食べログ人気第1位の店でラーメンを食べながら考えた
飲食店の人気ランキングサイト「食べログ」が、好意的な口コミ投稿の掲載や順位の上昇を請け負う見返りに飲食店から金を受け取る「やらせ業者」にランキングを操作されている事例があることが4日、運営会社のカカクコム(東京)や飲食店関係者への取材で分かった。
人気サイトの食べログで順位操作 やらせ39業者を特定共同通信2012.1.5
というニュースが今月5日から話題になっている。月間約10万円の報酬を支払うと、店側の意向を反映した好意的な口コミを毎月5件ずつ投稿してくれる……そんな業者があるみたい。
【「食べログ」で順位操作】「裏技」「確実」と提案 10万円でやらせ月5件共同通信2012.1.5
たとえ新規進出店舗であっても、食べログで上位に来るとお客さんは確実に来てくれる。オープン直後の先行きの不安定さを考えると、10万円という広告料は決して安くないんだろう。
実際、私も外食に出かけるとき、しばしば食べログで情報検索する。評価か高いのに味も何もかもイマイチだなあという体験は何度もしたことがある。
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90年代に学生生活を過ごした1人としては、テレビや雑誌などで「今、人気の●●」として紹介される衣料品やグッズ、飲食店、イベント……etcには、マーケティング臭さが漂っているのは十分に承知していた。
メディア露出を図ることでビジネスとしたい新規店舗や代理店、「今、人気の●●」というのに消費者が踊りやすい=関心を持ってもらいやすい=売り上げへの期待になることを知っているテレビや雑誌。双方の利害がうまくマッチしていた時代があったのだと思う。
個人的には、そういう風潮を斜めに見ていた。「自分はそういうのに踊らないぞ」という妙な自負があったからだろう。
旅行ガイドブックなんかでも、本文記事のショッピングやホテルのコーナーで不自然に登場してくる案件がやたらと気になっていた。実際、海外の安ホテルに泊まった時、「ぜひ、『●●の●き●』にうちのホテルの評価を書いて欲しい。書いてくれたら……」と声をかけられたこともある。利用者の口コミを前面に出すガイドブックだった。そうした口コミが商売に繋がることを彼らは肌身を通じて感じているのだろう。実際、自分もガイドブックを見たからこそ、そのホテルに泊まった。
結局、自分も情報にうまく踊らされていたということだ。
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ゼロ年代になってからはネットの力が大きくなってきた。一時期は、掲示板で自分の所をベタ褒めして(あるいはライバルを貶したりして)宣伝していた業者もあったまだろう。
ここ数年は、検索エンジンが整備され、かつ価格.comや楽天、Amazon、じゃらんといった商用サイトも充実してきた。ブログやツイッター、ブックマークなどでの評価も重宝される。
知らない商品、知らない土地、知らない店舗。できるだけリスクを避けようとするならば、確かに口コミも参考になる。
僕も食べログを重宝している。
今の街に住んで2年あまり、まだまだ知らない店はたくさんあるし、せっかくカネを払うんだし、あまり無駄金を使いたくない。そもそも食べ物の味を的確に判断できるほど舌に自身があるわけではない。ある意味、「合理的」な判断をするために食べログという基準は参考になりうる。
ただ、なんかサクラっぽい意見って言うのはあるなあ、とは感づいてはいる。店長や店員が自分たちで書いたのか、あるいは知り合いにお願いしたのか。まあ、そこらは話半分、実際、行ってみてダメなら残念だった……と諦めるしかない。ネットの情報ってそんなものだろうと僕は思っている。
情報記事があふれている中で、ある程度、選択するスキルを高めないとネットではやっていけない。と、共に、ソースや判断基準が不確かである、ということへの割り切り、諦念も必要なんだろう。
逆に言うと、食べログやらせを伝える新聞やテレビが、ネットでのそうした動きに「驚いて」みせていることに、正直、当惑した。毎日新聞の「風にきく:情報の取捨選択 /三重」が指摘するように、「互いに公正中立をうたう大手マスコミの情報でも、それぞれの会社で微妙に表現や扱いが異なる」というのはあるからなあ。テレビの情報番組での出演枠を●百万円で買った、とか、当事者から聞いたこともある。
新商品を出したり、イベントを企画したとき、
- 新聞やテレビの情報欄でどれだけ大きく取り上げてもらえるか、その宣伝広告効果がいくらか
という側面が重視されるようになっている。広告代理店の視点で言うと、
- <テレビでの広告宣伝効果> 当該イベント・商品の放映時間 × CM放映単価
- <新聞での広告宣伝効果> 当該イベント・商品の掲載ページ × 広告掲載単価
- テレビCMや新聞広告を掲載した際にかかる費用=広告宣伝効果
と、金銭換算して推計した上で、いかに当該イベントや商品が成功したか……ということになる。いくら客を呼んだか、それでナンボ稼いだのかばかりが強調される。
いま話題の□□がついにオープン(あるいは閉店)。マニアで密かな話題の●●を商品化しました。ネットで流行の○○を知っていますか。ゆるキャラ・萌えキャラを使った商品展開や地域おこし。△△が登場するのは今日だけだし貴重な機会ですよ。
……どこかで見たような、なにかをマネしたような、あるいは飢餓感を煽るようなイベントや商品ばかりが乱発されるようになった。そうした、「話題づくり」の情報が新聞でもテレビでも雑誌でも溢れかえっている。現場に行かず裏もとらず、プレスリリースを丸写ししているだけ、ネットの評価をそのまま借用しているものもある。
ここ数年、ネットの口コミの力が評価されるようになったのに対し、多くのメデイアは影響力でも商売の面でも低調となっている。あらゆる形での「情報」が無料で手にはいるようになった。新聞や雑誌、本にカネを出してまで情報を得ようという人が少なくなるのも当たり前だ。だからこそ、テレビや新聞での露出量=広告効果=金銭的価値という逆転の発想になったのだろうか。ただ、そうした既存メディアの状況って、やらせの口コミより、よっぽど始末の悪いと思うのだけど、どうなんだろう。
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