ぬれ煎餅騒動から3年半。銚子電気鉄道はどうなったのか?(2)
過去に何度か日記で書きました「銚子電気鉄道&濡れ煎餅」のその後。
前回、「ぬれ煎餅騒動から2年半。銚子電気鉄道はどうなったのか? - とれいん工房の汽車旅12ヵ月」を書いたのは1年前。久しぶりに銚子市議会の議事録にアクセスするなど情報集めをしました。
以下、周辺情報や議会での質問と答弁の抜粋。
銚子電鉄2000型(京王2010系→伊予鉄800)の運用開始
やはり今年度の最大の話題は、京王→伊予鉄からやってきた銚子電鉄2000型ですね。
京王から直接車両をという話も新聞で流れましたけど続報がなく、もうムリだろと思っていたけど、大逆転。
銚子電気鉄道(本社・銚子市、小川文雄社長)が、伊予鉄道(本社・愛媛県松山市)から購入した新型車両4両の入線作業が4日深夜から始まった。
老朽化車両を更新 1962年製4両入線作業 銚子電鉄千葉日報2009年11月06日
- 運搬、定期点検、改造費、線路整備を含めた導入経費は約1億5千万円
とあるから、これだけの費用をよく捻出できたなあ。濡れ煎餅効果があったから銀行も金を貸してくれたのかな。その力業には感服させられました。
この時点の報道からすると、
- 2009年度内に2両の運用を開始
- その後、現在のデハ1000形2両と合わせ、4編成6両で運用
- 代わりにデハ702が来年1月下旬、デハ701とデハ801が3月下旬に廃車の予定
- デハ801は動態保存の予定
新車の運用開始については諸手続の関係から4月以降の運用開始を予定しております。新車運用開始と旧車両のさよなら運転については改めてご案内させていただきます。
とある。デハ702号のさよなら運転は1月23日に実施されたが、年度内に新車の運行はしない模様。国交省の検査とかいろいろあるのかなあ。野上電気鉄道が旧水間車(元南海1201)を譲り受けながら線内で運行できず、そのまま廃止という故事をふと思いだした。まあ塗装替えまでやつていんだから大丈夫なんだろうけど。
趣味的には消えていく車両の方にはあるのですが、まあそれはそれ。元京王2010系も1962年製だから半世紀近い車齢なんだよね。かなりのロートルですし、関東圏の方にはかなりの注目を集めるんじゃないですか。グリーンの色と、ベージュの色。なかなかいい感じですね。
これにあわせてネーミングライツを売却するという話になっていたけど、そっちはどうなつたんだろう。
銚子市議会の議事録をまた見る
個人的には「ローカル線と自治体」というのが関心があるんで、前回までに引き続き、銚子市議会の議事録に再びアクセスしてみた。昨年分は公開されていますね。http://www.kaigiroku.net/kensaku/choshi/choshi.html
興味深いのは以下の2点。
- 平成21年9月定例会 09月10日03号
- 市長(野平匡邦君)の発言
- 国の公的なお金が入るということには全然なっていないと。それにはそれ相応の条件があって、それをクリアできていないから、公金投入できる会社ではないという大変残念な状況
- 目先の障害物をとりあえず市民なり国民のプライベートな援助で何とか除去しながら頑張って進んでいるということで、根本的な部分の危うさというのは多分除去されていない
- こういう電車が走っていること自体が一種の奇跡だと私は思っておるんですよ。思っているんですけれども、その奇跡をそのまま続けるためにはやはり公的な資金が入れられるような条件整備を会社としてもしていただかないと困るわけなんですね
- 国も補助制度はあるわけですから、そこまで来てくれませんので、担当に聞いたところ、ここ数年間銚子電鉄とのつき合いは全然ないそうです
※市民病院の休院問題とかで紛糾しながら市長リコール問題に揺れた銚子市政。昨年の選挙で現職を破って当選したのは、元市長の野平。銚子電鉄の存続に消極的な人物だったんですね。積極的な発言をしていた前職も当選後はダンマリを決め込んでいましたけど。
基本、ベースには銚子電気鉄道の不正経理問題があって、それらのトラブルが解決していない状況下で銚子市も千葉県も国も補助金を出せるような環境にない。別な言い方をすると、三者とも、その不正経理問題を理由に「補助金を出せない」という言い分に使っていたりする。まあ、リスクのある事業に公金を出せないというのは当然のこと。ましてや新規の財政支出に慎重にならざるを得ない経済環境なんですから。それに、銚子市政の対立構造、銚子市立病院の問題があるから、市外の人間には分かりにくい事情がたくさんあるんだろう。たぶん
- 産業建設部長(鈴木芳明君)
- 銚子電鉄の過去5年間の利用者の推移は、平成16年度は65万人、17年度は65万人、18年度は71万人、19年度は83万人、20年度は78万人
- (主に観光客が利用していると思われる)団体券の利用者数につきましては平成16年度が2万7,000人、17年度は3万人、18年度は3万9,000人、19年度は11万5,000人、20年度は8万5,000人
※20年度の利用者は微減。
ただ、これは定期客が相当数を占めているわけで、ツアーバスでやってくる客が利用する団体券は19年度11万5,000人→20年度8万5,000人だから26%減。
ブームは沈静化しているし、まあそれは仕方ない。騒動が起きた18年度(2006年11月)と比べるとそれでも倍以上あるし、それだけでも凄い。実際、十年ほど前から、ツアーバスにローカル線乗車を組み込むというのどこでも定番になっているし、この数字から極端に減るということはないんだろう。
利用者は04年度と08年度を比較すると、プラス10万人。その多くはクルマや鉄道でやってきた個人客が占めているというのは力強い。
でも、今後の動きは、ブームから2年経った21年度(2009年度)の利用者数次第なのかなあ。どこまで目減りをしているのか。あるいは横ばいorプラスになつているのか。気になるところです
- 総務企画部長(明石博君)
- 銚子電鉄は非常に重要な観光資源の一つであるということは私ども初め市民の皆様方、議員の皆様方も既にご認識いただいているところでございます
- 本市にとりましても庁内LANでですね、職員等に周知を図ったり、PRするということで側面からの支援もしております
※記念切符やさよならイベントの情報を銚子市役所の職員に知らしめてもあまり関係ないんじゃないかな。現市長になってから距離を置いて銚子電鉄と接するという感じにしているんだろうな。まあそれは以前も同様だったんだろうけど。
過去のエントリーでも書いたけど、、肝心の銚子市民がどのように考えているのか。どれぐらいの利用があるのか。そっちの方が大切なんだよね。銚子市長が「銚子市の一種の産業文化遺産というふうな感じで受けとめなきゃいけないんだろうなと思います」なんて気楽なことを言っていてはいけない。
銚子市民の足として必要だから存続に力を入れる。あくまでも観光客の利用は余芸でしかない。それは大前提じゃないのかな。
「産業文化遺産」としての価値が強調されるローカル鉄道に億単位の市税を投入することが市民に理解してもらえるはずがない。実際、議会での銚子電鉄に絡む議論はまったく盛り上がっていない。市民と縁の薄い赤字鉄道よりも病院や市立高校を何とかしろという議論が必ず出てくる。そこらのギャップを埋めていくことが存続するために必要なんだろう。ただ、様々なボタンの掛け違いがある中で、なかなか解決策は見いだせない。銚子の市民の人たちはどうするんだろう。
不正経理問題が発覚したのは2004年。それから6年間、銚子市役所と市議会はただ傍観しているだけだ。一方、銚子電気鉄道は、ぬれ煎餅騒動以降、いろんなマスコミで話題を呼んできたけど、そのブームも一段落尽きつつある。
市長は先の議事録でこのように発言している。
やはりこういう電車が走っていること自体が一種の奇跡だと私は思っておるんですよ。思っているんですけれども、その奇跡をそのまま続けるためにはやはり公的な資金が入れられるような条件整備を会社としてもしていただかないと困るわけなんですね。その議論はさんざん18年までにしました。そして、政策投資銀行から来ていただいた専門家にこれこれ条件はこうですというのもいただきましたけれども、その条件は残念ながらクリアされておりません。ここでどういう条件があるかというのは、なかなか言えない問題がたくさん幾つもの項目があるのですけれども、それができるような大胆な決断がですね、会社側も労働組合も市民も含めてできれば、あとは財政的に銚子市がどれだけ協力できるのかという問題でですね
「公的な資金が入れられるような条件整備を会社としてもしていただかないと困るわけなんですね」か。市税を銚子電鉄に投入しない言い訳のようなニュアンスにも感じ取れるんだけど、市長の発言は正論です。地元自治体の協力がなければ国税の投入もない、というのが国交省の今の考え方。
これに銚子電鉄側が反論するのは難しい。銚子市役所との関係修復はまだできていないのはなんでなんだろう。なにが起きているんだろう。なぜ銚子電鉄は市役所を納得できるだけの資料と数字を出せないんだろう。正直、ヨソ者には複雑怪奇だ。まあ、地方政治ってそういうもんなんですよとは割り切ろうとは思うのだけど、それはまた別の話。<参考>