楽しい大井川鉄道へのマニア的関心

katamachi2008-01-23

 この週末は、"青春18きっぷ消費の旅"で静岡県大井川鉄道に行ってきました。
 1月19日は寝坊したのと洗濯していたので、家を出たのは15時過ぎ。東海道本線を東征し、安城駅より東にあった未乗降駅11駅を訪問。鷲津駅というちょっと地味すぎる駅で、国鉄・JR3000駅訪問を突破してしまいました。東横インに泊まった後、20日大井川鉄道金谷駅でフリー切符を購入。ここでは大井川本線を中心に11駅訪問。神尾駅で私鉄2600駅訪問を突破しました(最終的に2610駅)。
 もう一つ楽しみだったのは在阪私鉄中古車&昨年再登場したC56-44の乗車ですね。大井川鉄道。確かに鉄道マニアの間ではもちろん超有名な会社です。楽しみ方は下の三つ。

  • 1976年に日本初の本線上での動態保存運転を始めるなど蒸気機関車の運行に熱心。今でも稼働機は4両
  • 各地の大手私鉄の中古車がよくかき集められてきた。今は関西大手の近鉄、南海、京阪の元特急車が集結*1
  • 雰囲気のいい駅がたくさん残っている。ロケ地として活用してもらうべく駅舎のリニューアルも進む。硬券切符や委託駅もまだまだ残る


 人口の多い地域を走っているわけでもなく、メジャーな観光地があるわけでもない。でも、親会社の名鉄から招かれた白井昭を中心に、手作り感覚の観光鉄道として再生されていった。その取り組みについて高く評価をする人が多いし、鉄道に関心の薄い一般層なんかにもある程度は知られていると思います。「裸の大将」などテレビや映画のロケ地としてよく使われていますし、テレビSL列車や井川線は旅行会社のツアーなんかにも組み入れられています。
 ただ、あまりにもメジャーになり過ぎて、マニアとしてはちょっと近寄りがたい……という天の邪鬼な気分が自分にはありました。なにもいまさら、まあいいやという感じでしょうか。
 でも、やっぱり何か気になる会社なんです。

川根路を行く在阪大手の中古特急車たち

 とにかく、ここは大手私鉄の中古車天国ですね。
 以前、90年代に行ったときの主力は西武351系や名鉄3800系、北陸鉄道6010系・6000系などでした。その前年に見た小田急3000系は解体された後でした。伊豆箱根の電車もあったっけ。地方私鉄によく転用されている東急電鉄の車両はここでは見かけないけど何か事情があるのだろうか。ともあれ、基本的には名鉄&西武系の私鉄車でやってたはずなのです。
 ところが、90年代後半、

と在阪大手の中古車が集められました。本来、南海車だけで統一するとかした方が効率的なのでしょうが、相手の廃車のタイミングもあるし、なによりいろんな種類の電車を走らせた方が華があるという大井川側の判断もあったのかもしれない。かくして、80年代の関西私鉄を知るものには懐かしいメンツばかりが川根路を稼働するようになりました。




 上から南海21001系、近鉄16000系、近鉄421系、京阪3000系の各車。
 もと京阪線沿線住民としては京阪3000系を見たかったのですが、私の回った20日は、ただいま全検中とかいうことで新金谷の車庫で眠っていました。
 代わりに定期運用に入っていたのが近鉄421系。冷房が付いておらず車体もかなり古いので永年、予備車扱いになっているらしいのですが、京阪3000系近鉄16000系1本が検査中で他に予備がないというので、千頭7:08→8:21金谷8:33→8:37新金谷→入庫……というスジに入っていました。新金谷駅ですれ違うことができたのはラッキーだったのかも。
 その後、昼間から夜にかけての近鉄車と南海車が2本ずつ、金谷〜千頭間を往復するというパターンで運用に入っていました。これ目当てで来られている家族連れもいて、次が南海車だと分かると、「いやだあ、近鉄に乗りたい!」と小さなお子さんが泣きわめいていました。たぶん近鉄沿線からわざわざ来ていたのでしょう。
 ちなみに車内で会ったある利用者の方によると、地元で一番、人気があるのは有料特急車だった近鉄16000。冷暖房の利きが良いし、シートがいいのがポイントとか。あと、評価がいまいちだったのが京阪3000系。とにかく冬だと寒いんだとか。「故障して車庫にいったらしいし、もうダメなんじゃないの」とかおっしゃっていましたが、一応、新金谷では改修工事してもらっていましたよ……

タイ時代の塗装に模して昨秋復活したC56-44

 大井川鉄道のウリはなんと言っても蒸気機関車。現在稼働できるのは、

  • C10-8
  • C11-190
  • C11-227
  • C12-164
  • C56-44

の5両。このうちC12はナショナルトラストの所有ですが、ATSに対応できていないので現在は実質的には運休中。相棒のオハニ36形たちは家山駅で留置していました。あと、C11-312は昨年で運転を終了しています。
 私の行った20日は冬ダイヤなので、スジは、金谷11:48→13:12千頭14:58→16:25金谷の1往復のみ。動いていたのはC56-44でした。
 1936年に製造された後、戦時中に軍部へ供出され、タイとビルマを結ぶ泰緬鉄道で稼働していました。戦後もタイ国鉄で稼働していたのですが、その後、日本に返還され大井川鉄道で動態保存されることになります。ボイラーの調子が悪くで一時期休車となっていたのですが、他のC12のものを再利用した上で、昨年秋から再び本線上を走るようになりました。この機関車、面白いのは、

  • タイ時代をイメージした塗装にされている。ボイラー部は深緑系に塗られている
  • デザインも現地でのものを踏襲。足下には、タイで使っていた牛よけ(カウキャッチャー)を装着
  • 炭水車にはタイ語が書き記されており、先頭と横には"735"という番号は付けられている

の三点。"数奇な運命を辿ってタイから帰ってきた蒸気機関車"というイメージを前面に出しているようです。
 行きは下泉駅から乗り込むことにしました。トンネルを抜けてやってきたのは、C56-44+旧型客車4両、お尻にE102を繋げています。E102は大井川鉄道オリジナルの電気機関車千頭駅での入替用に使われるためです。
 指定されたのは4号車のオハフ33-215。ちょうど団体さんが下泉で降りたのでガラガラになっており、私1人で占有できました。天井の室内灯が白熱灯となっている唯一のタイプで、ニス塗りされた内装と共に、古き良き日を彷彿させるように旅情を掻き立ててくれます。



 水不足で水量の乏しい大井川に沿いながら20分ちょっとで千頭駅に到着。ホームに降りると撮影タイムです。団体さんとか家族連れとか鉄道マニア(でも数が少ないんです)とかと混じって、私も車両の撮影を行います。
 帰りは、先に川根温泉笹間度へ行っておきます。ここはSL列車の場合、上りのみ停車するのですが、温泉見物にきた感じの個人旅行者や家族連れが10人ほど待っていました。
 列車はちょっと遅れていたようで、定時発の15:37になっても音しか聞こえてきません。
 そして、やってきたのは……C56-44。でも、炭水車を先頭としたバック運転なんですね。後ろ向きは、正直、カッコ悪い……
 千頭駅ターンテーブルは使えないのか使わないのかよく分かりません。隣にいた子供が、「なあに? この機関車変!!!」とかボヤいていますが、その気持ち、よく分かります。C11やC10なら後ろ向きでの運転も愛嬌があるのですが、C56は……ねえ。まあコスト面とか致し方ない面もいろいろあるのでしょうが。

 帰りも行きと同じ4号車ですが、乗客は10人程度。ワンボックスを占領できました。家山から団体さんが乗ってきましたが、さほど数は多くなく、ゆっくりと景色を楽しむことができました。
 私は終点の一つ手前の新金谷駅で下車。JR連絡の硬券や準常備券を購入した後、車庫に向かい、今日、出会えなかった京阪車や他の蒸気機関車を近くから見物させてもらいました。頼めば比較的自由に車庫見させてもらえた昔とは違い、敷地の周りにはロープが張られていました。天気は悪いし日は暮れかかっているし寒かったりもしたのですが、通りすがりの職員さんたちからお話しを聞かせてもらえたりして有意義な時間を過ごせました。
 そのうち金谷駅からE102に牽引されて列車が戻ってきます。C56-44は客車から切り離されて、車庫の奥にしまわれます。明日21日はC10-8が牽引機となるらしく運転に備えて準備をしていました(下記参照)。

駅の話

 その他、大井川本線を行ったり来たりしながら11駅に下車してきました。有人駅で聞くと、五和や塩郷、笹間度では切符の委託販売をしている商店があると聞いていたので期待していたんですが、日曜日だからかどこも閉まっていました。
 ここ数年、大井川鉄道本線の駅は、テレビや映画のロケ用に、ちょっと古い感じの素材を使って古風にリニューアルされています。田野口駅は、日本民営鉄道協会と共同で「駅舎等を対象とするロケーション・サービス推進事業」として駅待合室や窓口、ベンチなどを往年の姿に修復し、映画やドラマのロケーション誘致に繋げようという試みがなされています*2青部駅下泉駅川根温泉笹間度駅、地名駅なども、駅名標や改札口付近が古風なタイプにいじくられていますし、撮影隊のためのパンフも用意されています。正直、昔から大井川鉄道をロケ地としたドラマや映画の鉄道シーンを何十回も見てきたので、できれば富山地鉄とかヨソでもやってよ……という気もしないわけでもないのですが、まあ前向きな取り組みをされるのはいいことだと思います。


 そうした駅舎の話を抜きにしても、大井川本線の駅は魅力的ですね。Y字のスプリングポイント、客車対応で低めのホーム、ホームと駅舎を結ぶ渡板……なんか昔の国鉄のローカル線もこんな感じでした。そして、駅前をプラプラしてみると、古い街並みや茶畑に囲まれた集落は時が止まったような静かなたたずまいを見せてくれる。並行する道路があまり整備されていないのでクルマの出入りが少なく、特にそう感じるかもしれません。
→以下、大井川鉄道の課題を考えてみる - とれいん工房の汽車旅12ヵ月に続く

*1:南海ズームカーもたまには臨時で「こうや」号に入っていました

*2:二月にも映画のロケがあるそうです。でもロケ隊は家山駅での撮影を好むらしく、田野口駅にはなかなかきてくれない……と通りすがりの地元の方がボヤいていました