ノスタルジィ中年と自爆テロ

katamachi2007-08-25

 ちょうど1ヶ月前の時期遅れの話題です。
 先月、ごく一部のオタク・サブカルウオッチャーの間で話題になっていた「“ノスタルジィ中年”が跋扈! 老害化が進むオタク論壇の憂鬱」はどうなったのかなあと検索してみたのですが、あれから1ヶ月経ってもほとんど話題にならなかったようですね。29歳のライターさんは、「80年代ノスタルジィ文化圏(シャカイ派)」と「90年代ノスタルジィ文化圏(セカイ系)」の連中にケンカを売ったのでしょうが、当事者たちからは黙殺されています。ネタにしてくれたのも2、3人。ちょっと気の毒なぐらいです。

サイゾー 2007年 08月号 [雑誌]

サイゾー 2007年 08月号 [雑誌]

 この原稿の趣旨は、

  • オタク業界の中年化
  • 「自分のノスタルジィに浸る」ことを優先し、「今」に向き合っていない
  • 10年前のエヴァブームの時には、オタク第1世代・第2世代と第3世代の対立があった
  • 今は30歳前後のエヴァ世代のファンが最も醜悪なノスタルジィに浸っている
  • 「ノスタルジィを公共のメディアで垂れ流す中年どもが一掃されて初めて、作品の魅力は正しく紹介され得るのだ。」

ということらしい。
 要は「オレたちにも発言権を与えろ」ということでしょうが、この2ページの原稿を読んで、さらにこの著者の方のホームページや同人誌、あるいは雑誌への寄稿に手を出そうとは思いませんでした。
 表面上は過激な言葉で彩られているのですが、こういう愚痴や不満は別にオタク論壇だけではありません。年功序列に苦しむ?クラブ活動の中高生たち、会社の歯車となるサラリーマンたち、選挙の後も大変な政治家たち……etc、いろんな場面でサカナにされている話と全く変わらない。あまりにもありきたりの主張なんで、当のノスタルジィ中年としてもどう反応すればいいのか困ってしまう。それだと話が全く広がらないんですね。戦略的には完全に失敗だと思います。
 となると、読者のツッこみ所はp.71にある「最新オタク・マスコミMAP」とその隣のコメントです。

 ……もう要約するのに疲れました。この著者、どうも四象限のY軸に近い作品がお好みと言うことだけは分かりました。最近のナウなヤングにバカ受けなのって、「ファウスト」、「大塚英志」、「ハルヒ」、「桜庭一樹」、「角川スニーカー文庫」なんですね。そして世界の中心でアイを叫んでいるのはご本人……って、やっぱこのマップってシロウトっぽいギャグのネタ*1、あるいは偽悪的なポーズにしか見えないなあと思うのですが、それはまた別の話。
 昨晩、ヒマ潰しに、このマップのうち自分の理解できるジャンルだけでも表にしようと作図し始めたのですが30分で飽きました。親切にもスキャナーで読み取ってアップされている方がいるのでそこで確認してみてください。

追記

 当事者の反応をメモ書き。
「このマップのステキさは、分類しにくい人は敢えて入れてないところ」永山薫の音楽日記
「コロス、とか言ってるw」伊藤剛のトカトントニズム
岡田斗司夫氏 大学の講義調で「オタク」周辺の現在思うところを語る。まず当然のごとく「オタク業界の闇」と銘打たれたサイゾーの件に触れる。」からくり旅団日誌
※講演での発言をまとめたものであることに注意。http://b.hatena.ne.jp/entry/5483547も参照
「セカイの中心にいるのにな!……というような話はまったく出ず」nozomi Ohmori SF page
 まあ、「先の世代は何も分かっていない」というこの手の話。オタク系の世界にいる人間なら、みんな若い頃に一度は同じようなことを喚いてきたものです。自分たちの歩んできたのと同じ話が繰り返されているだけだし、「またかよ」と苦笑いしかできないんだよなあ*2。本気で勝つ気なら、先人と同じ土俵(価値観)でガチンコでぶつかるか、別なジャンルで際だったところを魅せていくか。それしかないと思う。ガンバレ、宇野常寛。今回は不運だったけど、まだチャンスはどこかに転がっているよ。次はいい記事を書いてください。

*1:もちろん悪い意味で

*2:私なんかも13年前に書いた文章のことで、いまだに某会の某氏に恨まれているらしい……鉄系の人って批判に弱いからなあ、まあいいや