期待されていたある若手の鉄道研究者のこと。

katamachi2008-06-15

 岩手・宮城内陸地震で、宮城県栗原市の温泉旅館「駒の湯温泉」の災害現場で15日に発見された男女3人の遺体のうち、2人は宿泊客の東京都葛飾区の地域プランナー、麦屋弥生さん(48)と、東京都北区の鉄道博物館学芸員、岸由一郎さん(35)と判明した。
【岩手・宮城内陸地震】地域プランナー、鉄道博物館員…温泉旅館の遺体の身元判明産経新聞、2008.6.15

 さっき、Googleで「岸由一郎」と検索して自分の日記へ来られた足跡があったんでなんでだろう……と思っていたら……
 えっ、昨日の地震で亡くなられた方って、鉄道博物館学芸員をされていた岸 由一郎氏だったのか……。
 彼は鉄道史に造詣が深い若手として注目されていた。
 お馴染み青木栄一門下として東京学芸大学で研究活動を行い、その後、交通博物館学芸員として勤務。「鉄道ピクトリアル」などの雑誌寄稿、あるいは京福電気鉄道新潟交通での車両保存などに携わっていた。
 僕がお会いしたのは一度か二度だけだけど、その場に慣れていなかった僕に対し、気さくに話しかけてくれたことを思いだす。僕が書いた本についても、いいところ、問題点も含めて的確な批評をしてくれた。旧交通博物館の図書室で調べ物をしに行ったときに挨拶へ行くと、いろいろ案内や便宜を図ってくれた。
 なにより、彼が積み重ねてきた研究・調査活動は貴重だった。今の20歳代、30歳代のマニアって、自分の得意なジャンルを絞り込んでしまい、なかなか幅広い目配りをできなくなっている。もちろん僕も車両関係とか不得手のジャンルは多い。守備範囲が狭いと、文献を読んでも、現地で調査しても、自然と見えてくる現象も狭くなってくる。
 だからこそ、僕らと同世代の彼が幅広い知識を活かして活躍しているのは羨ましくもあり、そして何より嬉しかった。戦前生まれの諸先輩を凌駕するような研究をしてくれないかと期待感も抱いていた。
 それが、こういうことになってしまった。僕は一読者として接していただけで、付き合いはなかったに等しい。彼の友人や職場、そしてご家族の方たちとは違う感想しか持てないのかもしれない。
 でも、自分と同世代の鉄道好きがこういう形で亡くなられたのには寂しさと哀しみも覚える。前にお会いしたときもっときちんと話しておけば良かった。いろいろ聞いてみたいこともあったのに。
 改めて、お悔やみ申し上げます

全国トロッコ列車 JTBキャンブックス

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十和田観光電鉄の80年―軽便から釣掛電車まで (RM LIBRARY (51))

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