横浜市南区の霊園「南の丘メモリアルパーク」で鉄道趣味活動をしてきた。

katamachi2009-07-16

 先週の東京出張のついでに、横浜へ立ち寄ってきた。クラシックホテルとか近代建築を見るためということもあったんだけど、主目的はあくまでも鉄道趣味活動。しかも斜め45度逝った方向の内容。
 横浜駅から京浜急行電鉄普通列車に乗って、戦前以来の高架線で市街地を抜けて10分ちょっと。井土ヶ谷駅のホームで降りてみる。
 京急線沿いに続く平戸桜木道路(県道218号)を歩いて横浜南郵便局の前を通り過ぎれば、セブンイレブンが。その次の信号を左に曲がると小高い丘の上に住吉神社がある。そこを左に。
 神社の裏へと続く小さな道路の先に、「南の丘メモリアルパーク」という看板があった。

 井土ヶ谷駅から徒歩7分。この霊園が、今日の僕の目的地である。

スロープカーで霊園の上部「駅」へ行く

 僕はここの霊園や墓所とは縁もゆかりもない人間である。あくまでもヨソ者。なんで、入園の許諾を得るために霊園の管理事務所へ向かう。

 さて、ここで何の鉄道趣味活動をするのか。
 ポイントは、上の写真の左端。管理事務所の横にある白いモノに注目。

 なんだか怪しい乗り物が1つ。
 足下はこんな感じ。

 これ、一応、モノレールなんです。製造元は九州に本拠を持つ嘉穂製作所。「斜行モノレール」とか「スロープカー」とか言われる疑似鉄道の一種である。
 遊園地などの遊具の延長線上にある運搬具で、モノレールと類似の機能を持ち合わせている。エレベーターのような自動運転も可能。軽量かつ小回りの利く設計になっていて、コストもかなり安めに抑えられている。近年、ウエスパ椿山(青森県深浦)や天橋立(丹後)、英彦山皿倉山(共に福岡)など各地に類似の施設が設けられていて、鉄道マニアの間でもかなり有名になってきている。以前、「本日で最後となる対星館@箱根堂ヶ島温泉の自家用ケーブルカーに乗りに行く - とれいん工房の汽車旅12ヵ月」で紹介した箱根の対星館のケーブルカー跡にもこの7月17日から導入される。東京の飛鳥山公園でも同じ日に運行を始めるとプレス発表もあった。
http://www.city.kita.tokyo.jp/docs/inform/404/040475.htm
杉山淳一の +R Style:第10鉄 7月17日運行開始! 飛鳥山に登場した“新しい乗り物”とは (1/3) - ITmedia ビジネスオンライン
 事務所の方も、ヨソ者の乗車を快諾してくれた。なんで、試しに乗ってみよう。
 車内はこんな感じ。2005年2月製造とある。

 定員4名。ただ、この狭さだとそんな乗ると息苦しそう。座席は2人分しかないし。

「お線香の火をつけての、ご乗車はできません」という文言は、霊園ならではの言葉。なんとなく、鞍馬の火祭りの頃の叡山電車、あるいは正月の京阪電車の様子を思いだしてしまう。
 入口の脇にボタンがある。

  • 下部
  • 中間
  • 上部

と3つの「駅」の表示があり、ボタンを押せばエレベーターのように自動的に動く仕組みだ。
 とりあえず、僕は旅行派の鉄道マニア。全線完乗したいんで、上部「駅」へ向かう。
 "閉じる"のボタンを押すと扉が閉まる。そして10:51、出発。
 さほどショックもなく、するするっとレール沿いに上がっていく。

 思っていたよりも、「鉄道」らしい登り方だ。
 中間「駅」をそのまま通過すると、10:53に終点の上部「駅」着。所要2分。
 エレベータっぽく扉が開くと、目の前には墓地が広がる。

 う〜ん、ここ。ただ墓石が続くだけです。メモリアルパークなんだから当たり前だけど。
 でも、見晴らしがいいところなのは確か。丘の中腹には同じ経営母体がやっている井土ヶ谷幼稚園があり、周囲は住宅街で覆われている。

 遠くには京浜急行の電車が駆け抜けていくのが見える。撮影するには角度的にも距離的にも難しいんだろうけど、電車の通過音は響いてくる。自分が亡くなったときはぜひここに……とまでは思わないけど、鉄道マニア的に楽しいところであるのは確かだ。

さらにスロープカーで愉しむ

 到着後、まもなくしてブザーが鳴って、扉が閉まる。
 しばらくすると、下部「駅」へと下っていく。自動的にそのように動くようプログラムされているんだろう。
 霊園で佇むのは僕1人。ただ、お墓がひたすら続くだけ。僕とは無縁だし、なにをするというわけでもない。

 所在なげにぶらぶらしていると、下部「駅」に別の「お客さん」が現れた。
 しめた。スロープカーが動くシーンが見える!!
 で、走行シーンを激写。






 で、扉が開いて、年配の女性が下車。片手に柄杓と花束。本来の「お客さん」である。
 カメラを持っている僕を不思議そうに一瞥しながら、自身の身内なんだろう墓石へと向かう。
 とりあえず僕は、折り返しのスロープカーに乗って、未下車の中間「駅」へ向かう。すぐ側の階段をダッシュすれば1分もかからないのだけど、まあそれはそれ。
 11:05、上部「駅」発。

 同じく11:05、中間「駅」に到着。

 ここもただただお墓が広がっているだけの所である。


 さて、ここまで読んで多くの人が疑問に持つと思う。
 なんで、この南の丘メモリアルパークって、スロープカーなるものをわざわざ敷設したのか、と。


 これは年に何度かお墓参りに行く人は実感することと思うのだけど、基本、霊園ってのは、その性格上、街の中心部から外れたところに設けられるケースが多い(もちろん青山霊園のように後々市街地に取り囲まれるケースもあるが)。
 また、見晴らしのよい場所に……という気持ちから、丘や山の上に設けられることもある。この南の丘メモリアルパークもそう。
 ただ、問題が1つ。坂の上に設けられると確かに眺望はいいんだけど、駐車場や駅から歩いていくと、かなり坂を登らないといけなくなる。それがかなり辛い。僕のご先祖のいる京都東山五条の大谷本廟なんかもそうだけど、大きい霊園なら大きいほどその距離と勾配も大変になる。お参りする人、特に年配の方にはかなり苦行となる。
 なんで、ここ数年、新規に建設される大規模霊園はバリアフリー対策も視野に入れる必要がある。墓地の区画の売却を促進するためにも、有効な戦略となりうる。で、ここは嘉穂製作所のスロープカーを2005年に導入した、ということになる。

南の丘メモリアルパーク
霊園・墓石の美郷石材ホーム > 南の丘メモリアルパーク
 運営主体は、山の中腹にある保土ヶ谷幼稚園と同様、宗教法人乗蓮寺るるぶ.com観光情報サーチにあるように、真言宗高野山派の寺で、北条政子とも縁が深いらしい。
 そのお寺らしい敷地には「南の丘 尼将軍墓所」と大々的な看板が掲げられているが、墓地販売の案内は載っているモノの、肝心のお寺の活動状況についてあまりよく分からなかった。まあ、そこらはあまり追求しない方がいいのかもしれない。

大きな地図で見る
 事務所に謝意を述べた後、この墓地を出ることにした。都合、半時間、スロープカーのためだけにここに滞在したことになる。
 その後、8分ほど旧街道っぽい裏道を歩いて弘明寺(ぐみょうじ)へ行く。ちょうど四万六千日功徳という行事をやっていて、境内や寺の中にはたくさんの参拝者で埋め尽くされていた。同じ真言宗でもこうも違うのか……と、宗教法人についていろいろ考えさせられたのだけど、それはまた別の話。