ぬれ煎餅騒動から5年。銚子電気鉄道はどうなったのか?(3)
過去に何度か日記で書きました「銚子電気鉄道&濡れ煎餅」のその後。
会社HPで「電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです。」って話がアップされたのは2006年末。ぬれ煎餅にまつわるあの話がネット発で話題になって、煎餅も切符も売れるようになって収入が増加したのが2007年。国や銚子市の支援が皆無の中で、中古車(京王2010系→伊予鉄800)を買い取って銚子電鉄2000として運用開始まで持ち込んだ……というのが1年半前までの出来事です。あわせて6本のエントリーを書きました。
【9】がんばれ!銚子電鉄 ローカル鉄道とまちづくり - とれいん工房の汽車旅12ヵ月
銚子市の「銚子電鉄問題への市の対応について」という文書を読んでみる(銚子電鉄その2) - とれいん工房の汽車旅12ヵ月
ヨソ者が勝手に銚子電鉄の再建策を考えてみたけど(銚子電鉄シリーズその3) - とれいん工房の汽車旅12ヵ月
ぬれ煎餅と銚子電鉄に可能性を見出したがった人たち(銚子電鉄シリーズその4) - とれいん工房の汽車旅12ヵ月
ぬれ煎餅騒動から2年半。銚子電気鉄道はどうなったのか? - とれいん工房の汽車旅12ヵ月
ぬれ煎餅騒動から3年半。銚子電気鉄道はどうなったのか?(2) - とれいん工房の汽車旅12ヵ月
多くの人は、ぬれ煎餅騒動があったことも忘れてしまったのだろうけど、あれから5年経った2011年現在、地元では銚子電気鉄道を巡る協議はどのようになされているのか。その続報です。
平成22年9月定例会 09月08日−03号
銚子市議会の議事録をまた見ます。
http://www.kaigiroku.net/kensaku/choshi/choshi.html
銚子電鉄近代化設備整備事業について。銚子電鉄を今後何らかの支援をしていく考えはあるのか、という問いに対し。
市長はこう答えている。
平成18年12月にこの近代化設備整備費補助について銚子市が電鉄に対して市の対応というのをぶつけました、文書で。次の4つの条件を満たさない限り補助金などは投入できない。これは実は国交省の考え方を背景にしているわけです。残念ながら、次の4つに関するふさわしい内容のものは打ち返しをされていないという実態
- 1、経営再建計画の提出。内容がだめということで終わっております
- 2、前社長の不正借り入れ問題の解決。これはかなり進んだというふうに伺っておりますが、正式な報告は来ておりません
- 3、経営状況等の公表。
- 4、近代化補助に係る会社負担分の財源の確保、説明
まだ銚子市いただいておりませんので、前に進んでいくという段階に入っていないと。そういう意味では、まずは会社自身として、今後銚子電鉄はどういうふうに生き延びようとしているのかという情報発信というんでしょうかね、そういう決意を広く発信されることが次の前進のきっかけになるんじゃないかなというふうに
(たま駅長と両備グループの話を持ち出して)そういういろいろな外部の有識者の意見なども取り入れながら、かつ銚子電鉄の意向をはっきり公表していただいた上で、おつき合いをするタイミングを図りたいと、こういうふうに考えております
結局、過去のエントリーでも紹介したように、銚子電気鉄道は事業継続のために必要なロードマップをきちんと策定できていない模様。
そこらを理由にして銚子市役所もカネを投じるつもりはなさそう。NPO法人スマイル銚子の「銚子電鉄犬吠駅構内旧電車車両改修事業」に賞を与えたとか、踏切改修工事の負担とか、その程度だ。
地元が出さないと国も出ないし、それでいいのか、という問題になる。
逆に、市議会ではコミュニティーバス事業への積極的な参加を求める声もちらほら出ている。近くの茨城県神栖市で先例がある、と。
銚子電鉄は地元にとって沿線住民以外が利用する機会はほとんどない……だから、観光鉄道とし残せ!とか妙な話になってしまうんだけど、オンデマンド系のタクシー・バスの運行だと広範囲な市民にメリットがある→市民サービス&選挙対策に繋がるという発想なのかもしれない。
市議会ですら話題にならなくなった銚子電気鉄道
ちなみに、銚子電気鉄道主要駅の利用者数(1日あたり乗車客数)は千葉県統計年鑑各号で確認できる。
http://www.pref.chiba.lg.jp/toukei/toukeidata/nenkan/nenkan-h21/index.html#a11
- 銚子駅
- 2008年度 889人 うち普通客 719人 うち定期客 170人
- 2007年度 935人 うち普通客 762人 うち定期客 173人
- 2006年度 674人 うち普通客 493人 うち定期客 181人
- 2004年度 650人 うち普通客 451人 うち定期客 199人
- 外川駅
- 2008年度 242人 うち普通客 190人 うち定期客 52人
- 2007年度 150人 うち普通客 75人 うち定期客 75人
- 2006年度 235人 うち普通客 186人 うち定期客 49人
- 2004年度 192人 うち普通客 133人 うち定期客 59人
2006年のぬれ煎餅騒動以降、銚子駅の利用者は1日あたり300人近く増えていますね(2007年度と2004年度比)。その多くは普通客=観光客なんでしょう。もともと観光利用や市民の方の区間利用が多い鉄道で定期客比率が低かったのだけど、今では8割が定期外客か……
終点の外川駅でもそんな傾向がありますね。2008年度が前年度より増えたのはツアー客の誘致が進んだからか。
ただ、定期客はやはり順調よく減っています。ここらをどう評価するか、ですね。銚子駅と外川駅、笠上黒生駅、犬吠駅の乗車客は増えたけどその他は横ばいか微減。そこらをどう評価するのか。
利用客の推移は市議会でも報告されていて(前回紹介しました)、
- 平成16年度65万人、17年度65万人、18年度71万人、19年度83万人、20年度78万人
- 団体券の利用者数(主に観光客が利用していると思われる) 平成16年度2万7,000人、17年度3万人、18年度3万9,000人、19年度11万5,000人、20年度8万5,000人
となっている。2008年度=平成20年度は微減。2009年度以降はどうなっているのだろうか*1。
ブームは沈静化しているとは想像できるが、今後、どうなっていくのだろう。
観光鉄道として割り切ってやるのか。あくまでも市民の足として評価するのか。市民の税金を年間数千万円単位で投入するとしたら、はたして観光鉄道として位置づけた場合、了解が得られるのか。難しいところです。
というか、市役所と電鉄側の間で亀裂が生じてかなりの年月が経ちましたが、いまだに銚子電鉄を守ろうという動きが市役所内でも議員内でもあまり積極的に起きてこないのは、
- 電鉄側から再生計画が未提出という点
- 銚子という町独自の政治的問題がいろいろとある点(市長が選挙のたびに変わったりリコール運動が相次いだりと政治的に安定していない)
- そして銚子電鉄=観光鉄道……という状況になったがゆえに地元住民の関心がなくなってしまった点(市民の議題になってこない)
が大きいと思う。
最初の記事を書いたときもそれを指摘したし、それから3年経ったが事情はいまだ変わらない。伊予鉄の中古車はなんとかなったが、その後も観光客頼みでなんとかなるというほど甘くはない。
正直、この1年半、銚子市議会ではほとんど議論がなされていない。そこまで冷ややかな空気が現場に漂っているのだろうか。ぬれ煎餅の販売のために電鉄を残しているって割り切っているならそれはそれでいいんだけど、どうするのかなあ。
久しぶりに銚子電鉄のホームページを見たら、今日7月30日、仲ノ町車庫で「2000形一周年記念イベント」があるんだとか。地元が動かないならせめてマニアを集めなければ、でもそれで鉄道が救われるはずもないし……と改めて感じたのだけど、それはまた別の話。
*1:http://rasu.dojin.com/rasulist/choden/choden_wiki/index.phpのHPの「平成22年度の乗客数と鉄道部門収入 (7/6記)」という記事では2010年度までの乗客数が統計グラフで示され、「乗客数合計と鉄道部門収入はついに、銚電ブーム以前の平成17年度を下回ってしまいました」とある。ぬれ煎餅騒動以前の水準まで落ち込んでいるようだが、情報ソースは不明