秋田の臨海鉄道新線構想と米原のデュアルモードトレーラー

katamachi2008-06-14

 鉄道マニアでも関心の薄い鉄道貨物について。興味深いニュースが二つ来ています。

 秋田県は11日、6月補正予算案を議会各派に提示した。鉄道と船を使ってコンテナをロシアなどに運ぶ「環日本海シーアンドレール構想」を支援するため、秋田港内の秋田臨海鉄道秋田市)の北線(2.5キロ)を、コンテナヤードを拡充する計画の外港地区まで延伸する調査費532万円を盛り込んだ。
秋田県、秋田港の鉄道延伸検討 6月補正予算案に調査費日本経済新聞、2008年6月12日
県、外港への鉄路延伸調査費を計上 環日本海シーアンドレール秋田魁新報社、2008年6月5日

秋田臨海鉄道と環日本海シーアンドレール構想

 環日本海シーアンドレールシーアンドレール構想とは、秋田港に鉄道コンテナと海上コンテナの結節点を設け、ロシアのボストーチヌイ港経由でシベリア鉄道と接続させる物流整備構想で、国土交通省東北地方整備局を中心に検討されているプラン。今年2月に実証実験をやっていたのはニュースで聞いていました。
 実験の時は、秋田臨海鉄道北線の秋田北港駅、そしてお隣の大浜コンテナヤードを使ったようです。ただ、

  • 敷地が手狭で埠頭の水深が浅い
  • 鉄道駅とコンテナヤードの間に道路があって輸送が難しい

とかなんとかで、秋田北港駅〜外港地区間の鉄道延伸(約2.8km)が提案されているのだとか。
 ええっ、なんで秋田がその水陸のコンテナ積出港になるの??? というのが僕の率直な感想。
 現在、秋田北港駅は、小坂精錬からの硫酸輸送が休止となった影響で、鉄道貨物駅としての機能は停止しています。拡張したり輸送力増強に関してはとりあえず問題ない。
 ただ、いったいどこから秋田港へ鉄道コンテナを持ってくるのかな……という疑問が出てくる。田沢湖線奥羽本線新庄以南がミニ新幹線対応の標準軌になっている現在、使えるの路線は限られている。岩手・宮城側からだと北上線仙山線。山形側からだと羽越本線。でも貨物列車のスジを新たに増発できるような余裕はないし、対応も難しそう。
 そこらの矛盾は国土交通省東北地方整備局作成のpdfを見れば分かる。

  • 荷物は首都圏や中京圏から集める
  • 仙台港以南のルートでは40tコンテナの輸送が実施済
  • 実証実験ルートは仙台港北上線〜秋田港、また仙台港東北本線〜青森〜奥羽本線〜秋田港。
  • 秋田北港駅の複線部分を活用して、コンテナ貨車を桟回線に留め、本線側でコンテナの積み卸しを行う

ということだったらしい。で、実験の結果、可能だった、と。
 それはそれでいい。でも、一番よく分からないのは、

  • なんで首都圏や中京圏からわざわざ鉄道コンテナを使って秋田港まで持っていかねばならないのか

ということ。
 やるなら別に新潟あたりでいいじゃないの。あるいは高速道路でトラック輸送でもイイじゃん。そもそも日本の鉄道貨物コンテナと船舶用コンテナとシベリア鉄道用コンテナってそんなに互換性があるの……とか不思議だったんです。
 でも、本当でやるみたい。荷主が便利かどうか、お金を安く済ませるかどうかじゃなくて、

  • 秋田港が発展するかどうか

という点が重要視されているのかな。なんか60年代センス、今再びって感じ。「鉄道貨物=環境に優しい」ってことで全てOKということなんだろうか。それより東海道山陽本線東北本線〜北海道、日本海縦貫線ルートなどきちんとモーダルシフトを推進するためにやらねばならない路線はまだまだあるのに……と思ったりもするのですが、それはまた別の話。

米原貨物ターミナル駅(仮)とデュアルモードトレーラー

 それより気になったのはこっちの記事の方。日経読んでいてびっくりしました。

 運送会社の滋賀運送(滋賀県甲賀市、丸山謙次社長)は全国の中小運送会社と組み、鉄道とトレーラー輸送による環境負荷の少ない物流網の構築に乗り出す。道路と鉄道線路をともに走れるデュアルモードトレーラー(DMT)を使い、効率的に荷物を運ぶ。JR貨物が米原駅に計画中の貨物ターミナルの開業が見込まれる2010年春の事業開始を目指し、年明けにも県内で実証実験を始める。
滋賀運送、鉄道と道路両用車を活用へ 物流の環境負荷軽減日本経済新聞、6月14日

  • DMTは道路上はトレーラーとして走行。駅で台車を取り付け機関車と連結し、貨車として走る
  • 積み替えのためのフォークリフトやヤードなどの設備はいらない
  • 米原の貨物ターミナルなどJR貨物の全国14駅を拠点として、運送会社がターミナル周辺の半径150キロ圏の集荷・配達を担当する
  • 事業開始時に550社(保有車両数4000両)の参加を目標。「グリーン物流ネットワーク」を設立

 あの地方自治体の夢となっている"バス&鉄道"合造車両(ゆえになかなか実用化されない)のDMV(デュアル・モード・ビークル)のパチモノか……と思ったら、意外に本格的みたい。ネットの方では載っていないけど、信楽高原鐵道で実験するとか新聞の方では載っていました。
 京都新聞の記事にはそのデモのときの写真が載っている。今日(6月14日)、米原でシンポジウムがあったんだね。
 これが実現すれば日本の鉄道コンテナ輸送は激変しそう。以前も「ピギーバック」として、トラックやトレーラーを貨物列車に載せて運送する方式が行われたことがあったけど、1067mm狭軌という日本の鉄道の幅員の狭さ(大きいトラックを搭載できない)、一両あたりの搭載コンテナが少なくなることによる効率の悪さが問題となって、人知れず消えていった。
 それがいま再び……ということなのか。
 ただ、不思議なのは、この記事、当事者である日本貨物鉄道JR貨物からのリリースじゃないと言うこと。 なんでだろう。滋賀運送という地方の物流会社の妄想だけでやっぱり無理なのかな……とか思ったのですが、それもまた別の話。<参考>「物流総合効率化 DMT?(デュアルモードトレーラー?)を活用した鉄道運送へのモーダルシフト」滋賀運送ホームページ
線路も走るトレーラー エコ物流実現へ 米原でシンポ産経新聞、2008.6.15