぱり、じーっと待っていたり、同じことをしているのって、自分の性分には合わないんだよなあ。
 てなわけで、撮影ツアーをここで中断して、丸瀬布いこいの森へ向かいます。次の目的は、丸瀬布森林鉄道の生き残りである蒸気機関車「雨宮21号」。ここの公園内で動態保存されているんですね。これで3度目ですけど、モノホンの森林鉄道用蒸気機関車が現役で動いているのって魅力的なんですよね。
 と、ここまで書いて、疲れたんで、続きは次回「紅葉の時期に石北本線でDD51牽引の貨物列車を追っかけてみる(後編) - とれいん工房の汽車旅12ヵ月」に。
 この日は、いろんな偶然が重なって、想定以上の効率で動けたのは助かったのだけど、きちんと準備をしていかないとマズいとは身に沁みて感じました。行き当たりばったりで動いても実りのある撮影行にはならないのは確か。でも、あまり効率ばかり重視してしまうと意外性もへったくれもないし、そういう旅って好きじゃないんだよなあ……と鉄道マニアらしくないことを考えてはいたのだけど、それはまた別の話。