立山砂防軌道に乗ってきた’08年冬

katamachi2008-02-15

 さて、前々回「立山砂防軌道に乗ってきた - とれいん工房の汽車旅12ヵ月」でわざわざ9年前の体験乗車について再録した立山砂防軌道。それに先週末乗ってきた報告です。
 もう一度、簡単にまとめると、

というところ。この日付を確認し、かつ天気予報を調べてみると2月11日がぼちぼち寒くもなく天気も良さそうと言うことが分かった。9日に→岐阜→高山→富山→大阪→という一筆書きの簡単なプランを立てて準備に取りかかる。

地鉄立山駅から立山カルデラ砂防博物館へ向かう

 前日の10日、岐阜から高山本線で北上して、災害で不通になっていた区間を5年ぶりに乗車。ここらで未訪の坂上駅打保駅などで乗降した後、東横インマニアの間で秘かに人気となっている「東横イン Jr.富山駅前」*1でチェックイン。ふらりと寄った魚屋さん経営の居酒屋*2で刺身の盛り合わせ&氷見うどんを食べたら、これがまた絶品かつ量も多く値段も安く幸せな夜を過ごすことができた。
 翌日は富山駅から富山地方鉄道上越線に乗って3駅ほど下車。ここは京阪特急3000系がまだ新塗色で健在なんで関西のマニアにはかなり美味しいところ。終点の岩峅寺で由緒ある石造りの駅舎を眺めつつ立山線に乗り換える。

 ここらでも積雪量は20cmほど。たいして積もっているわけでもないのだけど、ここから常願寺川沿いに山を分け入っていくと線路の側面の白い壁が目立ち始めていく。終点の立山駅に着いた頃には70cmぐらいにはなっていた。これは例年よりも少ないようなんだけど、富山市内でも氷点下になることが多いらしくて「この冬はキツイわあ」というのが隣に座っていたオバちゃんの話。
 さて、砂防記念館は駅から歩いて3分ほどのところにある。国土交通省が砂防事業を地元や関係者に知らしめるため1998年に建てられた瀟洒で巨大なハコモノがそこで待っている。さすがに展示内容はしっかりしているんですよね。
 でも、今回の目的は「博物館を見学して トロッコにのろうよ!」という体験ツアー。1階のロビーで会話なんかを聞いていると地元の方が意外に多そうだけど、見るからに同業者のマニアが個人で来ているのに遭遇する。
 乗車トロッコは3両編成(20人)×2本で計40名。うち1本はかんじきを使って雪道を歩くという趣旨の別グループになっている。往復ともトロッコに乗れるのは1本のみとなる。受付は8:30から始まっているし、予約満杯で参加登録できないかも……と心配していたけど、なんとかエントリーしてもらえていた。
 今日は、11時発のほか、13時、14時、15時にそれぞれ40人の体験乗車ができるという。でも、昨日10日は相当の観光客が来たようで、各便の合間に何度か増発運転を行ったという。
 やがて9:45に集合がかかり、40人+αの参加者がロビーに集められる。注意事項を確認した上で、それぞれにヘルメット配られる。そして博物館横にある砂防軌道の基地へと連れて行かれる。予定の時間より早いが、
 参加客の7割は立山の近所でスキーにやってきたついでの家族連れっぽい方たち。2割ぐらいは地元の方。意外にもカメラを抱えた鉄道マニアつぽいのは4、5人というところか。あまりこのイベントを知られていないのかも。夫婦で来られている方も一組いたが、マニアでない方、すなわち奥様の方がなんか不愉快な雰囲気を隠さず、愚痴をもらしているのが聞こえてくる。まあ、寒い中でこんなイベントに参加させられた。その気持ち、心中察するに余りある。同業の旦那さんに幸多からんことを祈る。
 

2ヶ所のスイッチバックがある津之浦下流砂防ダム線800mを往復

 トロッコ線は立山千寿ヶ原駅〜水谷駅本線(地図の赤線上)と津之浦下流砂防ダム線(赤線下)とがあり、今日、走るのは立山砂防軌道の支線である津ノ浦線の方になる。

 この支線、常願寺川沿いに同ダムへの資材運搬をしていたのだけど、現在は道路が完成しているので砂防関連輸送は実施していない。本来の目的は失ったのだけど、本線を行くトロッコ列車の運転士の訓練用としてたまに往き来することもある。本線のスイッチバックは42ヶ所に対してわずか2ヶ所と少ないが、それでも車内から雄壮な立山連峰常願寺川砂防ダムを見ることができる。
 係の人に頼んで車庫をのぞかせてもらうが、意外に車両は少ない。砂防軌道が休止してる冬季中、機関車や客車は点検のためここには不在。そのため車庫は閑散としているのだ。スイッチバックが連続しているし、線路の規格も低い。休業中の検査がいい加減だと事故にも繋がりかねない。で、先に帰ってきた「薬師号」・「白岩号」の機関車1台+客車3両の2編成が訓練用、およびこの冬のイベント用に使われることになる。



 まずは、かんじきツアーを入れた「薬師号」牽引の列車が出発。先頭は客車3両。それを機関車がバック運転で牽引していくことになる。
 続いて、われら津之浦往復組が乗車する「白岩号」がやってくる。 軌間610mmと鉱山トロッコと同じサイズなんで、客車もかなり小さめである。横3人×縦3列の計9人。これに20人の観光客が乗り込み、最前部に観光案内のボランティアの女性が入る。僕はその側で見晴らしよく景色を見られる特等席を得ることができた。
 出発は10:52。軽いホイッスルと共に、僕の乗った客車を先頭に動き始める。時速は5kmほどのゆっくりとしたもの。列車の先では、信号担当の職員さんが歩いて先導してくれる。
 両脇は積雪1mほどの雪の壁。今回のイベント用に職員さんたち総出で雪かきをしてくれたんだろう。800mという距離は決して短くはない。冬シーズンの自分の町での雪かきを思い起こせば、その大変さがよく分かる。
 100mほど行くと、一つ目のスイッチバック。ポイントを超えると、職員さんが切り替えを行う。そして、10秒ほどで反対側へ動き出す。と共に、職員さんは最後尾となった僕らの客車へ乗り込んでくる。

 列車は機関車「白岩」号を先頭に下り始める。右側は常願寺川と津之浦砂防ダムへの取付道路が並行している。コンクリート車とすれ違ったのでその先では冬季でも工事を行っているのだろう。
 やがて200mほど下り終え、小さなカーブを左に切ると、次のスイッチバックが見えた。ここは三段になっている。先行する「薬師号」が二段目と三段目との間の坂を登っていくのが見える。列車が連続してスイッチバックで往き来する……そんな鉄道模型っぽい雰囲気がトロッコ列車の魅力的なところでもある。
 私たちの「白岩」号もポイントに入り、今度は客車を先頭として上り勾配に差し掛かる。ここらの切り替えはほんの20秒程度。ホンモノの鉄道車とは比べものにならないほど時間が短い。そして50mほど登り詰めると、またポイント切り替え。このスイッチバックで標高で言うと20mほどを一息に登った計算になる。


 ここから、そそり立つ岩場の影を縫うようにして300mほど進むと、終点の津之浦砂防ダムとなる。11:02着。博物館からちょうど10分の距離である。雪で覆われて足下は何も見えないが、体験客のためにきちんと小さなホームがこしらえてくれている。
 ここでガイドさんから砂防ダムの説明を聞く。まあ、砂防ダムという地味な事業を国民に知らしめる……というのがトロッコの体験乗車の本来の意味なんだろう。その成り立ちや経緯について話すのだけど、家族連れとかがメインなんで反応はイマイチ。イマニ。そこらの雰囲気を読み取ってくれたのか、話の内容を立山千寿ヶ原界隈に出没するサルやシカの話に変えると、こどもたちの食いつきが良くなる。
 

 でも、ここにはあまり長居もできない。「さあ出ますよ」との声がかかる。到着から10分ほど。まだまだいたい気持ちは山々なんだけど、そういう訳にもいかない。
 11:15、今度は僕らの乗る「白岩」号が先に出発。続いて、「薬師」号がそれを追いかける形になる。
 三段スイッチバックを越え、急坂を登り詰め、一つ目のスイッチバックで向きを変えると、元いた博物館前に戻る。11:25、終点である。
 10年前に本線を乗ったときもそうだったが、本当にあっという間の体験であった。でも、もう少し乗っていたい気もするが、2月段階で除雪されているのはこの津之浦支線のみ。それだけでも乗せてくれたことに感謝せねばならない。
 午後は、道路側からトロッコを撮影することにした。係の方の説明だと、1つの目のスイッチバックの先に取付道路があってそこからダム用道路に出られるという。シーズンは遊歩道にもなっているらしい。雪を押しのけながら二つ目のスイッチバックがあるところ(そこから先は危険と言われた)まで歩き、13時発の便の往復をカメラで押さえる。マニアが何人かいるかと思ったけど、沿道に立つのは僕1人。トロッコから小さなこどもたちが何人も手を振ってくれる。対応すると、嬉しそうに窓枠へしがみついてくる。なにか、のどかな風景だ。



 次の富山地鉄立山線の発車は13:58。博物館とはうって変わってひっそりしている駅舎に戻り、富山行きのチケットを購入。その後、富山から大阪への特急が三連休でめちゃくちゃ混んでいて、指定席は全ての列車で満席、自由席は高岡駅で定員の倍以上という悲惨な状況になったのですが、それはまた別の話。

*1:既存ホテルを改装したんでJr.と名乗っている。2、3年前に改装したけど、転用ホテルならではの使いにくさもあり、次年度に新店が近くにできたら閉鎖するのでは……というのが注目点。ここには3年連続で宿泊です

*2:正確な場所は忘れたけど、富山エクセルホテル東急の南側。新桜ビルの1階の小さいカウンターだった