2010年度冬の「青春18きっぷ」は発売されるのか。

katamachi2010-06-07

毎回ご好評いただいている「青春18きっぷ」がこの夏も!
年3回の発売が今年は2回となり、今年度最後の発売です
青春18きっぷ廃止                 か?冬の発売はなしの画像より

 ここに張られている画像は横浜駅に張ってあったというビラだということ。本当かどうかちょっと分からないけど、決してありえない話ではない。
 「青春18きっぷ、ついに廃止される!」という類の噂は十数年前から何度となく噂されていた。「JR●海が嫌がっている」とか「大垣夜行が各社の負担になっている」とか何とか。だいたい"JRの裏事情に詳しい人"がそう言っていたというお墨付きが付いているのだが、その事情通って誰?と聞いても、情報源を突き止めることはできない。
 大垣夜行18きっぷも消えると聞いたのは1995年のことだったか。鉄道趣味の権威と目される人がそんなことを言っていたんで、今度こそはマジか……と思ったりもした。けど、実際には、翌1996年にも18きっぷの発売は継続され、大垣夜行の代わりに「ムーンライトながら」が誕生した。
 まあ、噂というのはそういうものなんだろう。


 ただ、今年度に関しては、冬の18きっぷが発売されないのかな、という噂に全く根拠がなかったわけではない。
 18きっぷの年度販売計画が発表されるのは毎年2月。今年は10日の発表だった。
 JR四国のプレスリリースhttp://www.jr-shikoku.co.jp/03_news/press/10-02-10/01.htmを見ると、

  • 1 きっぷの名称

青春18きっぷ

  • 2 発売期間とご利用期間
    • (春季用)

発売期間 : 平成22年 2月20日〜平成22年 3月31日
利用期間 : 平成22年 3月 1日〜平成22年 4月10日

    • (夏季用)

発売期間 : 平成22年 7月 1日〜平成22年 8月31日
利用期間 : 平成22年 7月20日〜平成22年 9月10日
(中略)

  • 7 その他

冬季用の発売及び利用期間等については、詳細が決定次第、別途お知らせいたします。

となっていた。うん、冬季については微妙な言い回しになっている。
 他社も同様。


 あれ? こんなことって過去にあったっけ?
と、ちょっと気になっていた。
 冬の有効期限は12月10日-1月20日。でも、年末年始っていろいろ忙しい時期である。この世で一番ヒマを持てあましているだろう大学生であっても、実際に使えるのは休み中の2週間程度だろう。
 かくいう僕も、冬シーズンの18きっぷの消費方法にはいろいろと思案していた。社会人になっても毎冬1冊はきちんと買い求めていたのだけど、日数を持てあますときが何度かあった。さっき過去20年の旅行記録を確認してみたのだが、毎年のように1月中旬の土日に日帰りor1泊の旅行をしていたのに気付く。期限切れ間近、最後まで残った1、2日分を消化すべく鉄道趣味旅行を実行していた。
 そうした意味では、毎年、冬シーズンの売れ行きはあまり芳しくなかったのだろうか。春でも、夏でも、冬でも、18きっぷの販売にかかる費用(ポスター、チラシ、切符...etc)は同じだけかかるんだろう。費用対効果のバランスを考えると、冬シーズンの販売継続に疑問符が付いていたのだろうか。
 もう少し深読みすると、

  • 冬季用の発売がまだ検討中ということ?
  • 利用期間が短縮とか大なたが振るわれるということ?
  • それとも発売自体が終了の可能性アリということ?
  • それは冬季だけなのか、あるいは2011年春以降もどうなるんだろう……

 さてはてどうなるのやら。


 気になると言えば、先月の「日本経済新聞」にこんな記事があった。

 高速道路の「休日1000円」が続き鉄道各社に影響が広がるなか、レジャー向けの鉄道割引切符の売れ行きは堅調だ。鉄道ファン層の広がりに加え、割引率を高めた切符が相次ぎ登場していることが大きい。
1000円高速で鉄道苦戦の中、レジャー向け切符快走、割引率高く。(2010/5/26)

 うっかり当該新聞は捨ててしまったんだけど、ここで18きっぷの売れ行きが落ち込んでいるという旨の記事があった。確か前年比1割減とあったと思う。
 検索してみると、「きんの日記」というブログに「18きっぷ売り上げ減少」という記事があった。僕が読んだ日経の記事が紹介されている。

日経新聞を見ていたら、18きっぷの売り上げが09年度は1割減ったとのこと。74万枚とかあったので08年度は82万枚程度売れていたことになる。

 この原因がなんと説明されていたのかは記憶はないんだけど、まあ高速道路1000円化と結びつけられていたのかな。直接は関係ないとは思うんだけど、無関係とも言いにくい。
 ここ数年、「ムーンライトながら」か臨時に格下げされているし、他の区間の臨時夜行快速も運行休止の憂き目にあっている。これらの処置がなされたから18きっぷの利用者が減ったという見方もできる(ただ、冬季に限っては、18きっぷシーズンであっても夜行快速の利用はさほど多くないというのは何度も体験している)。
 個人的には1割減という数字自体は変動の範囲内じゃないかなあとか思っている。「三連休パスは3月で発売を終了した、っぽい。 - とれいん工房の汽車旅12ヵ月」で紹介したJR東日本三連休パス(結局、「スリーデーパス」で代替されるっぽいです)と同様、一連のトクトク切符(懐かしい響き!)見直し路線の一環なんだろうと思う。


 そもそも「18きっぷ」という存在はJRにとってどんな位置づけなんだろう。
 国鉄末期だった1982年に登場してから二十数年。鉄道好きに限らず、帰省や観光の学生、日帰り近郊旅行をする年配層などなど幅広い層に使用されてきた。春夏冬のシーズンになると、長距離移動する利用者たちで東海道山陽本線東北本線などの特定列車はやたらと混み合うようになる。大垣や米原、姫路、黒磯など乗換駅での大移動はいろんな意味で印象深いものとなってきた。
 現在、1冊11500円、1日あたり2300円。とにかく安いよね。
 たとえば僕の旧宅の最寄り駅から大阪駅まで片道1時間30分弱。電車一本で直通できたんだけど、往復しようとすると4000円近い運賃を支払う必要があった。週末、遊びに行くにはいろいろと躊躇する金額だ。
 それが18きっぷ利用だと2300円。たった2300円だ。ちょっとした日常の移動では何十回と利用させてもらった。もちろん2枚、3枚と組み合わせて、長距離移動もやってきた。
 そして、この切符があったからこそ、近畿から北陸へ、四国へ、東海へ、関東へ……と、毎シーズン、活発的な趣味活動を展開できた。この切符の恩恵を受けたマニアはもちろん僕だけじゃない。


 ただ、この切符の存在がJRにとってどれくらい意義深いものなんだろうか……と素朴な疑問も持っていた。
 旧国鉄としては18きっぷに何を期待していたのか。通常の定期・定期外の利用者とは別の、新たな需要が出現することを願っていたのだろう。それは80年代の鉄道ブームとリンクしながら定着していくと共に、さほど鉄道趣味とは縁がないような普通の学生たちにも利用方法は広まっていく。
 一方、金券ショップなどで18きっぷ5日分がバラ売りされたりすることで、ノーマル運賃の切符の代替手段としても着目される。
 散々言われてきたことだが、18きっぷと言っても、18歳の人たち以外が利用しても全く問題ない。第三者によるバラ売りはグレーゾーンになるのだけど、JRがそれを取り締まることは事実上不可能。1996年以降、18きっぷ5回分を1枚の切符にまとめる処置が行われる。利用者としては使いづらくなったのだけど、バラ売り対策ゆえの処置なんだろうなとは誰もが想像できた。
 と、共に、18きっぷ。はたして旧国鉄が期待したような新規需要を喚起しているのか。ちょっと疑問に思うようになった。本来ならノーマル運賃を払っていた乗客が、格安のフリー切符である18きっぷに流れているだけなのでは。たとえこの切符がなくなっても、売上としては多少影響があるのかな。
 18きっぷを買うとき、たまにアンケートが付いていたりする。5日分の行程を報告するとオレンジカードをくれるというので何度か応募したこともある。JR各社はこれを参考に売上の配分などを判断をしていたのだろうか。そういや、18きっぷがなければ旅行はしませんでしたか、という質問項目もあったりしたな。
 僕はJRの人間じゃないし、そこらの損得勘定を論評できる立場にはない。18きっぷにもいろいろと問題があるのも承知はしている。
 でも、18きっぷによって鉄道趣味人としての自分が形成されたのは間違いないわけだし、願わくば切符が存続して欲しいなあと思っている。
 さて、2010年冬はどうなるのかな。と、半年以上先のことを考えても仕方ない。とりあえず夏分は買っておこうか、行き先は成田と山陰と北近畿とあとどこへ行こうか......と久しぶりに旅モードに頭が切り替わったのだけど、それはまた別の話。