ユーラシア大陸の果てでポルトガル唯一のドウロ線SL列車でアイを叫んだマニア。

katamachi2012-10-03

 お久しぶりです。
 公私ともいろいろ忙しい今年。鉄道趣味的なアレもあまり活発じゃないんですが、それでもバックパッカーと鉄道旅行系マニアの血が騒いできます。
 なんで、2012年9月、ヨーロッパへ渡航しました。
 主目的はポルトガル。それと、18年前に行きそびれてから「悲願」としていたサクラダ・ファミリアのあるバルセロナ、です。うちの連れ合いも同行しました。
 市街地をそぞろ歩きするのが大好きですし、古い町はやはり訪ねてみたいですし、ぽけーっと風光明媚な場所もいいんですが、やはり鉄道趣味的な要素も盛り込みたい。
 ポルトガルで僕的に押さえておきたかったのは、次の三点でした。

ポルトガルに来た鉄道マニアなら絶対やっておきたい3つの列車

でした。
 「ルシタニア」号は両国を結ぶ唯一の国際寝台列車広軌&連接車タイプの車両で、1両の長さが12mほどのタルゴ車両。イベリア半島の鉄道は初めてなんで新鮮な驚きがありました。


  「リスボンの市電&ケーブルカー」に関しては、正直、以前はあまりイメージがなかったのですが、数年前、マスター
カードのCMを見て引き寄せられたんですよね。例の「プライスレス」のCM。
 夜のとばりが降りた町並みをいく白と黄色の車両は魅惑的でした。
 そして現地。
 多くのリスボン市電は複線なんですが、旧市街で坂のきついところは極端に道が狭くなるんで、単線分しか場所は確保されていません。しかも、道の形状に合わせて急カーブと急勾配が連続しています。
 そんな線路の脇の停留所で夜に食事をしました。こちらの希望で市電が見える特等席に座りました。
 目の前は停留所。わずか5m前が線路です。凄く狭い路地なんで、ホームも案内板もない特設乗り場です。
 タコのリゾットにサンマの塩焼き。ごーごーと行き交う白と黄色の路面電車の行き交う姿を見ながらの晩飯でした。
 黄昏から夕闇が迫り、やがて夜へと代わりつつあるひととき。南欧らしい建物に挟まれた乗り場にも家々の光が照らされます。帰宅を急ぐ地元の女性たち。

 いやあ、本当にすてきな世界でした。

ポルトガル唯一の蒸気機関車列車の前でアイを叫んだマニア。

 今回の行程は以下の通り。

 そして最終目的地は、ポルトガル第二の都市ポルトから急行で2時間ほど行ったレグアReguaから発車する蒸気機関車列車です。
 ドウロ川流域はポートワインの原産地であることもあり世界遺産にも登録されているエリアです。観光地としての町おこしも盛んで、1999年頃からSLの観光列車の運転も始まりました。
 以前からずーっとその存在が気になっていたんですが、運転は、基本、土曜日のみ。二つの週末使って旅する旅行者には飛行機の関係上、難しい行程です。
 今年はそれもクリアーして、バルセロナから列車を乗り継ぎ1400km。ついにユーラシア大陸最西端のポルトガルの、さらに奥地にある町へたどり着きました。9月22日のことです。
 さあ、おめあての蒸気機関車は……と待ち受けていると、



















 えーと、青い機関車。煙突がついていません。
 なんだか給油口とホースが繋がれていますよ。というか、石炭はどこ?

 結果的に言うと、列車を牽引するため準備されていたのはディーゼル機関車でした。
 「ポルトガル蒸気機関車列車に会いたい」
と8年前からの悲願はもろくも崩れ去ってしまいました。

 
 実は、このこと、関空を出る前日の夜に知っていたんです。
 ポルトガル国鉄の「ヒストリアトレイン」のページを再確認しようとHPにアクセスすると、

 The historical train trips will be made with a Diesel locomotive that has been carefully restored to its original 1967 colours. This alteration is due to a strike by train drivers.
http://www.cp.pt/cp/displayPage.do?vgnextoid=c321c75682031210VgnVCM1000007b01a8c0RCRD&lang=en

とあるんです。要は、運転士のストの影響で、手間のかかる蒸気機関車の運転を止め、ディーゼル機関車の牽引に変更した、と。ポルトガルの国家財政がかなり深刻化している、その影響なんでしょうか。そういや、リスボンの市電とかも本数は少なかったなあ。
 ただ、1967年のオリジナルカラーになっていようがなんであろうが、SLじゃないんだなあ。これが。
 「嘘だろ」。かなり……ショックな話でした。もうチケットは取っているんだし。
 で、ポルトガル国鉄ポルト駅できっぷを買ったときに尋ねても、なんか職員はよく知らない模様。仕方ないから現地へそのままに来たんですね。
 この青いディーゼルは客車の回送のためにやってきただけで、そのうち蒸気機関車がどこからか現れるんじゃないか。
 きっ、そうに違いない。どこかで準備をしているんだよ。
 そうあって欲しい。そうじゃないと困る。
 という期待もむなしく、ホームに客車ごと回送されていきます。客を乗せて準備完了。

 他のお客さんも、みんな「アレ?」って表情をしています。そりゃ、蒸気機関車ディーゼル機関車。明らかに別物です。「スチームはどこだ。なぜ来ないのか」と、僕みたいに鉄道職員に尋ねている人もいる。
 圧倒的に世界遺産とワイン目当てのフツーのお客さんばかりです。みなさん、一応、カメラを持って先頭で青い機関車を撮影するんですが、手持ちぶさたのようです。2、3枚撮ったら、すぐ自分の席へ。
 煙も蒸気もないし、見た目も何もかも違う。楽しさも段違い。テンションが上がらないんですよね。
 発車時間が過ぎても、反対列車の到着待ちでしばしホームにたたずんでいるのですが、誰も外に出ようとしない。DLも半世紀前のやつだとしても、SLの魅力に勝てるはずもない。ここらは保存運転の難しいところです。
 そして終点まで往復3時間。風光明媚なところでした。ワインの町っぽい雰囲気も興味深い。ポルトガル特産のアズレージョのタイルに覆われた駅舎も魅力的でした。
 ただ……牽引機はディーゼル機関車。すみません。僕自身もテンションがだだ下がりでした。ただ、淡々とポルトガル最後の列車の旅を楽しもうと努力はしました。ああ、廃線跡とか踏査してみたり、1000mmのメーターゲージの支線と1668mmの広軌との接続部分の造り感心したりとか。別な楽しみを探していました。
 ちなみに、肝心のSLはレグア駅構内の外れの車庫で眠っていました。トホホ

 とまあ、8年越しの悲願は潰えました。まあ、この1件は別にしても、ポルトガルがいいところであるのは確かです。特に、リスボンの市電。また別な形で報告したいと思っていますが、それはまた別の話。