沖縄唯一の2本足レールの鉄道「沖縄軽便鉄道」に乗る。

katamachi2011-09-11

 先日、と言っても今年1月の話なんだけど、名古屋時代の友人が結婚するってので沖縄へ行った。
 1月下旬だと、一年間で一番寒い時期。暖房を使うほどではないけど、沖縄旅行にはあまり不向きなシーズンであるのは間違いない。関空から往復航空券+那覇市内ホテル込みででもかなり安く購入できたのはそのお陰なんだろう。
 久しぶりの沖縄。いろいろ行きたいところがある。
 お目当ては建築好きには有名な名護市役所への再訪。そして、「ネオパークオキナワ」への入館です。

2005年に60年ぶりに復活した「沖縄軽便鉄道

 「ネオパークオキナワ」ってのは、沖縄でしばしば見られる動植物園の一つ。名護市の関係施設らしい。園内に熱帯系の植物を植え込み、動物を放し飼いにして、自然に近い状態での観察としている。要は沖縄の亜熱帯風の気候から発想するジャングルっぽいイメージを体験できる施設になっている。

 正直、僕的には確実にスルーする施設なんだけど、ツレの買ってきたガイドブックの119ページを見て気持ちが変わった。

沖縄軽便鉄道を再現 「ネオパークオキナワ 園内の外周を実物の3/4スケールの軽便で一周。動物の解説を(以下、略)

 掲載されている写真はライオンでもサボテンでもなく、なぜかD51風のパチモノ。ほー意外にかっこいいじゃないの。
 園内で放し飼いされている動物を見るべく、サファリーカーの代わりに観客を乗せて走る遊覧鉄道を敷設しているのだろう。HPを見ると、「2005年4月16日に復活」とあった。
 不勉強で、正直、前夜泊まった民宿で本を開くまでノーマークだった。
 もちろんこれは本物の鉄道ではない。
 沖縄では2003年から1本足のモノレールが那覇市内を走るようになったが、2本足の鉄道は現段階では運転されていない。
 通常タイプの鉄道は米軍との沖縄戦で荒廃した1945年に徹底的にまで破壊され、その後、復活していない。
 それから60年。ついに鉄道が帰ってきた。パチモノでもいいじゃないですか。
 と、見とれていると、隣でツレがにやにや。「やっぱり行くのかと思った(^_^;)」

タビリエ 沖縄 (タビリエ (37))

タビリエ 沖縄 (タビリエ (37))

 友人の結婚式は1月22日。
 挨拶を頼まれたんで準備していったら、なぜかトップバッター。オレが「主賓」なのか?。というか、開演前からみんなビールや泡盛を回して酔っぱらい始めているよ……
 難なく主賓と大役を務め(とはいえ200人以上、みんな酔っぱらっていたけど)、あとは、冒頭から余興を始める新郎の父母の舞いを見たり、やっぱりエイサーってスゲーって思ったり、名古屋から来た花嫁の手紙にうるっと来たり、披露宴の最後に招待客ほとんどが舞台に上がってカチャーシーを踊るって本当にするんだ……と驚かされたりもしたのですが、まあそれはそれ。
 で、3日目1月24日は、今帰仁の宿を起点に、古宇利島などを回った後、名護市へ向かいました。先に名護市役所のアレな建物を堪能した後、お目当てのネオパークオキナワへ。
 さっそく駐車場に行くと、日曜日だが個人客のレンタカーが2、3台止まっているだけ。来るのは、当然、客は本土からの団体客ばかりだ。まあ、僕らも「まともでない客」わけで、そこらは何とも言いようがない。
 ちょっと古びた土産物売り場の二階が軽便鉄道の乗り場だ。

と、手作り感満々のポスターが歓迎してくれる。わざわざ英語で「Okinawa Light Railway」とある。おおお、なんか趣味の人が参画しているのだろうか。ちょっと気になる。
 「軽便鉄道名護駅」と書いてあるところが乗り場だ。
 ただ、ちょうどホームに近づくと、警笛が鳴って列車が動き出した。しまった……11時30分の便か。
 30分毎の運転なんで次は12時。時間があるので、仕方ないから園内を散歩してみる。アフリカ風の植物や動物は正直どーでもいい*1。園内を遊覧鉄道がどう通り抜けていくのかが気になる。
 動物や鳥のいるエリアは網で覆われていて、列車の走る空間は網で覆われている。

 列車が近づいてくると、入り口の扉が自動にオープンし、あわせて踏切も閉じられる。通常時は線路側を遮断し、走行時は90度横に回転して道路側を封鎖する。変なところだけ海外ちっくだ。
 やがて、のそのそと機関車が近づいてくる。今日はD51モドキの運行日。
 D51-754っていうと、吹田第一機関区とか関西で活躍していた貨物機関車だが、なぜか沖縄に転じて今では観光客車を引いている。鉄道車にもいろいろ人生があるんだなあ、と。しみじみ感じる。
 踏切のオープンを確認すべく一度止まってから再発車する。

「実物の3/4スケール軽便」って聞いたから期待したけど、実寸だと半分以下か。もう1台、昔の軽便鉄道の蒸機を模した機関車もあるんで、縮尺の計算があうのはそっちの車両かもしれない。
 踏切の裏にも木造の北海道仮乗降場風のホームがあるのだけど、D51は通過していく。未使用状態の未成駅っぽい存在なのか。

 動力源はバッテリーなんだろうけど、どこから集電しているのかと見ていると、客車の車輪の脇に機器があるんですね。踏切以外の区間には集電用のレールがあるんで、そこが第三軌条みたいになっているんでしょう。

 そのまま園内をショートカットして、駅近くの踏切でも再度狙います

 意外にかっこいいなあ。あとはもっと煙が出ていたら……と、無い物ねだりをしても始まらない。

D51-754の一周23分のロングランはなかなか乗りごたえがあります

 さて、次の12時の便が近づいてきた。
 窓口で切符を買い求める。硬券風の形状。運賃は600円。そこそこの値段がするんだね。

 D51、やっぱり小さいなあ。実物の2分の1。762mmのナローよりもう一回り小さい感じ

 運転台も覗いてみました。まあ、そこらは突っ込まないお約束

 牽引する客車は窓付が2両、オープンタイプが3両の計5両。2列並びのシートが6列というレイアウトだ。
 銘板を見ると、佐伯工業、とある。後で調べてみると、大阪府岬町深日の会社で、輸送用機械器具の製造と共に遊園地の乗物の設計設営等をやっている会社だ。

 12時1分、定刻より少し遅れて出発。
 さっそく園内の見所の解説が始まるのだけど、まあそこらはほどほどに。
 やがて駅構内を出ると、大きな池が近づいてくる。

 ここで再びストップ。今度は動植物の解説だ。
 講釈が一通り終わると、再出発。
 D51は、アフリカなにかをイメージした大きな池を曲線状の橋梁を跨いでいく。なかなか魅力的なシーンだ。

 橋を渡り終えると、イノシシとかが放し飼いになっているエリアに差し掛かる。止まっては解説、また出発。その繰り返しが続く。
 踏切を過ぎると、次はダチョウが放し飼いにされているエリアだ。窓に近づいてくる。

 マダガスカルエリアを越えると、次は左手にリャマ、右手にブタ。凄い組み合わせだなあ。
 そして、今度はステンレス製の大きな柵の中に機関車は近づく。
 柵の手前で一度停車し、扉が開くと中へ入っていく。

 ここは第三フライングゲージ、オセアニアの乾燥林をイメージしているらしい。
 小さなトンネルを潜ると、第二フライングゲージ、今度はアフリカだ。
 ゲージと隔離されたトンネルの中を進むと、一番最初に見に行った踏切。ここでも一度停車し、柵の開門、踏切の閉鎖を確認してから進み出す。
 くるっと園内を進むと、ようやく名護駅が見えてきた。

 名護駅のホームの側で、本物の沖縄軽便鉄道の展示があったのでそちらも見学。写真と文字ばかりではあるが、誕生から消滅までの過程がコンパクトに紹介されていた。
 あとで売店に立ち寄ってみると、気になる絵本が置いてあった。「沖縄軽便鉄道」をイラスト中心に紹介したものだ。

沖縄軽便鉄道

沖縄軽便鉄道

 ふと、気になったんで、
「ゆたかはじめさん、って、ここの鉄道にも関係しているのですか?」と。
 すると、先週も来られていたらしい。
 ゆたかはじめ、本名、石田穣一。那覇地方裁判所長・福岡高等裁判所長官・東京高等裁判所長官を歴任した後、沖縄に移住した人物だ。鉄道にも造詣が深く、宮脇俊三との交流もあった。沖縄軽便鉄道に関する資料の発掘にも尽力してきた。
沖縄に電車が走る日

沖縄に電車が走る日

失われた鉄道を求めて

失われた鉄道を求めて

 ああ、やっぱり、と納得。もちろん絵本は手に入れてみた。
 一周、23分間。動植物の案内のために停止していた時間もあったが、この手の遊覧鉄道にしてはかなりの長時間だった。車両のリアリティとかはとりあえず、踏切やトンネルも本格的でなかなか面白かった。やや斜め方向に関心が逝っている鉄道マニアとしては十二分に楽しめた。
 ただ、来園者の割には乗客は少ない。ツアー客が誰も乗らないのだ。1乗車で23分もかかる上に、運賃600円と安くない。時間的にも値段的にも旅行会社のニーズにあわないんだろう、せっかくの「鉄道」なのに惜しいなあとは思ったのだけど、それはまた別の話。 

*1:昔、アフリカのサファリーをあちこちで見たんで勘弁して