武豊線電化と「最後の国鉄型車両」キハ40系の淘汰の始まり

katamachi2010-03-19

 JR東海は18日、愛知県大府市と同県武豊町を結ぶJR武豊線(19.3キロ)を2015年春に電化すると発表した。
愛知の武豊線、15年春から電化 JR東海の旅客線で初朝日新聞、2010年3月18日

 武豊線がついに電化か。

武豊線キハ75系高山線に転属→キハ40系の廃車?

 武豊線電化構想自体は沿線でコンビナートの進出が進んでいた70年代からあったし、1981年に当時の名古屋鉄道管理局が発表した構想にも盛り込まれている(後にJR東海の初代社長となる須田寛名鉄局のエラいさんだった)。バブルの時にも新聞で見かけたこともある。
 でも、機が熟さず、先送りされてきた。新型気動車が導入されたり、名古屋直通快速が運行されたりもしたが、電化に数十億円単位の新規投資をするだけの需要増が見込めなかったのだろう。
 JR東海は、キハ85系高山本線紀勢東線に投入したり、参宮線で快速「みえ」を運行したり、キハ11キハ75を大量導入したり、と非電化線で積極策を展開した時期もあったけど、ここ10年ほどは投資を抑制気味。
 個人的には、JR東海が電化に踏み切った動機が気になった。
 JR東海ニュースリリースhttp://jr-central.co.jp/news/release/nws000490.htmlには、

車両の共通化を行うことにより、名古屋都市圏において、柔軟なダイヤの設定や弾力的な車両の増結などさらなる輸送サービスの向上や列車遅延時の対応能力の向上を図ることができる体制

とあるように、車両の共通化によるダイヤや運用の効率化という側面が書かれている。新規需要の開拓とか、スピードアップとか景気のいい話は抜きである。ことはそれほど簡単ではないんだろう。
 一方、朝日の記事には、

と書かれていた。
 最初、そのまま読み飛ばした。うん? だけど、あれ武豊線ってキハ75の運用で統一されていなかったっけ。


 リリースを読み直すと、

  • 電車新製:313系 28両
  • 設備投資額 約82億円(地上設備:約32億円、車両:約50億円)
  • ※なお、現在武豊線で使用しているキハ75形気動車は、主に高山線に転用します

とある。
 313系、1両あたり1.8億円か。223系やE231系あたりと比べると意外と高い。JR西のキハ126だと1.2億円、キハ40だと1.3億円……とは、以前「DMVとレールバスが抱える「定員が少ない」という問題 - とれいん工房の汽車旅12ヵ月」で書いたことがある。キハ75だといくらぐらいするんだろう。1.8億円ぐらいはするのだろうか。
 現在、キハ75は40両。武豊線の運用がなくなると30両前後が浮く計算になる。高山線、すなわち美濃太田に転属するとなると、キハ40系の置き換えに充当されるんだろうな。数は少し足りなさそうだけど。

キハ40系の終わりの始まりなのか

 キハ40系、車体の重さとエンジンの非力さに起因するコストパフォーマンスの悪さでいろいろ言われてきたけど、もっとも古いモノで1977年製。製造から30年前後。まだまだ新しい部類に入ると思っていた。
 正直、キハ40系なんてどこでも走っていてあまり有り難みはなかったんだよね。

  • 新型気動車の投入→余ったキハ40系が他所に転属→キハ58系やキハ20系を淘汰

という繰り返しが20年以上続いたんで、どちらかという嫌がられていたような。

 でも、JR東日本では余剰車の廃車が始まっている。キハE120形・キハE130系がさらに増備されたり、ハイブリッド気動車キハE200形とその後継車の生産が本格化したら、どうなっていくのだろうか。JR四国でも同様だ。先に電化工事が始まった札沼線で2012年春から電車が走り始めると、状態の悪い車両の廃車も進むんだろう。
 一世代前のDMH17系機関エンジンを積んでいたキハ20系、キハ58系、キハ35系が今春の改正でほぼ淘汰された。唯一定期運用に入っている高山線富山口のキハ58系4両は2011年3月でさよならと告知済http://www.takayamasen.com/kiha/
 なんで、次はキハ40系の番。
 これから本格的な廃車が進むとなると、ちょっと感慨深いものがある。
 まあ、888両が製造され、まだ9割以上は現役なんだから、これから10年で全て廃車ってことにはならないんだろう。物持ちのイイJR西日本あたりでは2031年くらいまで頑張るんじゃないのかな。



 でも、思いだして欲しい。
 ここ20年ほど鉄道趣味界で「国鉄型車両」というのが大フィーバーになってきたけど、あれだけ両数の多かった103系113系485系も風前の灯火。これから2年の間、東北新幹線九州新幹線が全通し、JR西日本京阪神で大量の新車投入を行い、JR東日本が209系改などを千葉などにばらまくことで、相当数減っていくことが既定の路線となっている。
 117系185系、キハ183あたりもそろそろ廃車が進みそう。でも、これらの車両を引き継いだのって、JR6社のうちの1社か2社。その地域限定の車両に過ぎない。比較的数の多い205系にしても東海地区や3島では馴染みは薄いだろうし。
 そんな現在、キハ40系は、JR北海道、東日本、東海、西日本、四国、九州と、6社いずれもで活躍している唯一の旅客車両となっている*1
 かつて国鉄という大鉄道が全国に広がっていたことを物語る唯一の形式。ある意味、「最後の国鉄型車両」とも言える。あと数年もすれば、キハ40系を追い回すマニアがたくさん現れるんだろうな。


 久しぶりに「鉄道ビクトリアル」のキハ40特集を読み直していろいろ調べてみようかな。

鉄道ピクトリアル 2008年 07月号 [雑誌]

鉄道ピクトリアル 2008年 07月号 [雑誌]

鉄道ピクトリアル 2008年 08月号 [雑誌]

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 そういや高校生だった80年代末、キハ20がもうすぐ無くなるよとみんなが騒いでいる最中、「そのうち0系や103系がなくなるときも大フィーバーになるぜ」と言ったら、「まさか……」と友達に笑われたのを思いだす。蒸気機関車→旧客・旧国→国鉄型車両……と廃車になる車両が続く限り、「鉄道ブーム」は続く。でも、全国のマニアたちが共有する物語を持つ「最後の国鉄型車両」キハ40系が消えたら、その後、この世界はどうなるんだろう。まあ趣向の細分化というのはこういうことなんだろうなと割り切ってはいるのですが、それはまた別の話。

*1:DD51は四国に配置経験はないし、九州での定期運用は終了。DE10はJR東海では淘汰済