さよなら田口五朗さん。
なんか先週から公私いろいろ重なって、最近へぱっています。
「東京で夜行列車がなんとかあったみたいだけど、いったんですか?」とよく職場なんかでも聞かれるんですが、その前日に徹夜仕事をしていたんでそんな精神的な余裕がなかったです。鉄道趣味誌以上に大手紙やテレビが「廃止」や「撮り鉄騒動」を煽り続けているのを見ていると、妙に醒めてしまいました。
「廃止物」と言えば、今、我が家で一番惜しまれているのは彼です。
http://www.nhk.or.jp/nw9/
http://www.nhk.or.jp/nw9-blog/100/
そう。田口五朗さん。「NHKニュースウォッチ9」のメインキャスター。
NHKの総合テレビで平日午後9時から放送されているニュース番組「ニュースウオッチ9」のキャスターに、元ワシントン支局長の大越健介さん(48)が就任することが1日わかった。現キャスターの田口五朗さんと3月29日から交代する。
http://www.asahi.com/culture/update/0202/TKY201002010483.html
ということになっているんだそうです。
「NHKニュースウォッチ9」でなんだか偉そうに喋っているメインキャスター
仕事から帰って一服しながらテレビを付けると、だいたい夜9時過ぎ。民放は見たいと思う番組もないし、無難なNHKを付けます。
彼の存在に初めて気付いたのは2008年の秋くらいだったでしょうか。
テレビなんてマジメに見ないんで、いつも画面は見ずに、音声だけ聞いてパソコンに向かうのが日常でした。完全な、ながら視聴です。
でも、いつしかメインキャスターを務めるようになった男性アナ。なんだかんだとニュース原稿を読んでいるんだけど、何を言っているのか、さっぱり耳に入ってこないんです。
- 話し方の抑揚の付け方がわざとらしい
- 言葉がこもった感じになっている
と、いうのがその原因ですかね。おおよそテレビのアナウンサーに相応しいとは思えない。
仕事の合間、移動の途中、NHK第1のニュースをしばしば聞いていて、その内容のコンパクトさ、的確さにいつも感心させられるのですが、それと同じ局の仕事とは思えない杜撰さ。これでニュースと言っていいんかい。
さらに、原稿を一通り読んだ後、なんだかコメントらしいものを付け加えている。
「政府は●●に真剣に取り組んでもらいたいものです」
「●●への早急な対応が求められると思います」
とか、NHKらしからぬ「主張」を展開しているっぽいんだけど、
- 内容がステロタイプ
- 気の利いたコメントが皆無
なんですよね。無難な話&語り口のヘタさが禍してか、
- 言葉に心がこもっていない
ように聞こえる。彼の言葉が耳に残らないんですね。
たとえば昨年夏のサミット。公式ホームページのブログでこうコメントしている。
しかし、地球規模の課題に立ち向かうには世界全体の取り組みが必要なことは自明の理。新興国の存在感が増す中で、サミットの限界を感じる大会だったが地球と人類の平和な生活を守るため世界が協調するための役割を果たすサミットへの変質が求められていると強く感じた。
2009年07月20日 (月) ラクイラサミット
「強く感じた」と言われてもねえ。「世界全体の取り組み」とか「地球と人類の平和な生活を守るため」とか、ありがちな言葉を並べられていると、なんだか聞いていてこそばゆいんですよ。
彼のコメ、番組中でもこんな感じなんです。世界的な話題でも、ヒマネタでも、もったいぶった感じでボソボソと喋る。でも、教科書的かつ無難な発言ばかりだから、印象が薄い上に、記憶に定着しないんですよ。
音声だけでは何を言っているのか分からないんで、次第に画面を注視するようになりました。
正直、男性アナとしては冴えない風貌です。かといって、かつてこの枠でキャスターをやっていた木村太郎のようなインパクトのあるお顔でもない。似顔絵には一番描きづらい特徴のない顔です。ニュースキャスターに顔やキャラクターはあまり求めていませんが、もう少しマシな人選はないのかね。
この人、コメントするとき、
- 正面を向かず、お隣の女性アナを見ながら話す
んですよ。
常に隣の女性アナに顔を向けて話すんで、テレビ目線にならない。もう毎回のように「横向きトーク」ばかり。彼と女性アナとが「会話」をしながら「ニュース解説」をするというテイストを出したいんでしょうが、中年オトコの横顔を見せられても興味の持っていきどころがありません。
そして、ニュース原稿の後の「横向きトーク」の際、この男性アナ、顔が妙な動きをするんです。オレは凄いことを言ったんだぜって感じで誇らしげに女性アナを見つめる。それが文字通りの「上から目線」になっているんです。分かり易い「偉そう」な風貌。斜め45度の構えでテレビカメラを見つめて一世を風靡した滝川クリステル路線を完全否定するような男気。さすがNHK。
毎晩9時台を自分色に染め上げた田口五朗の凄さ
ある日、あまりにもこのオトコが気になって検索エンジンで調べてみました。
- 田口五朗
- 報道局科学文化部所属の記者
アナウンサーじゃなくて記者上がりなのか。話しの間の悪さの原因が分かりました。
驚いたことに、田口さん、2008年春からこの9時の番組の出ているということを知りました。すでに半年ほど視聴していたはずなのに、この人の名前と顔と声をきちんと認識していなかったのですね。
そして検索してみると、あちこちのブログや掲示板で「上から目線」「偉そう」「作り笑いが気持ち悪い」……と悪評だらけ。この人、キツいなあ……と僕も思いましたが、ここまでクソミソに言われていると、別な意味で気になってくる。
それから1年半。
- 抑揚のない原稿読み
- 意味のないコメント
- 妙な偉そうにみえる振る舞い
を毎日見聞きしていたら、すっかり毒されてしまいました。その単調な繰り返しがいつしか快感に変わってきました。
田口さんの何が凄いって、大NHKの看板番組である9時のニュースを完全に自分色に染めてしまったことですよね。
ニュースが朗読され、現場スタッフの撮った映像が流れた後、画面はスタジオへ戻ります。
すでに横向きで対峙する田口さんとサブキャスターの青山祐子さん。2人は互いに見つめ合いながら、ニュースの〆に入ります。
青山さんがコメをすると、やたら相槌を打つ田口さん。青山さんの言葉も視聴者の気持ちも無視するかのようにボソボソと教科書的な発言を繰り返す。事前に暗記した言葉を口にするのにいっぱいいっぱいで、彼女の言葉が聞こえていないんでしょうね。2年近く経っても初々しさが残っている。ぎこちないコメントのやりとりも、危険な雰囲気と微妙な緊張感をもたらしています。
そして、「●●は緊急の課題だと思います」って感じで話をしめくくる。この後、次のニュースの原稿読みまで、妙な間ができるんです。それがまた印象に残るんです。
ごくたまに田口さんが正面を向いたとき、「今日もやったゼ!」と満足げな顔を見せてくれるんです。そのテレビ目線が僕を虜にする。
いつしか、「9時の男。田口」のお顔とお声を聞かないと1日が終わった気分になれないという体になってしまいました。
そんな彼の姿を見られるのも今週と来週のみ。3月26日(金)の放送がラストとなります。この後、彼はどこへ行くんでしょうか。番組名も番組枠も相棒の青山さんもそのままなのに、なぜか田口さんだけが降板になる。昨日の放送を見ていると、いつもの断定的な口調が消え、視線が斜め45度下を向いていたんです。それがやたらと気になってついつい訳のわからないエントリーを書いてしまったのですが、それはまた別の話。