淀城のお堀端が見える京阪淀駅と京阪3000系快速急行の臨時停車のラスト

katamachi2011-05-31

 今回はきわめて個人的な京都行きの話。
 先日、仕事で東京に行ったとき「スルッとKANSAI 3dayチケット」(全国版)を買ってきました。関西私鉄の多くに3日間乗れるフリーチケット。5月の週末に大阪モノレールや六甲山に行く予定があったんで、3日間ぐらいすぐ使うやろ、という思いだったんです。関西では購入できないんですが、関東とか他の地域ではローソンでも予約券を手に入れられるというのが凄いっすね。
 で、5月21日の土曜日、さっそく使い始めたんですが、その日の午後、気づきました。裏面に
「有効期間:使用開始日から連続3日間」
とあるじゃないですか。
 以前、全国版を買ったときも任意の日を使えるタイプと記憶していたのに、いつ変わった? あれ???
 からくりは、こうです。

 すなわち「スルッとKANSAI 3dayチケット」(全国版)のみ連続3日間使用というスタイルになっているんです。すなわち、最初の利用日から3日以内にすべての行程を終えておかないといけない、と。以前何度か買った2日間用とルールが違うんですね。そういや、以前、大学の後輩とそんな話をしていたような……
 3日間用だと18きっぷみたいにチケット屋で売られる可能性があるとかいろいろ事情はあるのでしょうが、ややこしい話です。HPをきちんと読んでいなかったオラが悪いんですが。
 なんで、急遽、翌5月22日も趣味活動に出かけざるを得なくなりました。
 出なきゃいけないという義務もないんですが、ざーっと21日の行程だけでは5000円の元はとれていない。損するのはいやです。18きっぷの有効期間が近づいてくると、余った券を消化すべく用もない旅行を繰り返すのと同じ発想ですね。午前中、大雨が降るという予報でしたが。

特に用事もないけど比叡山鉄道坂本ケーブルに乗ってみようと思ふ

 近所で一番お値段が高いのは……と、考えたのが比叡山鉄道坂本ケーブルです。往復1,570円。これでなんとか5000円は突破できるはず。もうやけくそな旅行です。
 ヒマだったのかなぜか付いてきた嫁と京阪石山坂本線坂本駅に降り、ケーブル坂本駅へ。昭和初めに建てられた山小屋風の近代建築は登録有形文化財になっています。

 昨日の六甲ケーブルも混んでいたし、週末だからたくさん人がいるのかなあ、と思えば、出発時刻が近づいてもお客さんは8人ほど。大雨の予報が当たったし、日帰り行に出る人も少ないのかな。
 行きは、もたて山に久しぶりに下車。直営キャンプ場とバンガローのために設置された無人駅です。今は施設は残骸しか残っておらず、降りる人は年間ほとんどいない。

 ホーム備え付けのインターホンで注文しないと、ケーブルカーはすべて通過。基本、利用者が毎日ゼロということもありますが、妙な扱いです。
 30分ほど待てば次の便が登ってきました。次は終点ケーブル比叡山駅。こちらは縦長の窓が特徴な大正ロマン風近代建築で、やはり登録有形文化財になっています。駅舎の古さを活かした案内活動も積極的にやっています。

 ちょうど雨がやんで光が差してきました。快晴とは言えずとも、澄み切った空気であるため視界は予想以上に広い。
琵琶湖と周辺の町並、遠くには唯一の有人島沖島、その向こうに竹生島も見えます。冬晴れの日には北陸の白山まで見えると言うし凄いですね。
 帰りは、もう一つの無人駅、ほうらい丘駅。ここも乗降する利用者は少ないけど春秋はちらほらと利用があるようです。

 信長の延暦寺焼き討ちの後、地元の方たちが並べた石仏が何千体と埋まっていたエリアで、今はきちんとした形で祀られています。なんでも比叡山有数のパワースポット。お参りに来る中高年女性がそれなりにいるらしく、一心不乱に頭を地につけて何か祈り続けているのだとか。

 30分ほど待って、次のケーブルが到着。再び坂本に戻ります。ここに来れば京阪坂本駅の鶴喜そばですね。
 比叡山参拝客のために長年営業している歴史あるそば店。シーズンはいつも行列ができているんですけど、大雨の後だからか簡単に入店できました。ざる大盛りでかやくご飯付きが定番です

本家 鶴キそば 本店

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本日がラストになる京都競馬場開催日の快速急行の淀停車

 あとは京都に転戦し、嫁のスイーツ巡りに付き合った後、単独行です。
 とりあえず、京阪本線で未乗降だった鳥羽街道深草、藤森に下車することにします。フリー切符の効用をできる限り活用しないと乗った気にはならないし、次の5月28日改正前日で京阪の京都まで来る快速急行の多くが消えるんで、それをちょっと撮っておこうかという計算もありました。


 元祖3000系、今は8050系もやってきました。歴代社長の思い入れで残されているとも聞きましたが、さて、今後の京阪の合理化の嵐を乗り切ることはできるのか。
 で、藤森で所定の作業は終了。まだ時間があるので淀駅に行こうと思いました。
 ここのの淀駅、大阪行き下りはすでに高架線になっているのですが、京都行きはまだ地平線を走っているんです。それが28日から高架に切り替わる。今回のダイヤ改正もそれにあわせての処置なんです。
 大阪行きの高架ホームに降り、追いかけてくる中之島行き快速急行を待ち受けます。
 次の改正、快速急行は大幅に削減されるのですね。改正以後に京都府内まで乗り入れる快速急行は、

  • 平日京都方面行き 33本→4本
  • 平日大阪方面行き 40本→12本(通勤快急も含む)

と大幅に減らされるんですよね。代わりに京都方面まで直通する特急が増えるのだけど、なら中之島線にあわせて快速急行をやたらと増やした2008年10月改正の意味はいったい……という気もします。この十年、ころころダイヤを変えてばかりいる京阪。また昼間の快速急行が復活する可能性もありますが、まあそれはさておき。
 淀駅が高架になってから降りるのは初めてだと思います。ホームの京都寄りが妙にタバコ臭いなあと思ったのは喫煙スペースがホーム上にあるからですね。競馬帰りの人たちが20人くらいたむろしています。吸い殻をホーム上にまき散らしている行儀の悪い若者も数人。そこらは昔と変わらないのかなあ。
 さて、17:30発の快速急行がやってきます。淀に臨時停車する大阪方面行きの快速急行は次の18:00発の便がラストとなります。
 そして、改正当日までは京都競馬場開催予定はありません。

 で、実は、この改正、淀駅にとっては、高架化以外にも大きな転換点となります。改正以後、

  • 樟葉発着の急行3.5往復が淀まで延長して競馬輸送に対応
  • 快速急行だけでなく急行も含めて「淀の臨時停車」という設定がなくなる

んです。先の競馬ブームから20年近く、観覧客も減っているんですかね。
京阪電気鉄道株式会社/快速急行 淀駅臨時停車のご案内
 とりあえず、次は、地上ホームのまま残る京都方面行きを見に行きます。
 駅舎は三角屋根のまま残っていたんですね。改築工事で撤去されているんじゃないかと思っていたんでうれしい誤算です。

 ちょうど出町柳行き準急が到着しました。
 扉を開くと駅側の踏切が閉まります。そして、出発。下り高架線にそってゆったりと発車していきます。

 この風景が見られるのも28日までなんですよね。

淀に停車する快速急行を見送り、そして淀駅ウオッチング

 次に来るのは17:44発快速急行出町柳行き。
 本日の京都方面行き快速急行の臨時停車はこれが最後になります。そして、淀駅に臨時停車するラストの便になります。

 カメラを持った若い子が1人現れて踏切付近でうろうろし始めます。
 やがて構内放送が流れ、3000系がぎしぎしとレールを響かせ到着します。

 競馬客は2、3人ぐらいかな。明らかに通常の利用者っぽい人たちが多数乗り降りし、やがて出発の合図。ゆったりと動き始めます。


 さて、ホームに戻ると、駅構内で撮影していた同業者が4人くらいいたかなあ。
 元京阪線大阪側沿線利用者だった住民にとって、淀駅って思い出深いんです。樟葉から府境を過ぎれば京都府八幡市の先で大きな橋をいくつも渡って、京都市内最初の停車駅が淀駅になります。
 大阪側の京阪ユーザーにとって、はるばる京都までやってきたゼ、と実感するのが淀駅、そして駅の左手にある淀城なんですね。

 石垣しか残っていませんが、お堀に浮かぶその姿は小さな時から印象に残っていました。
 淀川の上流にある宇治・桂川・木津川に囲まれた川中島に築かれた城。大河ドラマでやっている「江」の長姉、茶々こと淀殿との縁がある
……と思ったら、正確に言うと、当時の城と駅側の城とは場所が違うということを家に帰って初めて知ったのですが、なにはともあれタイムリーな場所であるのにそれを宣伝で使おうというポスターすらなにも張っていない。
淀古城址・戊辰戦争砲弾跡
 でも、そんな地味さもまたいい味を出しています。


 初夏の夕暮れ時の淀駅にたたずむ同業者たち。ホームのあちこちに残る古い面影をデジカメで切り取りながら、それぞれに感傷に耽っているようです。そんな静寂の中、特急が通過していきます。

 いつしか18時を過ぎたので僕の作業は終了。丹波橋から近鉄に乗り換え、未下車だった近鉄京都線地下鉄烏丸線の計6駅に立ち寄ってから自宅に帰りました。
 そして淀駅の高架への切り替えは28日に無事終了し、ダイヤ改正は実施されました。
 さて、問題の「スルッとKANSAI 3dayチケット」(全国版)。3日目は仕事でどこも出られなかったので使わずに放棄したのですが、それはまた別の話。