公共交通施策に熱心な富山市と高山本線の臨時駅
このたび、富山市から社会実験の一環として要請のありました高山本線 速星・西富山間の臨時駅設置について、北陸信越運輸局長に対し鉄道事業法に基づく事業基本計画の変更届出を行いますのでお知らせいたします。
JR西日本ホームページ。高山本線速星・西富山間臨時駅設置
おお、社会実験の延長として臨時駅まで造りますか。1985年に期間限定で設定された「α列車」を思い出します。昨年秋から高山本線の区間運転列車の増発にも取り組んでいたけれど、新駅まで設置しようというのは、市内域の公共交通の拡充に本気に取り組んでいくと言うことでしょうか。
期間は2008年春〜2011年春の3年間。ホーム長は20m、上屋は5mとかなり簡易な施設ですが、まあ最初はこんな程度の施設で十分ですよね。最近、やたらと立派すぎる新駅が多いですが、確実に客が増えてから設備を拡張していけばいいと個人的には思います。80年代後半に国鉄やJRが設置した駅ってそんなホームばかりでした。<参考>2007-03-29 JRが造る新駅の建設費を調べてみました。
ちなみに場所は富山市婦中町西本郷。Yahoo!マップでみると、ここらへん。西本郷工業団地と富山イノベーションパークのある付近です。 で、関連する新聞記事がないかと探してみると、北日本新聞社のサイトにありました。
富山市とJR西日本は来年三月にも、JR高山線の西富山−速星駅間の同市婦中町西本郷地区で、新駅を設置する。設置場所は富山イノベーションパーク西側の隣接地。大勢の見学者が訪れる北日本新聞社の制作拠点「北日本新聞 越中座」(同市婦中町島本郷)をはじめ、周辺には西本郷企業団地、新興住宅地があり、駅設置をJR高山線の利用拡大の起爆剤としたい考えだ。費用は全額、市が負担する。ホームや駐輪場、広場の整備などで九月補正予算案に一億四千六百万円を計上する。
婦中に高山線新駅 来年3月にも設置、北日本新聞2007年08月25日*1
注目点は以下の3点。
- 利用状況によって存続を検討する
- JR西日本がホームを整備し、市が駐輪場や車が進入できる交通広場、安全柵を設ける
- 市のアンケート調査では、一日あたり180人の新規利用者が見込まれた
う〜ん、地図を見ている限り、新駅の周囲って工業団地が広がっているところなんですね。近くにはあまり住宅がないし、最大の顧客は富山イノベーションパークか。富山県、富山市がやっている研究型工業団地のアクセスとして新駅をみなしているということか。工場系の施設への通勤客って、大都市でも地方でもあまり公共交通機関を利用してくれないんですよね。1.5億円の経費を投じてやるにはあまり成果がなさそう。もっと住宅街に隣接しているエリアに新駅を設けた方が如実に効果が出てくると思いますが……どうなんだろう。
それより気になるのは、
実験開始後の昨年十一月から今年三月末までの利用者は三十九万三千人。前年同期比1・3パーセント増と微増にとどまっており、新たな需要掘り起こし策として、越中座近くでの新駅設置案が浮上した。
という件。富山〜猪谷間で運行本数を5割増したのに利用者は前年同期比1.3%増か……社会実験の"成果"と言うには寂しすぎる数字です(「富山市へ440万円返還 JR、高山線増発実験で」北日本新聞、2007年05月02日」も参照)。なにが問題だったのか、どう改善していけばいいのか。富山市役所内で事業評価はきちんとされているのでしょうか。
富山市長のトップダウンで公共交通を整備する施策が展開されているのは注目すべきだと思います。富山ライトレールが有名になりましたが、その他にも2007年10月から始めた公共交通沿線居住推進事業なんて、もっと全国ニュースでも取り上げられてもいいプロジェクトだと思います。「鉄軌道の駅から半径500m以内」、「バス停から半径300m以内」の範囲に個人向け住宅を建てるときに30万円、共同住宅だと70万円を補助する……というこの仕組みが本当に意味があるのかどうかは分かりませんが、かなり意欲的な施策であるというのは確かです。
ただ、理念が先行し過ぎて、性急に物事が決定されていくのにはやや疑問を感じます。アンケート調査で180人利用者が増えるという数字が出たから新駅を造ってみた……って、たとえ臨時駅とはいえそんなに簡単に1億4600万円も投じていいものなんだろうか。きちんと周辺施設の利用者のトリップを確認して決定したのだろうか。
あと、どーでもいいけど妙にツボに入った富山市ホームページの記事をもう一つ。サザエさんが訪ねる富山の観光地等について。2007.10〜2008.3の毎週日曜日午後6時30分、フジテレビ系列で「サザエさん」のオープニングで放映されるらしいのですが、そこに富山ライトレールも出てくるとか。いつからか「サザエさん」のopの画って、「裸の大将」や「男はつらいよ」、「水戸黄門」みたいに全国行脚しながら観光地を旅し続けるという形態になっています。へー、「サザエさんが訪ねる富山の観光地等について」と、わざわざホームページで広報するほど大きな存在になっていたんだ.....と変なところに感心してしまったのですが、それはまた別の話。