北海道で鉄系の旅をしながら歩いた(その2) DMVをついに試乗したゾ

katamachi2007-10-05

 この日は、浜小清水→藻琴間で運転されているDMV乗車がメインの日でした。で、午後は、一日下り3本、上り1本しか停車しない、もと仮乗降場だった生野駅へ。一駅降りるのに半日をかけるって一体……
2007-10-04 北海道で鉄系の旅をしながら歩いた(その1)

オトコは黙ってDMV(デュアル・モード・ビークル)に乗ろう。

9月22日(土)

  • 目が覚めたのは6時前。今回の旅で最大の目的としているDMVの網走駅発は8:10となっておりまだ時間がある。そこで石北本線6:32発で一駅、下車駅を増やしていくことにした。以前、ここではDMVの実験をやっており(2005年10月)、その痕跡を見たかったのだ。到着は6:56着。ホーム一面、小さな待合室一つという北海道の典型的な無人駅だった。
  • さて、どこでDMVの実験をしていたのかな……と探していると、近くにある農道(町道?)と駅を結ぶ砂利道の石が真新しいことに気付いた。それを網走方面に歩いていくと、なんとなくそれらしい痕跡を見つけることができた。道路と線路を結ぶ砂利を敷き詰めて、線路上に板版を置くだけ。意外に簡単な構造なんだと実感。
  • この西女満別駅と女満別空港は直線距離で1kmなんだけど、その連絡を考慮して道路が敷設されていないので実際の道路距離は2km以上あった。昨年、空港でクルマを借りた際、カーナビで西女満別駅を探そうとしたんだけど、検索マップからロストしてしまっていてそのまま通過してしまった。その前に、空港のカウンターで駅の場所を聞いてみたんだけど、その存在自体、認知していないらしい。関係者は北見と空港を結ぶルートでDMVを運転してみたいと模索しているようだけど、ホントに需要はあるのだろうか。

  • 網走駅に8:04着。さっそく駅前広場で待っている「DMV1号」に乗り込む。すでに明らかに同業者にしか見えない人たちが車両を囲んで撮影タイム。青空に黄色い車体が映えている……カッコイイ。特に連結器を収納している先端のノーズ部分がイイ。出発前になると、路面区間を行く網走バスの運転手さんが一声をかけて乗客を集める。網走から乗り込んだのは客10人+運転士さん。出発は8:10。

  • 釧網本線沿いの国道をそのまま進み、浜小清水駅の西側にあるキャンプ場踏切で線路を跨ぎ、駅構内の海側にあるDMV発着スペースに至る。8:40着。出発まで30分ほどあるので、ここでしばし待機となる。ちょうどサケが遡上している時期であり、それを狙う釣り人と業者(たぶん漁業権はなさそう)で止別〜北浜間の海岸は釣り竿で埋め尽くされていた。駅裏にはいくつもテントが構えられている。そんな人たちもさすがにDMVは珍しいらしく、わらわらと集まってくる。8:52に釧路発の列車が到着。
  • 9:00になるとJRの職員がやってきてDMVの点検を始める。鉄板の上に車体を載せて、そこでタイヤ&鉄車輪の点検を行うのだ。ジャッキアップして鉄輪が下がり、車体が持ち上がっていくと、周囲の観客から「おおっ……」とどよめきが起きる。10分ほどで点検は終了。



  • 9:15分にJRのガイドさんが現れて利用者を招集する。乗客12名+JR運転士+バス運転手+ガイドさんの計15名が乗車する。もともと29人乗りのマイクロバスなので席の余裕はあるはずなのだが、鉄道車に乗り慣れた身からしてはなんだか狭苦しい。ちなみに定員が少なめに抑えられているのは、鉄輪や各部品を搭載させたため道路をバスとして走る際の重量制限をオーバーしてしまったから。乗客数を減らして対応しているらしい。

"鉄道"として走るためのモードチェンジには意外に時間がかかる

  • 定刻9:19に発車。砂利道を進み、先ほどのキャンプ場踏切付近に戻り、むかしの貨物側線跡に増設された"走行モード切り替え装置"の上で停車する。ここでバス→JRに運転士が交替。ボタンを押すとバス車体が徐々にジャッキアップされていくのが乗客でも実感できる。モード転換は10秒程度で終了。
  • この後、装置脇に設置されたプレハブで待機している別の職員が釧網本線の信号を管理している部署と連絡を取りながら、DMVが本線上に進入するための準備を行っている。浜小清水〜藻琴間の閉塞が完全にDMVオンリーとなることを確認しているのだ。その間、5、6分。一般の鉄道車両、そしてDMVが同一のレール上を使用する際、これまでの信号システムでは対応しきれないという。本格導入のための最大の障壁となっているらしい。ちなみに浜小清水駅と藻琴駅との施設脇にプレハブ小屋が設けられて、信号&ポイント担当の職員が一人ずつ配置されている。

  • 9:28、ようやくDMVが動き出す。鉄輪の響きと感触に、またもやどよめきが起きる。構造上は2軸のレールバスなんかと同様であるのだが、走行速度が時速45kmに抑えられているからか意外に乗り心地は悪くない。原生花園駅を通過する際にはたくさんの観光客がポカーンと口を開けてこちらを見つめていた。あまりにも突然に派手な塗色の物体が現れたというのもあるのだろう。「鉄道の上にバスが走る……」そんな予備知識を知らずに初めて遭遇したらかなりの衝撃だったと思う。

  • 9:49に藻琴駅着。本線の脇の側線に入って、再び"走行モード切り替え装置"の上で停車する。今度は2分ほどでモードチェンジは終了し、砂利の先にある仮設"踏切"の前で停車。ここでJR運転士は下車していく。10:11発の快速「しれとこ」に乗って釧路支社へ戻っていくらしい。ちなみにJR運転士の勤務体系は、釧路9:05発快速→浜小清水→12:09発「DMV2号」→14:53発「DMV3号」→網走泊→浜小清水9:19発「DMV1号」→釧路12:05着という風になっているらしい(ガイドさんの説明による)。

  • 9:52に出発。ここからはバスモードで藻琴湖と濤沸湖沿いの道路を観光していく。日本国内で団体のツアーバスに乗るのって何十年ぶりのことなんだろう。なんどもクルマで移動したことのある道ではあるが、ガイドさんが気さくな方で意外に楽しめた。藻琴湖脇のサンゴ草はちょうどピークだったらしく赤色の花で湖畔が埋め尽くされていた。能取湖のより色づきはいいらしい。4〜6月は国道244号の走行のみ、7〜9月は藻琴湖と濤沸湖沿い、10〜11月は藻琴地区内陸部を走行することになる。冬季の運行は行わないとのこと(客を乗せての運行にやや不安、現在のDMVのスジとノロッコ号のスジが重なっているから...etc)。
  • くるっと周遊してから10:28に浜小清水駅に到着。最初に止まっていた駅構内側の空き地に停車する。1時間強の旅は終わった。
  • DMV団体臨時列車となっており、浜小清水→藻琴間にはそれぞれ列車番号が設定されている。DMV1号は9302D、DMV2号は9304D、DMV3号は9306D。記名式会員券に加え、知床斜里駅発券の契約切符(浜小清水→藻琴の鉄道)とバウチャー券(藻琴→浜小清水のバス)が配布される。乗車後、記念に貰えるのだけど、ガイドさんが一枚一枚に「無効 知床斜里駅」という無効印を押すのが笑えた。
  • DMVについての感想は2007-08-31【7】線路にバスを走らせろ 「北の車両屋」奮闘記を参照。個人的にはいろいろ考えはありますが、なにはともあれ"デュアル・モード・ビークル"という異形の鉄道車両を開発してくれたJR北海道には大感謝です。

午後は生野駅に降りることだけのために全てを費やす

  • 到着後、オレカ収集のため知床斜里駅へ。浜小清水11:07→11:25知床斜里12:37→13:24網走13:29→「オホーツク6号」→15:14遠軽と移動。なぜか指定席が満席だったので網走駅で自由席に行くと、大学鉄研の後輩2人と遭遇。しばし歓談する。北見でDD51+コキ、生田原DD51+ホキ、安国でDD51+コキと列車交換。ああ、北見でタマネギやジャガイモが収穫される秋期に運転される臨時貨物列車はもう動いているんだ。
  • 遠軽からは、遠軽16:34→16:49生野18:05→18:12生田原18:48→と移動し、石北本線上川以東で唯一(あっ、呼人には降りれなかったんだ)未降だった生野駅を訪問する。安国駅では10人ぐらい高校生が降りていったが、生野駅の利用者は私以外誰もいない。
  • ずーっと降りられなかったのには理由があって、下りは3本、上りは1本しか停車せず、鉄道だけで効率よく乗り降りしようとするなら遠軽16:34発で行くしか他に方法がない。ホームが一面で長さが20m以下、かつ板張り……ということなど、さすが元仮乗降場だっただけはある(1946年開業)。周囲で農作業をしている人たちも少なくなく、家も何軒か見えるのであまり"秘境駅"というイメージはないけど、こうした畑作地帯の姿もまた北海道らしさの一つである。上り回送気動車(生田原遠軽 先ほどの折り返し)、快速「きたみ」の通過を待って、すっかり陽を落とした木製ホームにキハ40がやってきたのは18:05になってから。


  • ちなみに歩いて2分の国道沿いに北海道北見バスの"豊原54号バス停"がある。遠軽発北見行きは7:47、11:06、15:17、17:31発。北見発遠軽行きは7:51、11:41、15:37、18:41のそれぞれ4本。鉄道駅の側にあったというバスの廃車体を使った待合室は撤去済みだったが、バス停の方には立派な建物があった。
  • 生田原駅では隣接する生田原温泉(ホテル ノースキング)へ向かう。自治体系団体が運営しているホテル併設の温泉施設だ。源泉は16.3度とあるからどーみても加温しているなあ。底を見れば循環もしている。典型的な"平成温泉"という感じだけど、お湯はぬるぬるしてゆっくりしてみたい。けど、折り返しの特急の発車時刻が迫っているので早々に退散。踏切の音が聞こえてきたのでホームまでダッシュする。18:48発「オホーツク8号」4両はガラガラだったんで4席分を占有して爆睡するが、旭川の手前で車掌に起こされてシートを元に戻す。ここで大量に乗車があって自由席では立ち客も出た。夜間帯に旭川から出る特急って増発する必要あるかも。
  • 札幌駅前のコンビニで晩飯を仕入れて、23:05発の「はなたび利尻号」(5両)で北上する。昨春の改正で23時発の特急が増発されたので自由席はガラガラ。2両で5人というのはかなり侘びしすぎる。