車内放送のない静かな空間「ひかりレールスター」サイレンス・カーは残して欲しい

katamachi2010-12-20

 2011年3月12日のダイヤ改正、個人的に気になっていたのは「ひかりレールスター」の扱いでした。
 すでに山陽・九州新幹線のダイヤについては概略がプレスリリース・報道されており、「さくら」&「みずほ」が1時間に1本運転されるとなっていました。
 一方、山陽ローカル準速達新幹線的扱いの「ひかりレールスター」は「毎時0〜1本」。「さくら」運行でそのスジの多くは代替される上に、博多「のぞみ」が増えて以前より重要度が落ちている。JR的には車両走行距離は抑制したい方針ですし、2012年春の改正で相当本数が削られることが予想されます。
 「レールスター」、事実上、使命は終わったなあ、とちょっと寂しく思っていました。大阪から広島・九州への移動で指名買いしていつも乗っていた列車だからです。
 で、実際、改正後、どうなったかというと(岡山駅発基準)、

http://www.westjr.co.jp/ICSFiles/afieldfile/2010/12/17/20101217_okayama.pdf
 「レールスター」は半減か。
 もっと減るかと思ったけど、2010年改正で臨時化された5往復を復活させるような感じで岡山13〜18時台に速達系が増発されているんである程度の数は確保されている。
 ただ、

というのが僕的にはかなり寂しい。いつも4号車に乗っていたのになあ……

ひかりレールスター」サイレンス・カーのユーザーでした

 700系「ひかりレールスター」が登場したのは2000年3月ダイヤ改正だった。もう十年も前になる。新大阪〜博多間の山陽内速達新幹線0系「ウエストひかり」の使命を引き継ぐ形になる。
 最高速度は700系「のぞみ」と同じ285km/h。新大阪〜博多間を2時間45分程度で結んだ。停車駅と最高速度の関係で500・700系「のぞみ」より時間はかかるが、停車駅の少ないタイプだと5、6分しか変わらない。
 8両編成と短いが、なにより有り難かったのは指定席が横2席+2席であること。利用者数などを考慮して「ウエストひかり」にあわせくれたのだけど、2席+3席が標準となっている「のぞみ」よりゆったりと座れるのが有り難かった。
 そして、サイレンス・カーと称された4号車の存在。

車内放送(異常時は除く)や車内販売のご案内をカット。静かに旅を楽しみたい方に最適な車両です。(4号車)
サイレンス・カーではまわりのお客様のご迷惑にならないよう、「静かな環境づくり」にご協力をお願いします。
ひかりレールスター 700系 車内案内

 この車両、基本、車内放送も車内販売も無音という設定になっている。始発の直後、そして終着に近づくときのみ放送が行われるが、その間の道中、車内放送の音は切られた状態になっている。車内販売の売り子も声を出さない。
 僕は、車内放送であれやこれや乗換案内されるのが苦手なんですよ。仕事で移動するとき、懇切丁寧な放送が耳障りなことこの上ない。特に岡山駅とか広島駅とか姫路駅とか乗換列車の数が多い駅だと案内がいつも長杉。もう止めてくれ、と思っています。
 だから、山陽新幹線区間で新幹線に乗るときはいつも「サイレンスカー」を指名買いです。
 放送がない、という当たり前のことが徹底されている。そのことが嬉しい。
 同じようなビジネス客ばかりなんで、基本、アルコール片手の仕事帰り客とか、オバサマたちや学生たちが大声で談笑しているようなグループ客はいないんですよね。「静かな環境づくり」はたいていの場合、保たれている。

 ただ、正直、あまり人気ないみたい。乗車率は5〜8号車の他の指定席より少し落ちる。

  • 「ひかり○○号」の指定席が欲しいと言っても通常発券されるのは5〜8号車のみ
  • サイレンスカー」が欲しいとリクエストしなければ4号車は販売されない
  • 導入時と直後はさかんにサイレンス・カーの宣伝をしていたけど、ここ数年、JR西日本はあまり「レールスター」の宣伝にあまり熱心ではない(「のぞみ」の利用を促進したい)

という事情があるようだ。
 車内放送ゼロという車両があることは、山陽新幹線のヘビーユーザーであるビジネス客ならそれなりに知っているのだろうと思う。
 けど、わざわざ「サイレンスカー」と指定しないと4号車に座ることはできない。発券の時に、「サイレンスカーにしますか?」と聞いてくる窓口スタッフはいないので、当然ながら4号車ばかりが空いてしまう。昔、国鉄の指定席のほとんどが喫煙席だった時代、わざわざリクエストしないと禁煙席を販売してくれなかったのと同じ状況なんでしょうね。
 座席が比較的空いている→隣席に客が来ない率が高い.....というのもサイレンスカーのメリットと言えばメリットなんだけど、それは知る人が秘密にしておければいいのかもしれない。
 あと、

  • 山陽新幹線を行く「のぞみ」が1時間3〜4本に増えた
  • N700の導入で博多〜新大阪間で20分以上到達時間に差がついた

と、登場当時、「ひかりレールスター」にばかり客が集まった(特に新大阪〜岡山間では指定券が取りづらかった)という状況は解消されている。
 そして、「さくら」&「みずほ」の登場で、「ひかりレールスター」は山陽新幹線内4番手という位置づけに変わっていく。どうなんだろう。早晩、消えていくのかなあ。
 ちなみに、2011年の改正以後、「ひかりレールスター」用700系は「こだま」への転用が進められるということになるようだ。この玉突き転用で、100系「こだま」は2011年度内の廃止が決定されている。

さっそく「こだま」に使われている「ひかりレールスター」700系

 「ひかりレールスター」のサイレンス・カーの設定が九州新幹線開業後になくなりそうな予感がしたんで、11月に出張で山口県に行ったときにサイレンス・カーに乗ってきました。
 行きは新大阪から新山口。ただ、希望する時間帯に新山口停車の「ひかりレールスター」がないんで、N700系「のぞみ」利用。自由席でしたが問題なく席を見つけることができました。
 翌日の帰りは、ちょっと寄り道で九州へ向かいました。「SL人吉」と787系リレーつばめ」と新八代駅を見ておきたくて、人吉まで往復してきたんです。
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 行きは、宇部線から山陽本線直通の普通に乗車し、厚狭から「こだま」823号に乗り込みました。
 8連とあったんで、てっきり500系かと思ったら、700系レールスター編成でした。「ひかり」運用の間合いで入っているんですね。


 さて、どれに乗ろうかと考え、4号車を選択。「ひかり」だと指定席なんだけど、自由席開放になっているんですね。
 山陽新幹線の「こだま」っていつ乗っても空いているというイメージがあったんで、8連だったらどうせガラガラだろうと思ったら、意外にも車内は埋まっていました。新下関発時点で6割ほどの着席率か。広島・山口県内から小倉・博多への通勤客なんでしょう。
 「こだま」ではサイレンス・カー仕様ではないんだけど、朝の通勤客ばかりなんで車内は静かでゆっくり眠りを補充することが出来ました。
 博多には8:20着。いっせいに通勤客は降りていきます。
 この編成、博多南線には入らないようで、客扱いはここまで。
 隣のホームの500系×2編成と並びます。ゼロ年代山陽新幹線を闊歩してきたエースたち。でも、3編成とも「こだま」や博多南線運用というのが時代を感じます。

旅の終わりは「ひかりレールスター」のサイレンスカー

 人吉まで往復した後、「リレーつばめ」は博多駅には18:50着。
 駅構内を走れば4分乗換で「のぞみ」に乗れなくもなかったのですが、余裕を持って「ひかり580号」です。指定はもちろん4号車サイレンス・カーです。


 新大阪までならば、多少、遅くても「ひかりレールスター」を選択する人は多いようです。2列×2の4列シートとなっている指定席の快適さは他に変えがたいものがある。
 かくいう私。早起きして1日中、趣味活動をしてきた疲れがきたのか、出発直後に睡魔に襲われたようです。小倉も広島も気付かず、岡山で一瞬目を覚ましましたが、新神戸まで断続的に眠り込んでいました。
 ただ、この日も、博多発時点ではかなり空いていた。岡山発時点ではそれなりに乗っていたけど、乗車率は6割程度でした。

 サイレンス・カーというのは「静かな環境づくり」をJR西日本が推奨している車両ですが、別に静かにすることは強制されていないんですよね。これまでも騒がしいグループ客とかが乗ってきたのに出くわしたこともある。でも、基本は、僕と同じで体を休めたいという客ばかりなんで、ゆったりと車内で過ごすことは可能です。
 それが2011年から実現しないというのは残念なこと。
 N700系「さくら」・「みずほ」が登場したら、6号車指定席、すなわちグリーン車の半室指定席部分36席にサイレンス・カーのサービスを承継してくれないかなあと期待していましたが、それはかないませんでした。九州乗り入れするとイレギュラーなシートの設定はしづらいというのは理解できますけど、残念です。
 年明けの出張ではサイレンス・カーの乗り納めをしておきたい。でも、基本、僕はサイレンス・カーではひたすら眠るだけなんですよね。鉄道趣味的には列車の車内放送を楽しみにしているケースもあるんだけど、こと仕事のことになると別な話。列車移動するときは静かであって欲しい。趣味人としての自分とビジネス客としての自分の意識が相反しているんですよね。ある意味、サイレンス・カー好きというのは純粋な趣味活動とちょっと方向性が違うとも感じるのですけど、それはまた別の話。