近所のスーパーで500系と蒸気機関車を撮る。

katamachi2010-02-14

 珍しく早起きした日曜の朝。
 9時過ぎに身支度をしていると同居人に驚かれた。「昼飯の準備にクルマでスーパーへ行く」と告げると、さらに驚かれた。何の用事もないのに布団の外に出ることがぶっちゃけあり得ない、というのだ。
 で、様々な会話が交わされた後、それなら......と、彼女も同行することになった。正直、来て欲しくはないんだけど、なかなか断りにくい。9時半までに身支度できるならという条件を付けたが、きちんと守ってくれた。仕方ない。
 僕の運転で数キロ先のスーパーへ行く。フォレオ大津一里山というショッピングモールで、瀬田駅から1.5kmほど南の京滋パイパス沿いにある。
 9時50分に到着。駐車場にクルマを置いた後、「ちょっと15分ほど行くところがあるから」と、そそくさと施設の外に出た。
 僕は何をしに来たのか。タイトル通り、500系新幹線を撮りに来たのだ。
 ご存知のように、500系東海道新幹線乗り入れは2月いっぱいで終了する。出張で米原駅から「ひかり」に乗ろうとすると、昨秋ぐらいから駅撮り狙いの連中を見かけるようになった。
 ここしばらく私事でドタバタしていてあまり余裕はなかったのだけど、ご近所を走る500系が気にならないはずがない。ここ数ヶ月、趣味活動を抑制してきたし、遠出はできないにしてもどこかへ行きたくなったのだ。
 このフォリオ里山東海道新幹線を観察するには抜群の立地条件にある。

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 京滋パイパス(国道1号パイパス)とこの施設の間を結ぶ道路が東海道新幹線の真上を通過しているのだ。新幹線を上の角度から見下ろせる場所って意外に少ないし、貴重なところだ。そして、この施設の2階のベランダ部分には、新幹線展望テラスという休憩施設がある。鉄道模型ジオラマがあるセルフサービスカフェ「銀座パノラマ 大津店」もこのフロアーにある。
 京都駅からここまで6〜7分というところ。唯一の東京直通500系「のぞみ6号」は京都駅9:57発。10時前後に通過することになる。
 施設の外側に出ると、道路脇に立つ同業者が7人ほどいた。路駐しているのも数台。買い物客のクルマの邪魔になっているんだけど、みんな我関せずみたい。
 彼らと離れたところでカメラの準備をしていると、後ろから声をかけられた。同居人だ。スーパーに行くと言っていたはずだが、カメラバッグを持ち出した僕の行動を不審に思って付いてきたらしい。
 そして、程なくして、10時ちょうど。500系上り「のぞみ」が通過。



「これが前に言っていた500系?」とは聞くけど、それ以上は興味はないらしい。
 先月、スリランカのリゾートホテルで、ボロ客車を牽く機関車を追っかけてビーチサイドを行ったり来たりしている姿を見られて以来、なにか視線が冷たくなったような気がするのだが、まあそれはそれ。
 目的は達したので後は素直に買い物に付き合うことにした。

500系を求めて再びフォリオ里山に向かうと

 自宅に帰った後、同居人から買い物を頼まれた。電器屋で印刷用紙を買ってきて欲しい、と。
 これはチャンス、と、そそくさと出かける仕度を始める。
「あれ、また準備が早いね。また新幹線?」との言葉。
 そうです。否定はしません。素直に告げたのだが、今度はついてこないらしい。
 午前中と同じ道路をクルマで十数分。またフォリオ里山にやってきました。
 朝の「のぞみ6号」は東京駅に12:13に到着し、折り返し東京駅12:30の「のぞみ29号」として博多駅へ向かう。京都駅到着は14:50。逆算すると、14:44頃に一里山を通過することになる。
 駐車場にクルマを停めてまた施設外の道路に出ると、同業者が十人ほど。朝より増えています。それを見た近所の人っぽい人たちも携帯電話の写メで撮ろうと待ち受けている。
 300系「ひかり」が通過してしばらく。遠くから前照灯が見えてきました。
 14:45、「のぞみ29号」通過。



 これで本日の作業は終了。
 後はミドリ電化に行き、本屋で捜し物を買い求め、家に帰ろうとした。
 その時だ。
 「ぽっぽー」という電子音と、タンバリンの音、「みなさん、こんにちは」というおねえさんの声が聞こえてきた。

 なに、SL? 
 そうだ、昔、東海道本線も走っていた蒸気機関車だ。ただし、遊戯用の。
 ショッピングセンターの通路のど真ん中を遊戯用機関車が走る。その異様な光景に頭がくらくらしてきた。
 そして我に返ると、この列車を追いかけ始めた。

 おねえさんの「すみません、列車が来ます」の声と共にお客さんはみんな進路から避けていく。

 基本、優先順位は列車にあるらしい。
 そして、朝に行ったスーパーマーケットの前に来ると、めちゃくちゃ急なカーブで転回する。年配のお年寄りたちも足をもたつかせながら列車の行く手から逃げようとする。

 今度は来た道を再び戻っていく。
 今日はバレンタインデー。ナウなヤングたちがソファーで愛を語り合っている。その後ろをSLは走り抜けていく。

 そして、15:38。駅に到着。5人の子供たちが嬉しそうに降りていく。

 列車は機関車(操作役が乗車)と客車が4両(うち1両は炭水車風の車両)。車両の銘板を見ると、カナダのメーカーのものらしい。


 名前は「フォレオトレイン」というらしい。このスーパーに何度か来ていながら今まで存在すら知らなかったのだけど、運行しているのは土日の12〜18時だけ。なるほど、そういうことか。運賃は300円とお手軽な値段である。

 運営会社は東京の会社のらしい。今、検索エンジンで調べると、株式会社ワック。http://www.wacwac.jp/index.htmlフォレオ里山には2009年10月に投入された、とある。
 同種の施設は、ららぽーと船橋、三井アウトレットの多摩・神戸・横浜などにあるようだ。
 正直、ショッピングセンターの中を走り回る遊戯施設というのは、買い物客としては、はた迷惑な施設だ。
 でも、おチビさんたちにとっては魅力的な乗り物だと思う。もちろん、おおきなおともだちにとっても。


 また、動かないかなあと思っていると、お客さんが4人ほど乗車。また発車らしい。
「さあ、おともだちのみんな。じゅんびはいいかな。せいのお、しゅっぱつしんこう!」
というおねえさんの掛け声と共に、出発する。
 タンバリンを持ったおねえさんが先導役(兼買い物客を追い払う役)となり、再び店内を進んでいく。
 その後を追いかけていく僕。
 一周8分。乗りごたえがあるじゃないですか。凄いですよ。これは。


 再び駅に戻ると、ちいさなおともだちが3組7人。客車に乗り込んだ。空車なのが、あと1両、残っている。
「すみません、おとなも乗れるのですか?」
と聞いてみると、おねえさんは快諾してくれた。
 300円を払うと、
「でんしゃが好きなんですか?」と聞かれた。頼むから皆まで聞かないでくれ。

  • 窓から顔や手を出さないでね
  • 出発の時は、「しゅっぱつしんこう」と元気な声で言おう

と、お客さんに告げた後、出発の時間が来た。
「さあ、みんな、おおきな声でいおうね。しゅっぱつしんこう!」

 ごめんなさい。僕には言えませんでした。
 とりあえず、おねえさんに続くようにして列車は出発。エスカレーターを迂回しながらフロアーをカーブしていく。

 改めて乗車してみると、なかなか優れものです。たくさんの買い物客たちがみんな注目してくれる。興奮してピースサインを出している男の子もいる。
 でも、僕の車両には三十路の鉄道マニアが一人だけ。
 こどもがいれば別ですよ。微笑ましい親子と見てくれるのだろう。
 でも、自分で言うのもなんだけど、雰囲気が違うんだよね。「なんで、この人、一人で乗っているの?」という顔をみんなしている。自意識過剰なのかもしれないけど、視線があうと、ついつい下を向いてしまう。
 さて、左にカーブをして、ぐるっと迂回しながらフロアーを進んでいく。ちょっとは度胸がついたのか、パシャパシャとカメラで撮り始める。いや、居直ったのかもしれない。
 で、さっきと同じスーパーの前へ差し掛かったときのことです。
 ベンチに座っている男性と、ふと目があってしまった。
 あれ、どこかで。
 嗚呼嗚呼阿阿阿……
「もり●ちくん、なにをしているの?」
金曜日の会議で一緒だった同業他社の人です。迂闊だった。
 もう赤面するしかありません。
 グルッと一周した後、
「なかなかおにあいだよ」とかニヤニヤしていました。もうどうすればいいんだろう。
 その後はあまり覚えていません。先ほどの知人に言い訳も兼ねて挨拶した後、そそくさとクルマで帰りました。家に戻ると、真冬なのにシャツがびっしょり。なんか、もう人間としてダメだ……と反省しながらもさっそく日記のネタにしているのですが、それはまた別の話。