東京都晴海埠頭に新たな路面電車構想!

katamachi2007-05-23

 22日に開かれた東京オリンピック招致委員会(会長・石原慎太郎都知事)理事会・総会で、都が主張する晴海地区で決着したメーン会場問題。
(中略)
 また、建設予定地に最も近い地下鉄駅は現在、約1・4キロ離れている。スタジアムの最大収容人員をスムーズに処理できる交通手段の確保が必要で、都からは地下鉄の延伸や路面電車の運行が候補に挙がっているが、こちらの費用も巨額だ。
「16年夏季五輪東京五輪メーン会場、晴海立地に課題山積」5月23日11時0分、毎日新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070523-00000002-mailo-l13
ほかに日刊スポーツなど

 そーか。東京オリンピックを晴海埠頭付近(中央区晴海 Yahoo!マップだとここ)で開催するならば、確かに鉄軌道の整備も並行して進めなければならない。現在、この近くにあるのは都営地下鉄大江戸線勝どき駅有楽町線豊洲駅。共に晴海埠頭から1km、2kmほと離れている。これじゃあ新線鉄道を敷かねば観客の輸送に対応できません。
 なのに、2007年5月現在、公的に発表されている晴海界隈の鉄軌道の計画は、ゆりかもめの勝どき延伸構想だけ。
 これは、運輸政策審議会が2000年に答申した「東京圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備に関する基本計画」(答申第18号)のなかにあるもので、豊洲〜晴海〜勝どき間に新交通システムを敷設するという構想です。「目標年次(2015年)までに整備着手することが適当である路線(A2)」と、整備計画で示された新線構想の中では3ランクの中で2番目に高いランクとして扱われていますが、これを具体化するのかどうか、東京都や関連機関で検討された形跡は全くありません。まあ、あの頃、東京オリンピックなんて真剣に言っている人は誰もいなかったのですから。
 で、最近、東京都が検討しているというのが、

の2つ。先月は知事もその旨発言しているようです。まあ、ゆりかもめのように輸送力が小さいものでは混雑に対応できないから仕方ない(有明でのイベント時、あるいは1981年のポートピア博でも実証済)。
 ただ、2016年夏に開催、2009年10月のIOC総会で開催都市決定……というスケジュールで逆算すると、うん? 開催地決定まであと2年?? 今頃、「地下鉄の延伸や路面電車の運行が候補に挙がっているが」という議論をしているのは遅いと思います。2007年5月である現在、すでに鉄道の建設工事に取りかかるための工事施行認可を申請しておかねばならない。万が一、東京にオリンピックがやってきたとしたら、間に合わないんじゃないの……

地下鉄の延伸って、やっぱ有楽町線豊洲駅から延ばすつもり?

 でも、地下鉄の延伸って言うのは簡単ですが、いったいどの路線を延ばすんでしょう。
 消去法で選択肢を探してみると、唯一可能性があるのは、東京8号線、有楽町線ぐらいです。ここの豊洲駅から分岐線を造るというのがコスト面でも工期の面でも一番理にかなっている。
 現在、豊洲駅は島式ホーム2面2線となっています。で、1番線と2番線との間に地下鉄電車が発着できるようなスペースがあるんですね。これは有楽町線の支線を建設するために準備工事で、1988年の開業時からスペースが確保されていました。この構想は1972年の都市交通審議会の答申でも示されていて、将来的には、ここから北側に住吉・押上方面へと電車が走る予定になっていました。
 諸事情で実現はしていませんが、先に述べた運輸政策審議会答申第18号では、豊洲東陽町〜住吉〜押上〜四ツ木〜亀有〜千葉県野田市間の延伸構想が示されています。押上線とか東京直結鉄道とか言われています。これも「2015年までに整備着手するのが……」なんて答申の文書にはありますが、まあ葛飾区とか野田市とか吉川市とかが無い物ねだりでお願いしているだけで、すでにこの付近には半蔵門線が開業しているし、実現する可能性はほとんどない。
 ならば、遊休化している豊洲駅の施設を活用し、駅の南側、すなわち晴海埠頭方面と支線を延ばそう......というのがその魂胆なんでしょう。豊洲から晴海埠頭まで2km程度。地下鉄新線のコストは1kmあたり300億円というのが最近の相場なんで、安くすれば600億円ぐらいでできそう(いや、豊洲駅あたりの工事は大変そうだし、晴海駅?も立派にしなきゃダメだし800億円ぐらいはするか)。大会の予算3000億円+晴海スタジアム1000億円と比べると、高いんだか安いんだかもう分からないですが……
 さて、ここで問題となるのが、有楽町線支線の延長を心待ちにしている葛飾区などの皆さん。私の推測通り、有楽町線豊洲駅のスペースが晴海方面への支線に取られてしまうと、押上方面へ延長する可能性はまずなくなる。それを認識している人がどれだけいるんだろうか……*1

イベント時の大量輸送に路面電車って対応できるんだろうか。

 それと、もう一つ構想に上がっている。路面電車。たぶん、いま話題のLRT(説明はややこしいので、"新世代型スーパー路面電車"と解釈してみてください)のことなんでしょう。
 すでに10年ぐらい前からLRTを晴海に延ばす構想はあって、1998年9月、東京都中央区は、地元住民に対して、東京駅〜銀座〜築地〜勝鬨橋〜晴海埠頭〜月島〜中央大橋〜八丁堀〜東京駅間の環状線9.5km<単線>の構想を提案しています。工費は107.7億円。枚方・LRT研究会会報によると、「清掃工場建設に伴う見返り施策の一つとして」とあるんでなんか裏もありそうですが、まあそれはそれ。その後も、地元の一部団体がLRTを誘致する活動を行ったりしているようですね。
 「これで、ついに大都市部で初の本格的LRTが登場!」として期待は高まります。鉄道マニアとしては、首都東京でLRTが実現してくれるのってやっぱり嬉しい。晴海とか築地なんて適しているエリアだと思います。
 ただ、「東京オリンピック輸送」という話に限定した場合、はたして対応できるんでしょうか。試合が終わると、5〜6万人という観客が晴海埠頭のLRT停留所に殺到するのでしょうが、200人乗り4両編成の電車を両方向<複線と仮定>に3分間隔で走らせても1時間で運べるのはわずか8000人。仮に経費の面で地下鉄の晴海延長案が中止になったとすると、路面電車だけで観客輸送するのは、正直、無理です。というか、乗客の乗り降りや交差点での右左折に手間取って定刻に走れるはずがない。路面電車って大規模イベントには不向きな交通機関です。
 むかし、同じ晴海埠頭の東京国際見本市会場であった「コミックマーケット」というイベントに参加していたから(今でも有明に通っていますが)そこらの事情もなんとなく想像できます。この世界最大のオタクイベント(同人誌即売会)には1日あたり15〜20万人という来場者があったのだけど、1時間あたりに都バスを各方面に100台以上走らせていてもピーク時には滅茶苦茶になっていたもんな…… それでも、LRTよりバス輸送の方が、まだフレキシブルに対応できると思います。たぶん*2
 さて、こうした議論がどのようになってくるのか。全て2009年のIOC総会での投票結果次第ですね。ちなみに、2008年夏季オリンピック誘致に失敗した大阪市の現状は2007-05-18大阪市民の力を結集して2008年大阪オリンピックを成功させよう!って妄想エントリで紹介しています。ぜひそちらもご覧を。でも、2016年に東京オリンピックが開催される可能性ってどれぐらいあるんだろう......って、ロンドンのブックメーカーにオッズを聞いてみたいような気もするのですが、それはまた別の話。

*1:五輪反対派の都議さんや区議さん。ここらも議会でのネタになりますよ(^_^;)

*2:期間中のみ都内各地から都バスをかき集め、新車も投入して頻発運転→終了後は他社へバスを売却という感じになるんだろうか