堺市東西鉄軌道事業ってホントに推進するの?

katamachi2007-02-22


 堺市は、建設都市局を中心に検討されているLRT「東西鉄軌道」の早期開業区間南海本線堺駅高野線堺東駅間1.7km)について事業者を公募するそうです。詳細はここの堺市東西鉄軌道事業公募型プロポーザルってところ。毎日新聞でも記事がありました。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070222-00000198-mailo-l27
 応募資格に「既存の鉄道・軌道事業者又はそれを含む企業体とする。」とあるので、鹿島鉄道や南海貴志川線の時のように誰でもOKというわけではなさそう。障壁は高そうですね。
 すでに昨年、堺市西鉄軌道事業に関する企画提案を募集していたのは記憶していたのですが、その際、経営提案が1件、技術提案が28件あったそうです。その提案企業のリストを見ると、「東西鉄軌道と阪堺線の相互直通および阪堺線との一体運営に関する提案」をしている南海電気鉄道阪堺電気軌道が立候補するのは間違いない。
 あと、面白そうなのは、「三菱重工業近畿車輛住友商事」の三者連合の動き。低床車両に関する技術提案だけでなく、設計・製造・施工・維持管理までの一括契約に関する提案も行っています。この三者はフィリピンのマニラに導入されるLRTシステムの時にも同じ組み合わせで参画しています。近畿車輛はドバイや広島電鉄グリーンムーバーなどでも実績があります。ここらが本命なのでしょうか。
 対抗は、三井物産交通システムの「中央案内式ゴムタイヤLRT(トランスロール)システムに関する提案」と新潟トランシス「低床車両および溝レール等の軌道設備に関する提案」でしょうか。堺市の臨海部にトランスロールの実験線ができたので三井物産有利と思っていました。が、フランス国内で導入された区間でもイマイチ機能を持てあましているようで、この先、どうなっていくのかは不明。
 また、鉄道総合技術研究所福井大学川崎重工業が提案している「リチウムイオン2次電池による架線レスバッテリートラム」ってのも気になります。鉄道総研で実験線と実験車両が誕生したという報道は聞いていましたが、どこまで実用に耐えるだけのシステムが出来上がっているのか。楽しみ半分、不安半分というところです。しかし、同じ研究テーマなのになぜ三者はバラバラに提案しているのでしょうか……

堺市民で「LRT」とか「東西鉄軌道」なんて言葉を知っている人は何%いるのかな?

 それと、「運行計画や車両・要員計画等の経営に関するコンサルティング提案」をしているという、「株式会社 ライトレール」。なんだか怪しい団体だなあと思ったのですが、JR東日本OBのやっている企画会社のようです。実績はまだないようですが。
 一昨年、京都の今出川通におけるLRT計画を進めているグループの会合に参加したときにも見聞きしたのですが、ここ数年、「LRTはネタになる!」というので、様々な町おこしグループやNPO団体、起業家たちがこの商売に群がり始めているようですね。エコとか中心市街地活性化とかバリアフリーとか、なにかイイことずくめの素晴らしい事業のように見えている。
 でも、富山ライトレール北陸新幹線の高架化関係の補助金を注ぎ込めたからこそ実現したわけであって、そんな有利な条件が期待できないのに事業推進に突っ走って、果たして勝算はあるのか。
 それと、「LRT」とか「東西鉄軌道」とか鉄道マニア以外には分かりづらい言葉をそのまま使っていますが、堺市民80万人の中でこの構想の存在を知っている人ははたしてどれぐらいいるのか。
 2005年11月に、毎日新聞が主催して堺市で行われた「次世代型路面電車 LRTシンポジウム in 堺」ってイベントを見物に行ったのですが、この時点では堺市がこういう構想を持っていますよ……というのを市民に知らしめる場に過ぎませんでした。木原敬介堺市長はペーパーを棒読みしているだけでLRTとは何モノなのかさっぱり理解していなかった。そして、基調講演が「さあ 今こそLRTの出番です」というバラ色の夢物語を紹介する話だったことが全てを物語っていました。
 なのに、それから1年ちょっとで事業者を公募する……というのですか。市民にその意義と費用対効果をゆっくりと説明するのでもない。「今後の取り組み」として、「沿線のまちづくりとの連携」、「市民、議会との合意形成」、「関係機関との協議、支援体制の確立」とありますが、この一年間でやったのは「ヨーロッパLRT市民視察」と称して市民10人をヨーロッパに連れて行っただけです。既定事項としてトップダウンで事業を推し進めるのって、今どき珍しいですよねえ。
 堺市LRT計画、そして90年頃まで議論されていた地下鉄計画の杜撰さについてまとめた文章も別に用意しているのですが、それはまた別の話。