JR西日本の社長が記者会見で赤字ローカル線の廃止を言及

katamachi2010-04-06

 JR西日本佐々木隆之社長は5日の記者会見で、赤字ローカル線の一部を廃止し、バスに転換する方向で検討に入ったことを明らかにした。廃止の検討対象にしている路線名は明らかにしなかった。影響のある地方自治体には、廃線とバス転換を受け入れるかどうか既に打診しているという。
JR西、赤字線をバス転換SankeiBiz(サンケイビズ)2010.4.6 05:00

 今朝の京都新聞を読んでいたら、小さなコラム記事として書かれていた記事。めちゃくちゃビッグニュースなんだけど、大手紙はスルーしていたのか見当たらなかった。これは共同や時事の配信記事かな。
 5日のJR西日本の記者会見ということだから、「はまかぜ」や餘部橋梁の話のついでに出たんだろうけど、高速1000円などの経済環境ではローカル線廃止という方針になるというのも仕方ないところ。
 個人的には、この手の問題に対し、JR西日本はもちろん、地元自治体もあまり真剣に取り組んでこなかったのはなんでだろう......という疑問はある。
 木次線越美北線因美線姫新線......と、実質的にJRが死にたいのまま放置している鉄道はたくさんある。
 「水害で不通になる前から悲惨な状況だった三江線で考えてみる。その1 - とれいん工房の汽車旅12ヵ月と「水害で不通になる前から悲惨な状況だった三江線で考えてみる。その2 - とれいん工房の汽車旅12ヵ月」で書いた三江線では、やたらと線内に徐行箇所がある。ちょっとした緩いカーブ、あるいは崖の側とかを通ると、その手前で時速20kmぐらいに徐行をする。その数80か所。

  • 1.線内には40km/h以下にスピードを落とす徐行箇所が八十数カ所ある。
  • 2.減速を始めたのは04年から。崩落した岩石にぶつかって脱線したこともあり、地元自治体から減速するよう強く要望があった。
  • 3.開業が古かった江津〜浜原間は特に状態がひどい。
  • 4.保線にはなかなかお金がかけられなくなった。根本的な解決は難しい。
  • 5.キハ120のような安物だと落石にぶつかっても対応できない。

というのが僕が聞いた話。落石事故が起きそうな箇所を根本的に改修せず、徐行させるだけというその場限りの処置しか行っていない。もうどうしようもない状態は今でも変わらない。
 JR西日本にいろいろと問題があるのは確か。でも、地元自治体も「水害で不通になる前から悲惨な状況だった三江線で考えてみる。その3 - とれいん工房の汽車旅12ヵ月」で書いたようにどこまで真剣に取り組んでいたのか疑わしい。ローカル線経営で生み出てくる赤字を「誰が負担するのか」。その根本的なところを誰も見ないふりしてきたんですよね。それは名松線の不通で一足早く同じ事態に直面したJR東海+松阪市・津市、そして他のJRも変わらない。
 この後、どうするんだろう。「JRは無責任」と自治体関係者は大声を上げるのだろう。でも、当の住民たちが見捨てているという現状は拭い去れない。がんばって何とかなるほど甘い話ではない。そして、資金負担の話になると、誰もが口をつぐむ。
 国鉄ローカル線を第三セクターにすれば何とかなると思われていた80年代ならともあれ、今はかなり厳しい状態だ。
 幸か不幸か、現在、JRがローカル線を廃止するには絶好のチャンスが到来している。
 自民党民主党国交省三羽烏によって、高速道路1000円化→無料化という道路行政の大政策転換が行われた。「幹線まで食われているし、赤字を減らすめどもないし、もう耐えらんないんだよね」と言い訳し易い環境になっている。そうやって、この一年、必要以上にたくさんの航路が消えていった。国が政策転換すれば、JRに補助をくれれば、超ローカル線の存続も可能。でも、そんな余裕は誰もない。
 さて、どうするのか。妙案は何もない。このまま朽ち果てていくのを遠い目をして見送るしかないのか......という思いをするしかないのだけど、それはまた別の話。