近江鉄道の珍電車221と大正製の旧型電機ED31-3が本線を行く
先日、仕事で滋賀県にクルマで出かけると、彦根市内で珍妙な組み合わせに遭遇しました。
まずは、8月20日(金曜)。14時半に彦根駅から吊り掛け音をういいーーんと鳴らしながら爆走する221を見たんです。
221と言っても、JR西日本初期に新快速のエースだった221系じゃありません。近江鉄道の220形221。
でもいつもと音が違う。なんでだろうと先を見ると、なんとお尻にED31-3を繋げているじゃないですか。
おい、ED31-3が行くのか。いったい何が起きるんだろう。
ポカーンと口を開け、あっ、と携帯電話を取り出して撮影しようと思ったら時すでに遅し。目の前を轟音たてながら高宮方面に走り去っていきました。
ああ、惜しいシャッターチャンスを逃したよ。
さて、221とED31-3のおさらい
近江鉄道の裏のエース221
JR西に221系が投入された2年後の1991年に近江鉄道初の冷房電車として誕生。西武鉄道からの中古車などの部品をかき集めてできた車両で自社改造ながらちょっとモダンな感じが大人気。でも、吊り掛け駆動なんだよね。平成に誕生したのに……
という珍車、なによりお隣を走るJR西日本の当時のエース221系と似ているんで、関西のマニアには「パチモンの221」として親しまれてきました。
この1両だけは現在定期運用から外れ、主にバラスト積みの貨車の輸送、駅構内の入換機として使われています。
下の2つは2009年3月10日に西武新101系が甲種輸送で彦根駅構内に運ばれてきて、DD51からバトンタッチして221が西武車を引き回している姿です。
近江鉄道220形電車 - Wikipedia
近江鉄道の古典電機ロコED31-3
伊那電気鉄道(飯田線)が1922年に新製した直流電気機関車で、国有化後に国営鉄道に引き継がれ、国鉄が近江鉄道などに売却。最終的に6両のうち5両が近江に集められ、本線や彦根セメントなどで1988年まで貨車牽引に従事した。
その後、細々と工事車両の牽引や入換などをして、たまに本線に出かけて除雪したりしていたけど、休車になっていたのも少なくない。彦根工場の側線が大幅に付け替えられて廃車体がいっせいに解体された2004年以降、籍を維持できたのはED31-3・4の2両のみ。本線走行をする任は、新たな工務用牽引車となった221に引き継がれ、機関車2両は事実上、彦根駅構内側線での行き来に留まっていた。
下2つは2009.12.10に久しぶりに動いていた姿。
伊那電気鉄道デキ1形電気機関車 - Wikipedia
共に、近江鉄道の定期運用から引退し、まず先にED31が入換・作業用の牽引機として使用されていたけど、2004年頃から221がその役割を代替するようになりました。つまり、ED31が彦根駅の構内から外に出ることはなくなったんですよね。
近江鉄道の本線を行くED31-3を久しぶりに見た
先週の8月21日午後に、221がED31-3を牽引して彦根駅を出るところを目撃しましたが空振り。目の前を通過して高宮方向に行きました。
なんでだろう。もしかしたら、高宮かどこかで解体されるのかな。
ちょっと不安な気持ちになっていました。
ところが、その3日後の8月24日(月曜日)16時頃。また所用で彦根駅にいると、221がED31-3を牽引して再び彦根駅に戻ってきたじゃないですか。
今度はすぐに携帯が出てきました。
ぱちり。
いったん近江鉄道彦根駅東側の側線に入り、定期の電車が通過した後、今度はED31-3を先頭にバックしてきます。
今度は221がED31-3を引っ張り込み車庫に入ります。
ここで221はEDとの連結器を外し、転線しながら高宮方で再びEDと繋がります。
そして最初にいた側線にED31を押し込み、これで入換は終了です。
おおお、ED31が本線を行くのっていつ以来だろう.......
撮影の時に立ち寄った近江鉄道彦根駅の窓口の方に聞くと、この間の21日(土曜日)に日野駅でイベントがあって、その展示物としてED31を回送したんだとか。
日野駅前通り共栄会と日野ギンザ商店街は、合同企画として懐かしい日常品や写真などを店先に展示する「昭和レトロ散策」を二十二日まで開いている。
今月二十一日には、日野駅前通り共栄会が昭和レトロ電車の展示や昭和時代の金物・荒物の販売を行い、
ハイカラ道具から知る日野商人滋賀報知新聞2010.8.27
これで謎が解けました。
注意したいのは、ED31は車籍があるけど、本線で自走できる状態ではないということ。金曜も月曜も、パンタが上がっていなかったから、221が引っ張っていたんです。
機関車が電車を引っ張るというのは、甲種回送なども含めてしばしば見かけます。
でも、その逆、すなわち機関車を引っ張っているのは電車という姿はかなり希有な事例ですよね。
久しぶりに本線上に出たED31の姿を見ました。しかも、偶然、2度とも。ちょっと幸せだよなあと思ったりしたのですが、それはまた別の話。
あとは、近江鉄道の彦根駅が2005年夏に改装される前の貴重写真。
2004年12月。まだ入換作業をしていた頃のED31たち。
あの頃生きていた貨車の半分ぐらいが現存しているというのも凄いところ。
住友セメントまで延びていた専用線。セメント工場が解体されたのにかなり遅れて2006年くらいに姿が消えていきました。
貴生川以遠で使われていたレールバス。十分に活用されないまま廃車になりました。それも彦根に何両も放置されていました。1両保存対象になった後は2005年7月頃に解体されました。
その後、籍なしのED4001が東武博物館にお輿入れするhttp://www.tobu.co.jp/file/1826/090107.pdfなどの処置は実施されました。
でも、近江鉄道の車庫には、現在、ED31が4両あるほかに、ED14が4両、それに1101号と9両も電気機関車があるんですよね。入換にこんだけ機関車が必要とも思わない。静態保存されてはいますが、それにこんだけ台数が必要なのか。有蓋車もなぜそんなに数多く残されているのか。
やはり近江鉄道。謎の多い鉄道です。