今週2月28日発売の「東洋経済」と「エコノミスト」で鉄道特集をやるらしい。
ダイヤ改正を前にした今週、週刊の経済雑誌「東洋経済」と「エコノミスト」で鉄道特集をやるらしい。発売日は共に2月28日月曜日。
2009年に「東洋経済」でやった鉄道特集がそれなりに売れたらしく、同誌は半年に一度くらい特集を組むようになった。「エコノミスト」でも昨年1月、鉄道特集をやっている。「ダイヤモンド」でもあったらしい。
この春は、九州新幹線、東北新幹線「はやぶさ」の登場、高速鉄道車両の海外輸出……と経済面で出てくるような話題が重なったということで、両誌とも鉄道特集を組んだのだろう。
でも、時事ネタでもないのに同じ特集が同じ日にかち合うというのは……さすがに偶然とはいえ、珍しいことです。
鉄道好きも仕事をしているのだから鉄道系経済記事の需要もあるはず
考えてみると、90年代からエアラインの特集は経済誌でたびたび扱われているのを見ていたし、鉄道関係の特集も80年代に見た記憶もある。でも、年に2度、3度と頻繁になったのは一昨年ぐらいからだろう。
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週刊 東洋経済 増刊 鉄道完全解明 2010年 7/9号 [雑誌]
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週刊 ダイヤモンド 臨時増刊 THIS IS JR 2010年 2/22号 [雑誌]
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内容的には、日本経済新聞など一般紙で報道される記事をいくつかまとめてみました、という記事が中心である。
取材先の鉄道会社やメーカーから話を聞いてきただけという記事もある。鉄道好きが書いた記事ではないんで、現状報告なんかは眉唾なものも多いが、マニア向け雑誌じゃないんでそこをツッこんではいけない。
むしろ、新聞では散発的に報告される経済記事を雑誌の特集としてひとまとめに読んでみることで資料的価値が加わる。そこが評価されているのだろう。
鉄道に関する経済記事というのはそれなりに需要があったと思う。
特に、ここ数年、
と経済記事でまとめやすい事象が相次いでいる。
一般紙の経済面でも特に鉄道車両の海外輸出、新規プロジェクトの発表はかなり細かく報道されるようになった。車両メーカーの株価も注目銘柄になっている。そこにビジネスの可能性があると見ている人も当然いる。
あと、忘れがちなんだけど、鉄道会社、そして鉄道関連会社の社員たちの存在。現役やOBも含めれば百万人を越える人たちが市中に存在する。彼らもまたビジネスマンの1人なわけで、鉄道特集だと、ついつい手を出す人もそれなりにいると期待できる。業務で使う本と言うより、気軽な読み物として。彼らもまた読者層として想定されているのだろう。
また、そうした鉄道を経済的側面から捉えた情報というのは、鉄道好きにとっても大いに興味がある話題だ。鉄道マニアだからと言って、別に鉄道趣味的側面だけで鉄道を見つめているのではない。
ここ30年ほどの間、国鉄の大赤字と分割民営化による解体、そしてJRとしての再生(と限界)というエポックが次々と起きてきた。そうした鉄道を取り巻く情勢をつぶさに目の当たりにしてきたからこそ、"鉄道"を取り巻く経済的側面を読解するマニアは飛躍的に増えた。都市鉄道や高速鉄道、LRT、ローカル線……様々な時事的話題をどう料理すればいいのか。彼らに語らせると、正直、そこらの新聞記者より面白い視点は出てくる*1。やはり彼らの一部も鉄道特集の経済記事を読み物として欲している層でもあるのだ。
と、まあ、鉄道特集を組むと、
- 経済雑誌の通常の読者層
- 鉄道に関心のある一般層
- 鉄道に関連する仕事をする層
- 鉄道マニア層
が購買層として想定できるから、通常の号より部数が増えるのかもしれない。旅雑誌が90年代半ばぐらいから鉄道旅行特集をやたらとやるようになったのと同じ事情があるのだろう。
「東洋経済 鉄道最前線」vs「エコノミスト 日本の鉄道力」
さて、では2月28日発売の両誌の鉄道特集はどんなものか。
今週の「東洋経済」2011年3月5日特大号「鉄道最前線」の記事は以下の通り。
http://www.toyokeizai.net/shop/magazine/toyo/
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- 車両メーカー大図鑑 川崎重工/日立製作所/日本車輌製造/東急車輛製造/近畿車輛/新潟トランシス/JR東日本 新津車両製作所/東芝/アルナ車両
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- 第3回 住みたい「駅力」 3大都市圏 全642駅 ランキング&格付け
一方、「エコノミスト」3月8日特大号「日本の鉄道力」はこんな感じ。
http://mainichi.jp/enta/book/economist/
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えーと。正直、内容はほとんど同じだ。これを同じ日に発売するというのはどうなのかな。どっちがよく売れるのだろうか。
目次を読む限り、「東洋経済」の方が興味深い気がする。「第3回 住みたい「駅力」 3大都市圏 全642駅 ランキング&格付け」ってのは以前も読んだけど、特集に興味がない人にも関心を持ってもらえそうな内容だ。「エコノミスト」の方は目次のラインナップを見ている限り、想定の範囲内なんだよね。もちろん新たな知見を得るのに有用な記事もあるかもしれない。
ちなみに、僕が関係者なら1週間前の2月21日発刊にスケジュールをあわせます。この日は、鉄道趣味雑誌の一斉発売日。すなわち、「鉄道好きが一番本屋に行く日」なんですね。時刻表の改正号3月号は24日。本屋でいっしょに並べてもらえる可能性があるタイミングでもあるのに。と、これは余談。
社会的側面から鉄道を扱った趣味誌とライターは
こうした鉄道を社会的に取り扱った記事というと、
を僕たちは思いだす。
「ジャーナル」は80年代当初から"社会派"的側面を全面に打ち出してきた。川島は1986年刊の「東京圏通勤電車事情大研究」以降、都市鉄道や高速鉄道を分析した本をたくさん書いてきた。
ただ、両者ともここ10年ほどは精彩を欠く。
「鉄道ジャーナル」の販売元は去年、鉄道ジャーナル社から成美堂出版に変わっている。「旅と鉄道」の休刊以前からちょっと大変そうと言うのは誌面からもうかがえた。最近の"ブーム"に乗り切れなかった感が漂う。書き手の新陳代謝を図らなかったがゆえに雑誌そのものが活力を失った....と以前指摘したことはある。
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それは書き手も同様なんだろう。かつ常連の読者相手に何度も書いていると、本来説明しないといけない説明もついつい省略しがちになってしまい、マニア以外には読めなくなってしまう。
かつては本屋で経済書の棚に入ることもあった川島の本。処女作「東京圏通勤電車事情大研究」は十万部を越えたらしいが、「鉄道事情大研究」以降、中身が細かくなるにつれてマニア以外には読めなくなった。「ジャーナル」の社会派系記事もそれなりの水準は維持されているが、それ以上でもそれ以外でもない。公称13万部ということだがなんとなく大変っぽいというのは想像できる。そして両者とも高速鉄道の輸出など海外鉄道系のネタは不得手にしている。本来の読者に興味を持ってもらいにくいので記事にもしづらい。
経済誌の鉄道特集の内容がどうしても似通ってしまう理由
その点、経済誌の鉄道特集の方が読みやすいのだろう。一般紙の経済記事をベースにしているのだから当たり前と言えば当たり前。鉄道車両の細かいスペックとか、蘊蓄話とかトリビアネタとか、そうしたのはどーでもいいんです。ブラジルやアメリカの高速鉄道の受注競争とか新聞にも載っているような話の方が興味深いじゃないですか。マニアでもそういう層はそれなりにいる。
奇しくも同じ日に発売される両特集の目次を読んでいる限り、編者が違えども、内容は大差ないなあ……というのが正直な印象だ。以前の特集とネタも被っているんじゃないの、とも感じた。両誌ともベースが一般紙の経済記事にあるからこそ、切り口も似通ってしまう。「鉄道を記事にする」という歴史的蓄積に欠けている。ゆえに内容の「軽さ」が見え隠れしてしまう。論文でもマニア向け本ではなく、あくまでも読み物なんだから。そこらを指摘するのも野暮なのかもしれないけど。
時事ネタ以外ではなかなか新味のある記事はないだろうけど、さてはて次回はどうするのだろうか。とりあえず明日は両誌を買いに行きます。面白い記事があるといいな。
さて。なぜ、両誌の読者でもない僕が鉄道特集が組まれることを知ったのかというと、毎日新聞「エコノミスト」の編集部からメールで連絡が来たのです。鉄道に関連した人気サイトやブログを紹介する中で、この『とれいん工房の汽車旅12カ月』http://d.hatena.ne.jp/katamachi/も取り上げる、と。
確かに、「エコノミスト」の予告には、
- 人気の鉄道サイトとブログ
というのが目次にあります。7、8年前ならともあれ、今なら検索エンジンで……いや、なんでもないです。公開しているURLなんだから勝手にすればいいのに、律儀に連絡してくれるのは新聞社だからなのかな。で、承諾しますよ、とのメールを返すと、「忌憚のないコメントをブログで」とのお言葉をいただいたので、本文をまったく読まずにコメントを書いてみました。すみません。両誌の中身はぜひ本屋で確認してください。
連絡が来たのは23日夜。その段階で28日発売の雑誌の本文の編集をされていたんですよね。内容からして埋め草のページなんだとは思うのだけど、〆切がギリギリなのはさすが週刊誌……と、両誌の特集よりスケジュールの過酷さにやたらと感心してしまったのですが、それはまた別の話。
*1:残念ながその多くはかなり偏った視点ではあるのだが