「鹿島鉄道線の運行事業者を募集します」の〆切は今日。

 茨城県の石岡〜鉾田間を結ぶ鹿島鉄道の廃止のタイムリミットが迫っています。
 関東鉄道の一支線であった80年代から旅客減が顕著になっていました。1979年に独立して鹿島鉄道となったわけですが、同じ時に分離独立した筑波鉄道は1987年に廃止になっています。北関東は他地域と比べてもマイカーの普及率が高く、鉄道経営は難しい環境になっています。
 それでも親会社の関東鉄道からの支援で支えられていたのです。しかし、航空自衛隊百里基地への航空燃料輸送が2002年に廃止されて貨物事業が立ちゆかなくなった上に、2005年の「つくばエクスプレス」開業によって関東鉄道グループの鉄道や高速バスの経営は打撃を受けてしまう(常総線25%、高速バス75%減)。社員の賃金最大30%カットも行われた。そして、2006年に入って鹿島鉄道への支援カットが明らかになり、茨城県や沿線の自治体の支援もままならない。このままでは2007年3月末での廃止が確定してしまう。
 そんな時、鹿島鉄道対策協議会のHPに「鹿島鉄道線の運行事業者を募集します」という項目がアップされました。

「鹿島鉄道線の運行事業者を募集します」

平成18 年11 月27日
鹿島鉄道対策協議会
鹿島鉄道線の運行事業者を募集します
茨城県石岡市鉾田市を結ぶ鹿島鉄道(単線・延長27.2km)は、平成19 年3 月31 日限りで廃止される予定であります。このため、鹿島鉄道沿線の石岡市小美玉市行方市鉾田市及び茨城県で構成する鹿島鉄道対策協議会では、鹿島鉄道線を存続させるため、鹿島鉄道株式会社に代わって、鹿島鉄道線を運行する事業者を募集します。
(中略)
3.募集の条件等について
(1)少なくとも、鉄道施設は事業者が所有すること。
(2)第1種鉄道事業者となること。
(3)沿線市及び県等は今後5年間の運行に対して総額6.5億円を限度に、経営支援、近代化補助を行う
(4)その他の運行条件等については、別途協議

 当該ホームページの「平成18年度 第3回対策協議会資料」「平成18年度 第2回対策協議会資料」を見ると、以下のような議論が行われているようです。

  • 自治体の財政状況を踏まえ、第三セクター方式や上下分離方式は考えない
  • 経営支援は今後5年間で6.5億円
  • 鹿島鉄道からは経営を断念せざるを得ない、鉄道事業継続の意志はないと回答
  • それゆえに鉄道事業を求める団体の公募を行う

 これを見ている限り、地元の負担は最小限に抑えようという意志が伺えます。せめて上限分離ぐらいは検討しないと……と思うのだが、親分の茨城県が積極的に介入しないと難しいでしょう。
 鹿島鉄道は5年分の経営支援の数字として11億円という数字を上げたにもかかわらず、なぜゆえに3.5億円も支援額を削減して、6.5億円でも問題ないとするのか。自衛隊通勤客の増加、中古車両の検討、基金の受け入れでまかなうようなことを委員がコメントしているが、現実性のある数字ではないと思います。というか、地元高校生や石岡南台住民ら外野のサポーターの熱心な活動に比べると、自治体のこの冷淡さは対照的です。議事録を見ている限りも人任せの雰囲気が漂っています。
 日本のローカル私鉄の公募は日立電鉄南海電気鉄道貴志川線の2例があり、このうち貴志川線は和歌山電鉄(和歌山電鐵)が引き継いだわけです。でも、和歌山は一応県庁所在地ですし、やりようによっては勝算があったところ。それと比べれば、鹿島鉄道の方はかなり大変なようです。議事録やその他のところを見ている限り、岡山電気軌道DMVへの期待もあるようですが、ちょっとそれは無理なような……
 応募期間は「11 月27日(月)から12 月11 日(月)」とあります。さて、どこか手を挙げたのでしょうか。 と思っていたら、

鹿島鉄道、廃線の危機 継続めざし住民らが新会社 
asahi.com、2006年12月11日

 廃線に反対する市民団体「『鹿島鉄道』存続再生ネットワーク」(長谷川功代表)は応募に向け、11月から会社設立に取り組んできた。 だが、課題は多い。資本金は最低目標の1億円に対し、現時点で出資の確約がとれたのは、約7000万円ほど。鉄道施設や技術者は鹿島鉄道から引き継ぐ意向だが、同鉄道は「具体的な交渉は審査を通ってから」との立場で、先行きは不透明だ。
(中略)
 公募には今のところ、東京の旅行会社も名乗りを上げている。ただ、「市民団体と連携したい」としており、再生ネットの行方が存廃を左右することになりそうだ。

 うわあ、またTPOが出てきたのか……。いろんな意味で鉄道マニアの間では有名な団体です。ああ、またマジメな人たちを巻き込んでしまうのか。とほほ。彼らについても何か語りたかったのですが、それはまた別の話。