『ドラえもん』を読んで371系「あさぎり」で関西へ行こう。

katamachi2012-02-18

 かの「ドラえもん」の第1巻第1話「未来の国からはるばると」に、こんなエピソードがあったのを覚えているだろうか。
 「野比のび太は三十分後に首をつる」……不吉な声が聞こえる机の引き出し。ガタンゴトンといった音と共に、いきなり出てきたのが青い真ん丸型のロボット。ドラえもん初登場の回になる。
 ダメ男のび太の運命を変えるために僕はやってきたんだよ、と語るドラえもんに、かの有名な台詞がある。

たとえば、きみが大阪へ行くとする。いろんな乗りものや道すじがある。だけど、どれを選んでも、方角さえ正しければ大阪へ着けるんだ

ドラえもん (1) (てんとう虫コミックス)

ドラえもん (1) (てんとう虫コミックス)

 当時、幼稚園生だった僕は、この箇所に妙に感心してしまった。へえ、いろんなルートで東京と大阪を往復できるんだ......と。
 大阪在住の自分にとって生まれて初めての東京行きは幼稚園のときだったがあまり記憶がない。
 次は小学2年生の時だった。行きは「ひかり」。帰りは「さくら」。ブルトレブームの当時、親にねだって乗せてもらったのだ。
 その後、三十数年のほとんどを関西圏で過ごしている。現在は京都駅の程近くに住んでいる。年に十数度ある東京出張&遊びは「のぞみ」での往復が定番化しているが、たまには変化を付けて行き帰りしてみたくなる。特に、仕事終わりで関西に戻ってくるときは。以前、「関西〜東京間の出張で安く便利に寝台列車に乗る方法 - とれいん工房の汽車旅12ヵ月」で紹介した上野発「能登」・「北陸」、あるいは長岡から「きたぐに」に乗るルートもそんな楽しみから生まれた。
 ドラえもんの「どれを選んでも、方角さえ正しければ大阪へ着けるんだ」という言葉が頭に引っかかっているのかもしれない。寄り道しているならさつさと帰ればいいのに、という話もあるのだろうけど、それはまあそれで。

2011年12月14日 新宿発「あさぎり」沼津・静岡経由

  • 新宿17:50〜特急あさぎり7号〜19:43沼津20:00〜ホームライナー浜松5号〜20:37静岡21:12〜ひかり487号〜23:02京都

 その日は、京都から東京へ日帰りすることにしていた。10時過ぎの「のぞみ」で東京駅から新宿区内の打ち合わせ場所に向かい、2時間半ほどで終了。丸ノ内線で新宿へ向かう。16時50分頃に到着。
 ここから小田急新宿駅へ向かった。お目当ては371系「あさぎり」だ。10月の共同通信報で「流線形の名物車両が引退へ JR東海「371系」」と伝えられており、で、JR東海持ちの車両がなくなるなら沼津直通も減らされるのかな......とは容易に想像できた。
 さあ、通勤客とマニアが多いかな、と思ってマルスを叩いてもらったが、来たのが早すぎたのか残席は多数。とりあえず、京都までの乗車券(小田急発券)と沼津までのグリーン車を所望。特に頼まなかったけど、一列席の方があてがわれた。
 本屋さんで時間つぶしした後、さあて、写真でも撮るか、と、デジカメを取り出したらシャッターが降りず。SDカード、パソコンに入れたまま忘れてしまったみたい。急いで近所の電器屋で2Mを購入。
 改めて新宿駅。ホーム端の喫茶コーナーでコーヒーを飲みながら待機。
 17:33、定刻より4分遅れで「あさぎり6号」が到着。意外に下車客は多いけど、それも構わず、みんなぱしゃぱしゃ撮影している。僕もその後ろに加わって何枚か。

 ホームからの写真ではなかなかその全体像を捉えにくいのだけど、この鋭角的なフォルムが新しかったんだよね。 幅広な窓もいいよね。

 そして最近では懐かしくなった2階建て車。

 さすが「JRバブル型車両」だ。登場した20年前、キハ85「ひだ」や311系と共に、新生・JR東海をアピールするお洒落な車両でした。まあ、その過剰な装備ゆえに371系は1編成の製造だけに終わり、後は300系のような機能重視の路線へと回帰していく。事業用車をクモハ12として復活させたり、飯田線にやたらと力を入れていた1990年前後のJR東海。意外に好きだったんだけどなあ。
 スタルヒン須田寛社長時代の贅沢案件がまた消える

 誰が割高なグリーン車なんて乗るのかなあ、と思っていたら、普通車ともども満席になったらしい。町田までなら400円プラス310円。それぐらいの出費は許容範囲なんだろう。夕方ラッシュ時間帯としても、凄いなあ。さすが小田急
 列車は定刻17:44から少し遅れて発車。
 冬至に近づいているこの時期、さすがに外の景色は期待できません。スマホの電源も切れかけなんで読書に勤しむ。

リクライニングできないグリーン車シートで沼津までまったり

 で、指定券をゲットしたグリーン車。横1列+2列のゆったりタイプ。
 でも、なんだか違うんだよね。最初、一番深い位置までシートを倒していたんだけど、体を動かすと、背面が元に戻ってしまう。
 後ろの人に、すみません、と謝って、もう一度、倒してみるが、やはり体を動かすとリクライニングの機能が効かなくなる。
 車掌がやってくるんで依頼して直してもらう。がたがたと席をゆらすとなんとか戻りはしたけど、2、3分も経てば元の木阿弥。リクライニングストップの機能がおかしい。何度か繰り返すと、

  • 列車の横揺れ振動によって勝手にシートが斜めになる
  • すると、シート回転機能が働いてシートを固定する機能が解除
  • リクライニングできなくなる

という現象だと分かった。シートそのものがダメになっている。これ、以前から調子が悪かったんじゃないの。

 シートや車内のあちこちの箇所にビニールテープがべたべたと貼られて補強されているのも、グリーン車にしては、みすぼらしい。そういや、各シートにあった液晶テレビもどこにも見あたらない。更新の手間とカネを惜しんで撤去されたんだろう。
 20年前に在来線特急の方向性を示すことになった最新鋭車両も今は昔。まともにリニューアルされなければ、ただ老朽化するのみ。更新する意味も意義も資金も見いだせなかったからこそ廃車にされるんだろう。寂しい話だ。
 そうするうちに、町田18:17着。満員だったグリーン車の客も8割方が下車。次の本厚木で残ったのは僕とサラリーマン1人。まともな他のシートに移ることもできたけど、なんとなく半壊状態のわがシートに愛着が出来てしまい、そこに座り続けることにした。

 ヒマなんで車中を見学。マニアの姿もちらほら見かけるが、それでも2、3人程度。正式な廃車やダイヤ改正が発表される前だし、あまり盛り上がっていないのかなあ。まあ平日の夜を行く列車だしあまり気合いは入らないのかも。
 カウンターだとかも閉まっていて、車内のあちこちに剥げや継ぎ接ぎもあって、なんだか非常にわびしい雰囲気が漂っている。3年前に乗った小田急持ち「あさぎり」RSE20000系の方はここまで酷くなかったような。

 先頭車展望部からの眺めを堪能しつつ、席に戻って、一足早い晩飯を食べていたら松田に到着。いつしか小田急線からJR御殿場線に乗り入れていた。

 ついに3号車2階のグリーン車にいるのは僕1人。完全貸切状態で真っ暗闇の御殿場線を行く。
 3号車1階や4号車のグリーン車を歩いても、見事にガラガラだ。指定席からやってきたっぽいマニアが1人撮影しているだけ。まともな客は自分1人になったみたい。
 さすがに、あまりにもヒマだったんで、沼津在住の知り合いにスマホで連絡。東京から京都に帰るのに小田急特急利用中、と伝えると、「小田原まで行くの?」と返信。「いや、沼津まで、あさぎりですよ」と返信すると、やたらと驚いていた。
 沼津の人が東京に行く時でも、よっぽどのことがない限り、「あさぎり」は利用しないらしい。本数が少ないんで、帰りの時間が確定していないケースでは利用する気にならないんだとか。
 まあ、そうなんだろうな。最終17:50というのはビジネス利用としては早すぎる。御殿場だとバスの方が本数多いし、沼津にしても小田原で小田急乗換が定番なのか。20年前にあれだけやる気を示して新宿直通ルートを充実しようとしたけど4往復運転に留まった。逆に言うと、沼津「あさぎり」を20年以上残し続けたことの方が驚くべきことなのかもしれない。
 御殿場1919発。ここから制服を着た高校生や地元の通勤客っぽい人たち+マニア2、3人が乗り込んできた。20人ぐらいお客さんが増えた。30km内なら自由席は310円。13分後にも普通列車は運行されているけど、少しでも早く帰りたかったのか。
 やがて19:43、沼津着。
 下車客は7両あわせて30人ぐらい。新宿から直通してきたお客さんはどれくらいいたのだろうか。

沼津からはホームライナーで静岡へ

 371系の運行はまたまだ続く。ここから沼津20:00発「ホームライナー浜松5号」として浜松まで走るのだ。
 このホームライナーも、学生時代は18きっぷシーズンによく乗ったなあ。乗り継ぎで必要だったからじゃなく、ただ371系に乗りたかっただけ。ホームライナー料金で最新鋭特急に乗れるのが嬉しかったんですよ。


 座席は6、7割埋まった状態で、2000、沼津発。
 十年ぶりぐらいの利用になるけど、今もそれなりに混んでいます。仕事帰り、211系とかのロングシートに乗ることを考えたら、わざわざ僕もこの列車を選択しますよ。通学の高校生や大学生も混じっているというのも昔と変わらない。
 半時間過ぎると、やがて静岡です。20:37着。
 そのまま浜松まで行きたかったのだけど、そこから先の新幹線との接続が悪いんで、仕方なく静岡で下車。21:12発の「ひかり487号」で京都へ向かいます。300系あたり来るのかなあと思ったけど、無印700系。スマホの充電をしたかったのに残念です。
 今日の戦果。
 新宿発松田経由京都行きの乗車券がナイスです。

 あとは、以前、金谷駅で巡り会ってから愛飲している「しずおか茶コーラ」と安倍川餅。これを夜食に京都へと帰りました。
 23:02着だから所要5時間強。東京日帰り出張にしては、充実の帰り旅でした。たまには遠回りもいいものです。
 で、乗車した2日後、ダイヤ改正が発表され、大方の予想通り、「あさぎり」は4往復から3往復に減便の上、御殿場発着に運行区間が短縮。371系の運行終了も発表されました。RSE20000系の廃車も同時に発表されましたが、こちらはもう乗る機会はなさそうかな。300系に関しては別な出帳帰りに偶然乗ることが出来たのですが、それはまた別の話。