漆黒の特急「はやとの風」で歩きながら雪と風評被害の霧島温泉郷を訪ねる
この前の三連休は連れ合いと鹿児島県へ出かけてきました。
11日は新幹線で小倉まで向かって「ソニック」に乗り換え。そして別府から「にちりん」、宮崎から「きりしま」を乗り継いで鹿児島県国分。京都から9時間かかりましたよ……
まあ、この時期に日豊本線に乗りに来たというのだから、目的は485系にあるのは明白ですかね。
さすがに車内も沿線もマニアはちらほら。でも、めちゃくちゃ多いというわけでもない。関東や関西の連中もわざわざ九州まで遠征してこないのかなあ。国鉄色485系に乗りたかったけど、延岡の交換待ちで見かけたのみ。乗れたのは「きりしま」色とレッドエクスプレス色でした。
新燃岳の噴火でキャンセルが相次いでいる霧島温泉郷の各ホテル
その晩は霧島温泉の旅行人山荘に宿泊。ここって、バックパッカーの間ではお馴染みの出版社、旅行人の編集長蔵前仁一のご実家なんですね。
- 旅行人山荘 http://ryokojin.com/
- 蔵前仁一「旅行人編集長のーと」 http://d.hatena.ne.jp/kuramae_jinichi/
名前からすると、バックパッカー的なドミトリー中心のボロホテルを想像してしまうんだけど、そうしたのとは大違い。1968年築という建物は思っていた以上にキレイにリニューアルされていて、快適な時間を過ごせました。飯もうまかった。
もっとも、ここが旅行人山荘というホテルっぽくない名前がついてある由来って宿泊客のうち何人知っているのだろうか。
土産物コーナーにアジア雑貨が置いてあったり、部屋に雑誌「旅行人」の最新刊コーカサス特集号が備え付けられていたり、便所のスリッパに旅行人マークが付いているのもご愛敬。なぜか旅行人刊行の本がフロントで販売されていたんで、買いそびれていた「セルフビルド―家をつくる自由」を購入。自前で家を建てた人たちのお話と写真集で海外旅行とは無関係なんだけど、面白い本でした。
- 作者: 矢津田義則,渡邉義孝,蔵前仁一
- 出版社/メーカー: 旅行人
- 発売日: 2007/09/01
- メディア: 単行本
- 購入: 6人 クリック: 62回
- この商品を含むブログ (13件) を見る
旅行人163号特集コーカサス〜アゼルバイジャン+アルメニア+グルジア
- 作者: 蔵前仁一,石井光太,渡邉義孝,松尾よしたか,田中真知
- 出版社/メーカー: 旅行人
- 発売日: 2010/12/01
- メディア: 雑誌
- 購入: 4人 クリック: 30回
- この商品を含むブログ (4件) を見る
でも、旅行の2日前に電話連絡したらすんなり予約できました。1月末からの新燃岳の噴火の影響でキャンセルが相次いでいたみたい。実際、噴火から2週間の間に、霧島温泉のホテルだけで2万人を越えるキャンセルがあったという。
確かに、霧島温泉の一角にある旅行人山荘と新燃岳。両者は7キロほどしか離れていない。
隣接する宮崎県高原町では降灰被害についていろいろと報道はされている。
だけど、山の南側、鹿児島県側では噴石はおろか、降灰もほとんどないらしい。掲示されているポスターを見ても「通常の生活を続けていただいても大きな支障はありません」となっている。
「広報きりしま(号外)」にあるように、「過去の大規模噴火から想定した災害区域予測図」から霧島温泉は大きく外れている。注意はすべきであるが、退避するほどの緊急性はない。
- 広報きりしま(号外)「 災害区域予測図/噴火で起きる現象」参照
http://www.city-kirishima.jp/modules/xfsection/article.php?articleid=2766
ただ、被害状況のみが過剰に報道されることで"風評被害"的な状況が巻き起こってしまっている。旅行人山荘も
2月12日の南日本新聞の朝刊にも掲載されたように霧島温泉は降灰もなく旅館は通常どおり営業していますが、連日のマスコミの報道で誤解も生まれています。
http://ryokojin.com/2011/02/13/4096
と説明はしているけど、三連休の直前になってもキャンセルが相次いでいた(そのお陰で僕は予約が取れたのですが)。「霧島温泉郷は、爆発前と変わらず降灰や噴石の被害等も……」と各ホテルも説明はしている。でも、それが消費者になかなか届かない。宮崎県側の数集落が降灰被害を受けているのは確かだし、変に安全をアピールすることも難しい。
いい温泉だからぜひ行ってみて欲しいのだけど……
- 出版社/メーカー: ジェイティビィパブリッシング
- 発売日: 2010/10/27
- メディア: ムック
- 購入: 1人 クリック: 11回
- この商品を含むブログ (2件) を見る
雪に覆われた霧島温泉郷をゆっくりと走る
さて、翌12日朝6時半、露天風呂に向かったら……
と、積雪5センチ。南国九州鹿児島の温泉ですよ……ここ。
朝一番風呂なんですが、鳥のさえずりを聞きつつ、雪見をしながらのイイお風呂でした。
鹿児島でも山の中にあるんで雪が降るというのはないわけではない。でも、今年は今日で降雪は3回目。こんなことは過去無かったようだ。「特に今日は予報では雪じゃなかつたんで、無防備でした......」とのこと。
この後、徐々に風雪が激しくなり、9時の出発時点では
と視界も怪しくなってきました。レンタカーのガラスも雪で覆われている。雪の量に呆然としている僕たちを見かけたスタッフが近づいて、除雪を手伝ってくれる。
なんとか宿から脱出はしたんだけど、次の目的地、霧島神宮に行く道路にも積雪がそれなりにあります。時速20km程度におさえてゆっくりと進みます。途中、2ヶ所で玉突き事故の現場を発見。ノーマルタイヤだとヤバいなあ。
通常の倍ぐらい30分ほどかかって霧島神宮に到着。なんとか雪は収まり、空が青くなってきました。
この後、山あいの別宮に行こうとしたのだけど、例の新燃岳の噴火の絡みで県道が不通になっているみたいなので断念。そもそも雪が埋まっていて走れそうもなかったし……
特に予定もなく肥薩線嘉例川駅へに向かってみた
ぷらぷらと温泉街まで戻ってきたけど、この積雪では予定が立たない。
なんで旅行計画を大幅に変更し、肥薩線嘉例川駅に向かいました。
標高140mぐらいまで降りてくると、雪はまったくありません。空は真っ青。吹雪いていた霧島温泉とは別天地です。
ここは明治時代、100年以上前駅舎が今でも生きています。九州新幹線が部分開業した2004年、肥薩線が観光路線として整備された際、かなり小綺麗にリニューアルされました。
最近は、るるぶ、まっぷるなどのガイドブックなんかでも嘉例川駅が紹介されているんで、クルマ利用の観光客はそれなりに現れます。僕がいたときも10組ほどはいたかなあ。でも、みんな、駅舎の写真を撮って10分ほど滞在したら、そのまま去っていきます。もったいないなあ。1、2駅でも列車に乗っていけばいいのに。
- 作者: 熊本産業遺産研究会
- 出版社/メーカー: 弦書房
- 発売日: 2009/04/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- クリック: 9回
- この商品を含むブログ (5件) を見る
ちょうど10:57発の上り普通が来たので乗り込みました。
キハ40、1両編成。
特に細かい予定はなかったんだけど、とりあえず3駅先の大隅横川駅まで向かいました。
降りるのは24年ぶりかな。あの時は中学3年の春で山野線に乗りに来ていました。
ここも古い駅舎がそのまま残っています。
駅前に石のモニュメントが2つ。男びなと女びな。ひな祭りにあわせてのデコレーションみたい。
黒い「はやとの風」を覆うようにして降りしきる雪
帰りは大隅横川11:42発の「はやとの風」1号に乗ろうと思います。
九州新幹線部分開業にあわせて吉松〜嘉例川〜隼人〜鹿児島中央間で走り始めた観光特急。でも、車両は普通列車用のキハ40なんだよね。内装も外装も改造されているんで、日豊本線を走るボロボロの485系よりはよっぽどマシなんだけど、どっか身分不相応なところは否めない。まあ、自由席特急料金は300円と激安なんで不平不満言うほどではないんだけどね。
【マイクロエース】A6071 キハ140系特急「はやとの風」3両セット鉄道模型NゲージMICROACE100521
- 出版社/メーカー: マイクロエース
- メディア: おもちゃ&ホビー
- クリック: 23回
- この商品を含むブログ (1件) を見る
11:39、「はやとの風」到着。
黒いボディーが白い雪で覆われていく。
ここで5分停車するんで、乗客もぱらぱらと記念撮影に降りてくるんだけど、やはり寒いみたいです。ホームで立っているのが我慢できないようでみんなすぐ車中に戻っていく。ギリギリまで粘っていたのは僕1人。こういう鹿児島らしくない風景もまたよし、とか思うんだけど、やはり寒いです。
11:42、大隅横川発。
車内は温かいですね。
車販が来たんでホットコーヒーを即注文。
連れ合いは木製品で彩られた内装が気に入ったようです。「水戸岡デザインって……」と説明しようと思ったら、すぐに嘉例川駅に到着しました。
僕たちはここで降りるのだけど、列車も5分停車。乗客も多くはホームに降り立ちます。
が、
と、相変わらず降りしきる雪。
うちの家あたりでは別に珍しくしないんだけど、九州で見るからこそよりいっそう寒く感じるのかなあ。
乗客はみんなホームにも戻っていきます。嫁は駅舎の待合室に避難。
12:00ジャスト、嘉例川発。
雪の中を「はやとの風」が発車していきます。これでも南国、鹿児島を走る特急列車なんですよ。
もうカメラも水滴だらけ。ヤバいよ、この寒さ。耐えられずに、列車が去るや否やレンタカーに戻ります。
この後、桜島に向かうのですが、海岸縁なのにパラパラと雪が舞っています。初めて鹿児島に来たうちの連れ合いには、ただひたすら「雪」の想い出ばかりが刻み込まれたようです。いやあ、さすがにこれはかなりレアなことなんだけど……と言い訳はしたのですけど、それはまた別の話。