"鉄道本"発刊ブームで玉石混淆の書棚から名作を見つけてみよう。

katamachi2007-01-21

 2000年ぐらいを境にして、鉄道本発刊ブームというのが続いている。鉄道書を専門に取り扱う本屋へ行くと、月に十冊以上の新刊が平積みされている。その手の書籍が激減していた90年代前半と比べるとウソのような状況である。その背景には、

  • 鉄道本は1万部を超えるほどバカ売れはしないが、手堅い部数が見込める。出版不況の昨今、貴重なジャンルである。
  • SLブームやブルトレブームを支えた層が徐々にマーケットに戻りつつある。

という状況がある。鉄道雑誌では見たことのないライター、聞いたことのない出版社の手による作品も多い。名の知れた出版社も触手を伸ばしてきている。
 ただ、鉄道本の点数は増えても、マーケットが広がっているわけではない。小さなパイを食い合っているというのまた事実である。
 しかも、新規に発刊される書籍は「〜がわかる本」とかいうような謎本、あるいは鉄道にまつわる豆知識を羅列した入門書がほとんどである。既存の本を器用にまとめてはあるが、著者が取材・執筆に汗をかいた形跡がない、お手軽な造りの本も少なくない。新規の情報や視点はないし、正直、鉄道趣味を支えてきたコアな層にとっては、どうでもいい本ばかりが目につく。まあ、これだけ類書がたくさん出てくれば、手垢のついていないジャンルでアピールするのは難しい。
 そんな中でも独自の立ち位置を示してくれている著者が少なからずいる。そうした志ある作品をここで紹介していきたい。