2月14日の「あすか」を巡るトラブルのまとめと個人的な所感
20日午後5時頃、滋賀県草津市のJR東海道線草津―南草津駅間で、フェンス(高さ1・8メートル)内の線路脇に三脚を立てた不審な男がいるのを、通りかかった網干発米原行き快速電車に乗っていたJR西日本の社員が気づき、運転士に知らせたお座敷列車目当て?「撮り鉄」また快速止める2010年2月20日読売新聞
やはりやってしまったか。
草津線の複線化を求める滋賀県庁の団体がしきっていたやつですね。
- 滋賀県庁HP 滋賀県草津線複線化促進期成同盟会「ジョイフルトレインあすかで楽しむ草津線めぐり」 http://www.pref.shiga.jp/kakuka/h/kotsu-s/kusatsusen/20100220anvtrain.html
- 「2月20日(土)の1日限りの運行ですのでお見逃しなく!」
- 「全線開通120周年記念のヘッドマークを装着した昔懐かしいDD51ディーゼル機関車が、レトロな雰囲気を持つジョイフルトレイン「あすか」を牽引します。」
間が悪いことに、「あすか」+DD51+限定ヘッドマーク付きの団臨と、1週間前に関西本線で走った「あすか」と似たような条件なんですよね。
で、みんなぴりぴりしている中で、また事件が起きた。う〜ん、これは困った。
ちょっと、この一週間、どんなことが起きたのか。まとめてみましょう。
「あすか」の現状
- 2月14日「あすか」が関西本線などで団臨として運転
- 「あすか」新大阪1022→西九条1031→天王寺1042-47→平野1054-1111→王寺1132-1200→奈良1218→……と、鉄道趣味誌「鉄道ダイヤ情報」誌で事前にダイヤが公表されていた。「DD51牽引 HM取付」とも。
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- 2002年の救急隊員死亡事故、2005年の尼崎での衝突事故以来、各方面から非難を受けたJR西日本。安全確保のため、大山崎のカーブなどの撮影地を含めた線路際で柵の設置を進めた。
- と共に、京阪神で鉄道イベントを自粛していた。-経営合理化のため客車特急の整理・廃止を進め、現在の所有車両は「トワイライト」のみ。
- 団臨用客車の「サロンカーなにわ」「あすか」の行く末も風前の灯火。事実、宮原区で眠っている時間の方が多くなっている。次の全検を乗り越えられるかも微妙。ましてやヘッドマーク付きなんて。id:Thscさんは「http://d.hatena.ne.jp/Thsc/20100215/p1」で「『あすか』が機関車に純正HMを掲出して走るのが著しく珍しいのである」とする。で、これはヤバいと思った人たちが現場に大集合
14日に河内堅上駅付近で「あすか」に関して起きたこと
先日の「あすか」。報道によって話が錯綜しているのです。新聞記者さんたち現地に行かずJR西日本の広報(?)からの聞き書きで書いているんで、報道内容がバラバラなんです。ネットでの報告も意外に少ないですね。
- 産経 鉄道ファンが列車止める JR関西本線
- 10:25〜10:35 「河内堅上駅の近くなどで、電車の乗務員が上下線の線路の間にカメラの三脚を立てている人やカメラを持った人を相次いで発見」
- 「係員から退出を促されても応じなかった人もいて、JR西から通報を受けた柏原署員が現場に駆け付けて注意」
※"など"とあるけど、時系列と場所が不明。日刊も同趣旨の記事なんで、共同か時事の配信記事か。
※時系列で書いてあるので読みやすい。続きは会員登録か.......
- 毎日 鉄道トラブル:線路入り撮影、列車ストップ 大阪のJR線「あすか」
- 朝日 「撮り鉄」線路に侵入 快速電車、30分間立ち往生
- 日経 鉄道ファン「脱線」、JR関西線止める──線路内に立ち入り
- 10:40「現場付近を走行中の回送電車の乗務員が同社に「線路に人が集まっている」と報告。駆け付けた駅係員らが離れるよう呼び掛けたが、一部が従わなかった」
- 10:55「110番通報し、パトカーで柏原署員が駆け付けると騒ぎ」「パトカーで柏原署員が駆け付けると騒ぎは収まった」
- スポニチ “撮り鉄”線路内に立ち入り列車止める
- 読売 「撮り鉄」お座敷列車撮影で、快速止める
内容の整理
時系列的に並べるとこんな感じか
- 10:25 三郷〜河内堅上駅間で、線路内に立ち入っている人を発見
- 10:35 上り回送電車の運転士?がJR西の運行指令に通報
- 同時刻? 下り快速の運転士?が現場で停止。続いて河内堅上駅の駅員も到着
- 50人が線路脇に、3人が線路内に侵入。退去を要請したが数人が応ぜず
- 10:55 110番通報で警察に連絡
- 11:00頃 運転再開。
- 11:25 河内堅上―高井田間で、上り電車がカメラを持った人を見つけて現場で停車
- 11:35 運転再開
場所についてはよく分かりません。
列車が停止した場所について、2ヶ所目は河内堅上〜高井田間の
でしょうか。いくつか画像もアップされているようです。
状況は、http://metalmoon.s317.xrea.com/cgi-bin/board3/rmbbs.cgiの掲示板の[2279]で、管理人さん自らが報告されていますが。「列車通過時刻の30分前くらいにその持ち主(列車を止めた本人)が現れました」「『あなたのことが列車無線で報告されていて、電車が止まるかもしれない』と忠告したそうですが、『後から来たくせにやかましい!』などと全く聞く耳を持たずとか。ここで"先着権"を主張しているというのは、状況が全く理解できていなかったということか。
先で紹介したThscさんは興味深い指摘をされています。
上越線などでは上下線の間での撮影が事実上黙認されている。でも、なぜ「あすか」は問題となったのかという立論をした上で、
とする。論点の組み立て方と語り口にやや取っつきにくい点はありますが、それでも興味深い論点はいくつかあって参考になりました。
で、もう一つの現場。どこですかね。
産経は、「河内堅上駅の近くなどで、電車の乗務員が上下線の線路の間にカメラの三脚を立てている人」としますが、河内堅上以東で上下線が分かれていて50人も入れるようなポイントってあるのかなあ。
むしろ、朝日の「(1ヶ所目の現場から)約2キロ西に離れた柏原市の河内堅上―高井田」という記述から逆算すると、
ですかね。
あるいは「河内堅上駅の近く」というと、
の可能性もある。
人数からすると、前者のような気もするけど、どうなんだろう。
その後
「JR西日本は15日、一両日中にも柏原署に被害届を提出する方針を固めた(中略)JR西によると、被害届は現場の安全担当者が柏原署に提出するが、妨害行為を行った鉄道ファンを個別に特定することはしない見通しという」
「JR西日本は16日、大阪府警に被害届を提出する手続きに入った」
- 朝日 [:title=]
「JR西日本が大阪府警に被害届を出すことを検討している(中略)ただ府警柏原署によると、署員が現場に駆けつけた時には線路内に鉄道ファンはおらず、侵入者の特定が困難な状況だったという。このため同署は、JR西の運転士や保線担当者ら関係者と実況見分した上で、被害届を受理するかどうか検討する」
「JR西日本の佐々木隆之社長は17日の記者会見で、警察への被害届提出を見送ることを明らかにした。佐々木社長は「禁止的、抑圧的な対応は正しくない」と説明。「楽しんで写真を撮ってもらい、安全というのが一番。安全について十分理解してほしい」と鉄道ファンに呼び掛けた」
「府警柏原署が鉄道営業法違反(鉄道地内立ち入り)容疑での立件を視野に、本格捜査に乗り出す方針を固めたことが20日、捜査関係者への取材で分かった」
産経の記事だと、一罰百戒で捜査することになるようなニュアンスなんだけど、JR西日本の社長は「警察への被害届提出を見送ることを明らかにした」ともされる。どうなるのか分からない。
そして、
- 2月20日草津線にて「草津線全線開通120周年記念列車」運転。17時ごろ草津駅の近くで線路内に立入した三脚を持つ人が発見。現場で快速電車が緊急停止。
なんで、架線柱や天井川トンネルが錯綜していて撮影には不向きなところで撮影しようとしたのか。う〜ん、こうなるともはやお手上げだ。
さて、こうやって状況をいろいろと並べてみた。
並べてみても、どうすればいいのか。何も答えが出ないというのが正直なところだ。
以下は個人的な所感。
今回の報道を見て、古くからのマニアさんとかは徒労感ってのがあると思うんですよ。「一部のマニアの暴走」というのは、それこそSLブームが世間を席巻した1970年以前から課題となってきたテーマである。様々な主張をいろいろ拝見してきたけど、基本は、
- 「とりあえずマナーを守ろうよ」
との一言に尽きると思う。
「鉄道ファン」が「『鉄道ファン』編集部から読者のみなさまへお願いとお知らせ」でコメントしたように、愚直に「啓蒙」することは大切だと思う。警察が捜査して「事件」と化するのも一つの手だと思う。けど、啓蒙すれば、厳罰化すれば済む、という問題でもない。良識のあるファンでも、手狭なホームに100人集まれば取扱不可能な群衆になってしまう。
あと、誰かにレッテルを貼って、「あれは一部の人間のマナーが悪い」「困った人たちは自分とは別物」「困った人がいるから良識的な自分は迷惑する」と我と彼とを切断しても問題は解決しない。
これから1ヶ月、
など、「祭りの現場」となりかねない事象が目白押しである。
そうしたものが趣味人の注目を浴び、趣味誌がフレームアップしていくのは以前もそうだった。「レイルマガジン」は相も変わらず今月号で「北陸」を全面に押し出した記事を組んでいるし、「ダイヤ情報」はかねてから批判の多い「ジョイフルトレイン運転予定表」「団体臨時列車運転予定表」の連載を止めることはない。
けど、近年、大手マスコミまでもが追随し始めた。「消えゆくモノへの惜別の思い」というベタな語り口は取り上げやすいのだろう。でも、廃止目前! 見送る人が殺到!という新聞記事やニュースがさらなる見物客を招いてしまう等のもまた事実。彼らの「報道」もまた騒動の一因となっていることには気がついていないようだ。
惜別の念というのは否定しないし、大切にして欲しいと思うが、別に廃止前日のお祭りに騒ぎに参加しないと体験できないと言うわけでもない。イベント的な空間で現場と一体化して盛り上がらなくても、鉄道趣味を昇華させる方法はいくつもある。それを学習して趣味を深化させるやり方を模索して欲しいと心から願う。1日限定のヘッドマークを付ける「あすか」以外にもっと目を広げて欲しい。と、前々回の内容に話を繋げることで今日の更新はオシマイにする。また何かを書くかもしれないけど、それはまた別の話。